ニュース
日産フォーミュラEチームのオリバー・ローランド選手、世界チャンピオン獲得は「高効率なパワートレーンが要因」
2025年7月17日 10:13
- 2025年7月16日 開催
日産自動車のフォーミュラE参戦チーム「日産フォーミュラEチーム」は、「ABB FIAフォーミュラE世界選手権シーズン11(2024/25)」において、23号車のドライバーであるオリバー・ローランド選手がドライバー選手権のタイトルを獲得した。
それを記念して、日産フォーミュラEチームはローランド選手のラウンドテーブルを行ない、今シーズン4勝で7度の表彰台と圧倒的な強さでチャンピオンを獲得した今シーズンを振り返った。
日産フォーミュラEチームは2018-19シーズン(シーズン5)から、当時日産自動車のパートナーだったルノーのフォーミュラEチームだった「Renault e.dams」を引き継ぐ形でフォーミュラEへの参戦を開始、そこから7シーズン目となる2024-25シーズン(シーズン11)において、念願のドライバータイトルを獲得した。
――以前に日産のチームにいたときに比べて、昨シーズンからチームに復帰してから一貫性がある走りができているように見えるが?
ローランド選手:成熟度は非常に重要で、おっしゃる通り以前に比べて成熟したというのはその通りだ。以前日産で走っていた時にもクルマは速かったが、他のクルマと絡んでクラッシュしてしまうことがあった。しかし、現在はそうしたこともなくなり、今手にしているものの中で最高の結果を得ようとしてきたことがこの結果(ドライバータイトル)につながったのだと思う。ただ、(タイトルを決めたベルリン戦)でもベストな仕事はできなかったので、まだ常に学び続けている状況だ。
――今シーズンに大きく成長できた要因は何か?
ローランド選手:それは2シーズン前(2022-23、シーズン9)にマヒンドラチームでの参戦を取りやめたとき、もうレースを楽しめなくなっていた。そこで、私は大きなリスクをとって、日産チームに戻ることを決断した。日産に戻ることがリスクだった訳ではなく、マヒンドラから日産に移籍することを決めるまでの間に契約がないという状態であったことがリスクだった。しかし、自分はそれを受け入れて、昨シーズン(シーズン10)や今シーズンに向けての助走とすることにしたのだ。特に昨シーズンは最高のパッケージを持っているわけではなかったのでプレッシャーがない状態でのびのびと走れて、今シーズンへの準備に当てることができた。そうした中で昨年の最終ラウンド(ロンドン)で優勝できたことが大きなステップになった。
今シーズンは昨シーズンまでに行なった開発があたり、よいパフォーマンスを発揮するクルマを作り上げることができた。今シーズンは、チームも、そのパッケージもすばらしいことが分かっていたので、あとは自分がよいパフォーマンスを発揮するだけだった。
――これまでシーズンでトップ3に入ったことがなかったのに、今シーズンはドライバーチャンピオンになった。その最大の要因は?
ローランド選手:先日FIAが過去のチャンピオンのリストを掲載していたのを見ていて、シーズン1からのチャンピオンを見直してみた。それらのドライバーはいずれも高い能力を持っていて、印象的なドライバーばかりだ。なので、その一部になるというのは本当に誇らしく感じている。
――日産フォーミュラEチームやローランド選手がこれだけ強くなった要因は何か?
ローランド選手:批判を受け入れて、改善していきたいという気持ちがあることが最大の強みだと思う。そうしたメンタリティーは、(日産フォーミュラEチームの母体になっているDAMSチームの共同創始者)ジャン・ポール・ドリオのメンタリティーであり、それをチーム全体で共有していることで結果につながっているのだ。また、チームメイトにも恵まれている。セバスチャン・ブエミ選手、アレクサンダー・シムズ選手、ルーカス・ディ・グラッシ選手、サッシャ・フェネストラズ選手、そして今シーズンのノーマン・ナトー選手など、チームメイトから多くのことを学ぶことができた。若いころはとにかく速く走って優勝するみたいな考え方だったのが、今はこのパッケージなら5位になれるなら確実に5位を取りにいく、そうしたメンタリティーで走ることができている。
――(ドライバーチャンピオンを獲得した)ベルリンでのレース後に日産自動車のイヴァン・エスピノーサCEOからメッセージをもらったか?
ローランド選手:彼からは月曜日に素敵なお祝いのメッセージをもらった。
――ご自身のこれからのキャリアに関してはどう考えているか? 例えばチームメイトのノーマン・ナトー選手は、WECにも参戦している。来年はWECとの日程の競合がなくなるという話ですし、そうした他のカテゴリーでレースをする興味はあるか?
ローランド選手:ノーマンに話を聞くと、両方のシリーズを同時に戦うというのは本当に大変だと思う。自分に関しては今のところ他のプログラムを開始する予定はない。ノーマンのスケジュールを見ていると、家族と過ごす時間がないように見える。また、アービット・リンドブラッド選手(レッドブル育成のドライバー、今シーズンはF2に参戦し、イギリスGPで角田裕毅選手の車両でFP1に参加した期待の若手ドライバー)のサポートをしており、F2のレースには14レース中10レースに見に行っている。それにフォーミュラEのレースを加えると、信じられないほどに忙しい。そう考えると、これにさらに予定を詰め込むというのは難しいではないかと思っている。
――日産のパワートレーンは、他社のパワートレーンに比べてどんな強みがあると考えているか?
ローランド選手:2つの要素が強みだと考えている。1つは全体的な効率と、日本の開発者が開発しているモーターやギヤボックスの設計コンセプトだ。そうした日本の開発者が開発したパワートレーンが、フランスのチームの車両と組み合わされることがわれわれの強みとなっている。シャシー制御システム、ソフトウェアなどがパワートレーンと組み合わされることで高い効率を実現していて、そのことがわれわれの強みとなっている。
――日産の市販車でどれが好みか?
ローランド選手:やはりGT-Rは明らかに歴史的な車両だし、クールな存在だと思っている。また、スポーツカーというわけではなくて、一般的な市販車という意味ではアリア(ARIYA)は超いいクルマだと思う。
――ロンドンの最終ラウンドでチーム選手権を獲得できる可能性は?
ローランド選手:ロンドンラウンドでの最後の2レースは、すでにドライバーチャンピオンを獲得していることもあり、フリーなレースができると考えている。すでにチーム選手権では2位になっており、それでもすばらしい結果だと思うので、まずはレースを楽しんでできるだけ最高の結果を出してチームタイトルを獲得できれば、すばらしい結果になると考えている。
===================================
フォーミュラEは7月26日~27日に予定されているロンドンラウンドでの第15戦、第16戦をもってシーズン11のフィナーレを迎えることになる。すでにローランド選手のドライバータイトルは確定しているが、チームタイトル、マニファクチャラータイトルに関しては引き続き最終ラウンドの結果次第となっている。現状、両選手権をポルシェがリードする形になっており、日産フォーミュラEチームはそれを追いかける形。最終ラウンドの結果次第で日産がチームタイトルやマニファクチャラータイトルも獲得できるかどうかが、次の焦点となる。


