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トヨタ豊田章男会長、コマツ小川啓之会長らが出席して62年ぶりに里帰りした「創業期700トンプレス機を囲む会」 国産初の機械式プレス機を前に会談
2025年5月27日 20:30
- 2025年5月27日 実施
国産初の機械式プレス機である創業期700トンプレス機
トヨタ自動車は5月27日、本社工場内において「創業期700トンプレス機を囲む会」を実施した。この創業期700トンプレス機は、豊田自動織機が自動車製造に乗り出すにあたって小松製作所に発注したもの。愛知県刈谷市にあった豊田自動織機の自動車部に1934年(昭和9年)に設置され、その後1938年(昭和13年)にトヨタ自動車本社工場(当時は挙母工場)へ移設。初期のトヨタのクルマづくりを担った。
その後、トヨタがブラジルトヨタのサンベルナルド工場を立ち上げるにあたって1962年(昭和37年)にブラジルに移設、シャシー部品の製造に活躍した。サンベルナルド工場はトヨタ初の海外生産拠点で、日本ではトヨタの自動車製造立ち上げに携わり、ブラジルではトヨタ初の海外製造に携わったトヨタの自動車製造の歴史が刻まれたプレス機になる。
この創業期700トンプレス機は、G1型トラック(1935年、トヨタ初の車両)、AA型乗用車(1936年、トヨタ初の乗用車)デビュー前に設置されており、これらの車両製造に使われたと推測されている(トヨタにも利用記録が残っておらず、推測とのこと)。
その背景としては、輸入自動車が当たり前だった時代にトヨタ自動車創業者である豊田喜一郎氏が純国産自動車を目指し、製造機械においても国産にこだわったという。豊田喜一郎氏は小松製作所に依頼し、小松製作所はゼロから設計を始め、約1年半かけてこのプレス機が完成したと記してある。
創業期700トンプレス機の仕様は、国産初の自動車用フレームプレス機であり、国産初の機械式クランクプレス機。加圧力は700tで、当然ながら国産最大に。当時プレス機では油圧式でさらに高圧なものがあったが、トヨタは機械式を発注。その背景として生産能力があり、機械式のほうが生産性が高く、自動車用としてその性能を狙ったのだろうとのこと。実際、このプレス機の仕様ではスライド速度が7ストローク/分(7rpm)となっていた。
創業期700トンプレス機が里帰りした経緯は、トヨタとして2023年にサンベルナルド工場を閉鎖するという決定があり、当時トヨタ中南米本部長であった井上雅宏 ダイハツ工業社長が改めて700トンプレス機の経緯を確認したところ、90年というトヨタの歴史とともにあるプレス機であることが分かったため豊田章男会長に相談。
豊田章男会長は、「1930年代当時は世界恐慌で先行きも分からない中、大枚はたいてプレス機の購入を決断し、自動車事業を始めた。今の感覚からしてみれば、とんでもない発想と覚悟。先人たちの苦労・想いが詰まった大変貴重なプレス機なので、日本に里帰りさせて、動態保存で活用しながら、先人たちが大変なチャレンジをして事業を始めた熱い想いを感じてほしい」と語ったとのことで、1938年当時にプレス機が設置された場所に里帰りすることになった。
今回開催された「創業期700トンプレス機を囲む会」には、トヨタ自動車 豊田章男会長、小松製作所 小川啓之会長、当時プレス機を設置したサンエイ 川瀨廣正社長らが出席。工場で製造を担ってきたトヨタ自動車 Executive Fellow(おやじ) 河合満氏や、ダイハツ 井上社長らが参加。トヨタとしてとてつもないチャレンジであったプレス機の前で、先人の想いをどう未来につなげていくかなどが語られた。