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ホンダ、四輪電動化戦略を軌道修正 2027年以降に投入する次世代ハイブリッドモデルにも新たな「H」マークを適用
2025年5月20日 15:06
- 2025年5月20日 発表
本田技研工業は5月20日、「2025ビジネスアップデート」を開催。四輪電動化を中心としたホンダの取り組みについて説明会を実施し、取締役 代表執行役社長の三部敏宏氏が説明を行なった。
ホンダは、自由な移動の喜びをサステナブルに提供し続けていくために、「環境」と「安全」が最重要課題であると考え、2050年に「ホンダの関わる全ての製品と企業活動を通じたカーボンニュートラル」「ホンダの二輪・四輪が関与する交通事故死者ゼロ」の実現という目標を定めている。また、カーボンニュートラルの実現に向けては、乗用車をはじめとする小型モビリティの領域において、長期的視点ではEV(電気自動車)が最適解であると考え、その普及に向けて大きく舵を切り、取り組みを進めてきた。
一方で、四輪事業を取り巻く環境は日々刻々と変化していて、特にEV普及の前提となる各地域での環境規制の変化などによるEV市場拡大スピードの鈍化や、通商政策動向の変化など、事業環境の不透明さが増加。この環境下でも競争力を維持し、ホンダが目指す「モビリティを通じて、人の役に立ち、驚きや感動をもたらすような新価値を提供し続けること」を実現し続けるためには、電動化に加え、「知能化」の強化によって新価値を創造し、広く提供していくことが鍵になると判断した。
結果として、「知能化を軸とする、EV・ハイブリッド車の競争力強化」「パワートレーンポートフォリオの見直しによる事業基盤強化」の方向性のもと、四輪電動化戦略の軌道修正を行なうという。
EV市場環境の変化と軌道修正の方向性
ホンダは今後の四輪事業で最大の競争領域となる知能化の領域において、独自開発の次世代ADAS(先進運転支援システム)をキードライバーとし、パートナーとの協業も活用しながら多角的に新価値創造を推進。この知能化進化を軸としながら、EVやハイブリッドといった、パワートレーンポートフォリオの見直しを行ないつつ、事業基盤の強化を目指すとしている。
また、EVは足下の市場減速を踏まえた商品投入計画の見直しによって、2030年時点のグローバルでのEVの販売比率はこれまで目標としていた30%を下まわる見通しとしたほか、足下の需要が高いハイブリッド車については、2027年以降に投入する次世代モデルを中心に、EV普及までの過渡期を担うパワートレーンとして商品群の強化を決定。
この軌道修正を着実に実行することで、2030年の四輪販売台数は、現在の規模である360万台以上、その中核であるハイブリッド車は220万台をそれぞれ目指すとしている。
次世代ADASの開発、適用拡大による四輪競争力の向上
次世代ADASの開発については、技術的な難易度がとりわけ高いのは、交通参加者が多様で、交差点での右左折が頻繁に発生する市街地となる。ホンダはAD(自動運転)開発で培った認識技術や行動計画技術を生かし、市街地も含めて目的地まで安全・快適に走行できる次世代ADASの開発を行ない、2027年ごろに北米や日本で投入を予定しているEV・ハイブリッド車の主力ラインアップに幅広く適用するとしている。
また、電動化・知能化が他地域よりも早く進む中国では、自動運転技術を開発する中国のスタートアップ企業「Momenta(モメンタ)」との共同開発により、中国の道路環境にあった次世代ADASを、今後中国で発売する全ての新型車に搭載する。
ハイブリッド「e:HEV」戦略の強化
ホンダ独自の2モーターハイブリッドシステム「e:HEV(イーエイチイーブイ)」と、それを搭載するプラットフォームについて全方位で進化させ、小型・中型車向けのシステムでは、エンジンの高効率エリアの拡大とハイブリッドユニットの駆動効率向上などにより、世界最高効率のパワートレーン実現を目指す。
さらに、操縦安定性などの進化やさらなる軽量化を実現する次世代プラットフォームと、高精度で応答性の高いモーター制御を特徴とする新開発の電動AWD(オールホイールドライビング)ユニットを組み合わせることで、10%以上の燃費向上を目指すとともに、ホンダならではの五感に響く上質・爽快な走りをさらに進化させるとしている。
また、バッテリやモーターなどの主要部品を中心に、取引先との協創活動や、生産のさらなる効率化、部品共用化などを行なうことでコスト低減を追求。これらの取り組みにより、次世代ハイブリッドシステムのコストは、販売台数の拡大に合わせて、2018年モデルに対して50%以上、現行の2023年モデルに対しては30%以上のコスト低減を目標に掲げた。
加えて、北米市場では、広いスペースと高い積載能力を持つ大型車のニーズにサステナブルに応えるべく、2020年代後半の商品投入を目指し、力強い走行性能、牽引性能に、環境性能を兼ね備える大型車向けのハイブリッドシステムを開発。2027年から4年間で次世代ハイブリッドモデルをグローバルで13モデル投入することで幅広いラインアップを構築すると明かした。
EV普及に向けた取り組み
今後EV事業の柱となる「Honda 0(ゼロ)シリーズ」は、2026年に第1弾を投入。CES 2025で発表した「ASIMO OS」や「AD/ADAS」を軸に、ユーザー1人ひとりに「超・個人最適化」されたソフトウェアデファインドビークル(SDV)の価値を提供しつつ、これに続く次世代モデルでは、より高度なAD/ADAS機能を提供するため、セントラルアーキテクチャー型のE&Eアーキテクチャーの採用に加え、ルネサスエレクトロニクスと共同で、AI性能として業界トップクラスの2000 TOPS(Sparse)を20 TOPS/Wの効率で実現する高性能なSoCを開発し、SDVの価値向上を目指すとしている。