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【ル・マン24時間2025】トヨタやフェラーリ、ポルシェなどのBoP(性能調整)を確認

2025年6月14日~15日(現地時間) 開催
2025年ル・マン24時間レース。ハイパーカークラスにおけるBoP

 6月14日16時~15日16時(現地時間、日本時間は6月14日23時~15日23時)に決勝レースが行なわれるWEC(世界耐久選手権)第4戦ル・マン24時間レース。12日に予選が終わり、決勝レースへ向けてのグリッドは確定した。

 このWECシリーズで導入されているのが、各参戦マシンの性能のバランスを採るBoP(Balance of Performance、性能調整)という仕組みになる。各マシンの性能の違いを最小にすることでシリーズを盛り上げ、多くのメーカーに参戦してもらおうというものだ。

2024年のBoP。BoPが成立するまでの過程が異なっているので参考程度に

 これまではシリーズを通して性能を調整しながら戦っていたが、2025年はル・マン24時間に限ってのBoPが設定され、各マシンはそのBoPで戦っていくことになる。

 トヨタやフェラーリ、ポルシェなどが戦うハイパーカークラスについては、2025年6月3日付でWEC COMMITTEEより「Balance of Performance for Hypercar category」という文書が発行。ル・マンへ向けてのBoPが確定した。

 性能調整の項目としては、車両重量(kg)、250km/hまでの馬力(kW)、250km/h以上の領域でのパワーゲイン(馬力の増減)、ハイブリッド車においてはハイブリッドモーターでのアシストが可能となる速度(ドライとウェット)、1スティントに使えるエネルギー(MJ)などがある。

TOYOTA GAZOO Racingの7号車

 何がどのくらい有利なのかは、状況によっても違うし、レースの展開によっても違う。レースを見ている側としては、WECが決めたルールであると捉える部分だろう。

 ただ、基本的な考え方はある程度できるのではないだろうか。

 モビリティである以上、すべてにわたって影響するのが車重になる。ハイパーカークラスで一番重いのがトヨタになり1053kg、一番軽いのが今シーズンから加わったアストンマーティンで1030kg。実に23kgの差もあり、それだけトヨタが評価されていることになる。

 一方、250km/hまでの馬力を見てみると、最高がトヨタとアストンマーティンの520kWで、最低がプジョーの507kW。プジョーの車重は1039kgとなりパワーウェイトレシオは……というところだろう。

 さらにこの馬力については、250km/h以上の領域でのパワーゲインも決められており、トヨタはマイナス1.3%(6.76kW減、つまり513.24kW)、フェラーリはマイナス2.9%(フェラーリは元が515kWなので14.935kW減、つまり約500kW)。ここで、「ではフェラーリの車重は?」となるので、一般の人は何が有利で、何が不利なのか面倒になってくる部分だ。

 ただ、車重で最も重いのはトヨタなので、パワー面で有利になってもタイヤの負荷やコーナリング時のクルマの負荷など、一番厳しいし、高い出力を出すにしても高い信頼性が要求されることになる。一方フェラーリは高速域の出力が絞られており、最高速の面で不利。直線区間では苦労する姿を見ることになるかもしれない。

 しかしながらこれも展開次第。イエローや悪天候が長時間にわたれば250km/h以上の割合は低くなりレースに与える影響も小さくなる。では、それはどれくらいと問われれば、レースをしてみないと分からないところだろう。

 このように、非常に分かりにくい微妙な調整がレースを面白くしている部分があり、BoPが各レースフォーマットで採り入れられ、ル・マン24時間レースにおいてはフォードのカムバックや、ヒョンデの高級ブランドであるジェネシスの参戦表明など、カテゴリの活性化につながっている。

 そういった意味でBoPは、レースを盛り上げる要素といってもよく、レースに詳しい方はBoPを分析しつつレースを深く楽しめるし、BoP分析が面倒な方はハンデ戦であることを理解しつつ、推しのチームを応援しながら24時間のレースを楽しめばよいのだろう。

 ただ、日本のレースファンとして一つだけ言えるのは、このハイパーカークラスの興隆をもたらしたのは、トヨタがこのクラスを支え続けたことにある。ル・マンに50年ぶりに復帰したフェラーリに連勝を許しているのは、さすがフェラーリ(いろいろな意味で)と言ったところだが、トヨタも激闘を続けているのはご存じのとおりだ。

 ル・マンの連勝記録は、

ポルシェ 7連勝
フェラーリ 6連勝
アウディ 5連勝を2回
トヨタ 5連勝

 となっており、トヨタの6連勝を阻むかのように50年ぶりに復帰したフェラーリとの戦いは激しく、トヨタ vs. フェラーリといった展開がこの2年続いている。

 トヨタは、ル・マンのレーシングマシンに用いられているハイブリッド技術を「THS-R」と位置付け、フェラーリやポルシェといったスポーツカーメーカーに挑む。低速域でも日常の高速域でも燃費に優れる高効率なハイブリッドとして「THS」は世界的な評価を得ているが、トヨタはTHS-R、信頼性を武器に世界のスポーツカーメーカーと戦い続けている。

 24時間にわたる世界の超一流メーカーによる戦いが2025年も始まる。