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横浜ゴム、新スタッドレスタイヤ「アイスガード8」発表 「新たな基盤素材“水膜バスター”へたどり着いた」と清宮眞二社長
2025年7月18日 12:09
- 2025年9月1日 発売
- オープンプライス
横浜ゴムのプレミアム商品の主軸の1つ「ウィンタータイヤ」の新製品
横浜ゴムは7月17日、第8世代となる乗用車用スタッドレスタイヤの新商品「iceGUARD 8(アイスガード エイト)」の発表会を都内で実施した。設定サイズは185/70R14~225/45R21の全71サイズで、9月1日から順次発売される。
発表会で登壇した横浜ゴム 代表取締役社長 兼 COOの清宮眞二氏は、2024年度~2026年度に推進している中期経営計画「Yokohama Transformation 2026(YX2026)」に触れ、既存事業のさらなる「深化」と、100年に1度の大変革期である市場変化における新しい価値の「探索」を推し進め、成長戦略により企業価値向上を実現させるとあいさつ。
また、これまで横浜ゴムは消費財(乗用車用タイヤ)に偏っていたが、2016年以降は生産財(トラック・バス用、農業・機械用タイヤ)も事業買収などで拡大させ、世界市場と同じ割合に修正したものの、最近はコスト競争力に優れる中国タイヤメーカーが勢いをましていて、2030年にはグローバルにおける乗用車用タイヤの50%が中国メーカー産になる予想もあり、大きな課題という。
そこで横浜ゴムは、独自に技術を進化させている高付加価値商品である「アドバン」「ジオランダー」「ウィンター」といったプレミアムタイヤの最大化を図り、さらなる成長につなげるとした。
続けて「冬用タイヤ」の市場について言及。現在世界では約1.7億本の冬用タイヤ需要があり、そのうち約6000万本がスタッドレスタイヤ需要という。また、日本市場は約1600万本の需要がほぼスタッドレスタイヤであり、世界重要約6000万本の実に4分の1強を占め、「横浜ゴムにとってもっとも重要な市場の1つである」と清宮社長。
横浜ゴムのスタッドレスタイヤの進化については、1999年に吸水をテーマとした独自技術、氷が滑る原因である水膜を除去するという“吸水ゴム”を開発して商品へ投入。以降も積極的な研究開発を重ねてきたほか、1989年に開設した冬用タイヤテストコース「T*MARY(ティーマリー)」を、2015年に東京ドームの約19個分の広大な敷地や国内最大級の屋内氷盤試験場を有する「TTCH(Tire Test Center of Hokkaido)」へ移転・拡張させ、さらなる開発の強化、性能の追求に取り組むなど、継続的かつ積極的な経営投資も実施してきたと説明。
日本の冬の安全はスタッドレスタイヤが守る!
横浜ゴムが“氷上性能”にこだわる理由について清宮社長は、「日本の冬道は特異な環境下で、特に日本各地で発生する凍結路面は、他の国々に比べて滑りやすく、また凍っていないように見えても実際は凍っているなど、世界屈指の過酷な環境です。そして日本の代表的な降雪都市は、世界有数の降雪量に加え、気温が高く、日中に雪や氷が溶け、夜間には凍結します。さらに降雪都市は人口も自動車の交通量も多く、結果どの都市よりも氷が磨かれ極めて滑りやすい路面になる」と説明。
そのため北海道では、冬季の事故率がそれ以外の時期に対し2割多く発生しているほか、事故発生時の路面状況も凍結路面が約42%を占め、日本の凍結路面の過酷さと危険さを裏付けている。同時にスタッドレスタイヤへの要望にいて清宮社長は、「商品の世代を重ねるごとに飛躍的に氷上性能の向上を行ない、2021年発売のアイスガード7では、条件によってはスタッドタイヤの性能を上まわっていますが、ユーザーニーズは30年前から変わらず氷上性能がもっとも求められていて、より氷上に優れた技術と商品の開発について立ち止まることはできません。日本の冬の安全をスタッドレスタイヤで守るをテーマに技術を進化させていきます」と語気を強めた。
新たな基盤素材“水膜バスター”を発見
横浜ゴムはこれまで、「吸水バルーン」や「吸水ゴム」といった発明により、当時の基盤技術の壁を乗り越えてきたが、いよいよ性能向上の限界が見え、限界突破を目指すにはこれまでの課題を解決する基盤技術を一掃する必要があると判断。
新たな基盤素材の探索は、2017年に発売したアイスガード6の開発後にスタートしたそうで、「氷上摩擦力」「吸水量」「ゴム表面の接触点」の3つが従来の基盤素材を上まわることと、石油由来ではなく天然由来素材であることをターゲットに掲げたという。
そして開発スタッフらは、世界中のさまざまな技術展示会に足を運び、数百にもおよぶ候補を探索。実際にタイヤ評価を行なう約40種類まで絞り込む研究開発を経て、「最終的に1つの新たな基盤素材“水膜(すいまく)バスター”へたどり着きました」と清宮社長は振り返る。
水膜バスターは、従来の基盤素材よりも「小型」で「多層構造」なのが特徴で、同じ容積でも従来の約5倍の密度で配置できるうえ、多層構造により表面積が増えて接触密度が63%も増えたことで、より能動的な吸水を強力に行ない、従来よりも吸水量を8%増加させた新たなコンパウンド「冬ピタ吸水ゴム」の開発に成功。加えて石油由来から天然由来への移行も達成したことで、持続可能なスタッドレスタイヤへと進化。
また、トレッドデザインの設計は、横浜ゴムのAI活用フレームワーク「HAICoLab(ハイコラボ)」のAI技術とシミュレーション技術を活用して、氷上制動の向上に効く接地面積を8%、ブロック剛性を7%向上させることに成功。さらにスタッドレスタイヤに必要不可欠な氷上性能と相反する雪上性能についても、溝エッジ量の4%増加を可能にし、より優れた雪上性能も獲得した。
新技術コンセプト「冬テック」を搭載した商品の第1弾が「アイスガード8」
このミクロレベルで氷とゴムの接触点=「接触の密度」を最大化することと、圧縮抵抗、雪柱せん断力、疑着摩擦力、エッジ効果といった冬用タイヤの4つの機能を最適化し、マクロレベルで路面とタイヤの接触の面積を最大化する=「接触の面積」の2つを新技術コンセプトを「冬テック」として確立。この冬テックを採用した第1弾商品が、「アイスガード8」となる。
アイスガード8は、従来品アイスガード7との比較で、氷上制動で14%短く止まるといった、アイスガードシリーズで一貫して追求してきた氷上性能を高めるとともに、氷上旋回性能も13%向上。また、これら氷上性能の大幅な向上のみならず、雪上性能、4年も永く効く性能の維持性、ドライ路面での性能、ウェット路面での性能を向上。さらにロードノイズで22%低減、パターンノイズで21%低減と静粛性脳も向上しつつ、従来の同等レベルの優れた低燃費、耐摩耗性能を両立している。
最後に清宮社長は、「2025年度冬シーズンに向けて、この新商品アイスガード8を加えることになり、横浜のスタッドレスタイヤ、アイスガードシリーズをより強力なものとし、日本の冬の安全はスタッドレスタイヤが守るという考えのもと、日本の過酷な凍結路面のさらなる安心安全をお客さまに届けるべく取り組んでまいります」と締めくくった。





















