ニュース
氷上ドライビングレッスンに片山右京氏登場 走りが変わるカヤバのオイル「サステナルブ」と横浜ゴムのスタッドレスタイヤ「アイスガード7」を体感
2025年2月10日 14:30
- 2025年2月5日 開催
冬季の長野県・女神湖では、例年Car Watchでもおなじみ元ラリードライバーの日下部保雄氏が代表を務めるPROSPEC主催の「氷上ドライビングレッスン」が開催されている。
2025年は「カヤバモータースポーツ×iceGUARD 7&PROSPEC Winter Driving Park 2025」と題し、スタッドレスタイヤ「iceGUARD 7」の横浜ゴムと、社員チームで全日本ラリー選手権に参戦しているカヤバのモータースポーツ部門が協力する形で実施された。
インストラクターから直接アドバイスを受け、一般道でも役に立つドライビングスキルを磨ける貴重な機会とあって人気の同イベント。2025年はそれに加えて、元F1ドライバーの片山右京氏ら豪華講師陣が登場するとともに、カヤバのショックアブソーバー用オイル「サステナルブ」の試乗体験も行なうなど充実のプログラムとなった。
女神湖で行なわれる氷上ドライビングレッスンとは
冬季になると、女神湖の湖面は氷と雪ですっかり覆われ、人や車両が乗り込んでもびくともしない凍結路面になる。まるでスケートリンクのように極めて滑りやすく、しかしこの氷上でクルマの走らせ方を学ぶことで、一般道でのドライビングにも通じるテクニックを磨ける。
同イベントでは湖面に、直線状にパイロンを置いて蛇行とブレーキングを試せる「ブレーキング&スラロームエリア」、パイロンを中心に定常円旋回する「アクセルワークエリア」、複数のコーナーから構成されたコースを走る「ハンドリングエリア」の3つのエリアが設けられる。
参加者は決められた走行スケジュール内なら、それらのエリアを自由に走って、滑りやすい路面でのドライビング方法を自ら学んでいける。また、インストラクターに気軽に声をかけて具体的なアドバイスをもらい、さらなるテクニック向上を目指すこともできる。
今回のイベントは、メンバーのほとんどが社員で構成されるカヤバのワークスチーム「KAYABA RALLY TEAM」の練習も兼ねていたことから、早朝時間帯は同チームの占有走行となり、その後は一般の参加者も加わって、あらかじめ決められた班分けとスケジュールで混走する形となった。
毎年豪華な講師陣が参加する同イベントだが、2025年は元F1ドライバーの片山右京氏、ラリードライバーの奴田原文雄氏、2024年全日本ラリーチャンピオンの新井大輝選手、全日本ジムカーナで活躍した斉藤邦夫氏をはじめとする計7人がインストラクターを務め、一般参加者の熱量はいつになく高く感じられた。
片山氏も絶賛するカヤバの「サステナルブ」で何が変わるのか
今回のイベントの目玉の1つともなっていたのが、カヤバが開発したショックアブソーバー用オイル(作動油)である「サステナルブ」を使用した車両の試乗体験だ。
サステナルブは、従来の鉱物油主体のオイルではなく、生分解性を備えた天然由来のオイルを使用。生成過程で二酸化炭素を吸収することからカーボンニュートラルに貢献するとともに、リサイクル性や廃棄時における環境への影響にも配慮したまさにサステナブルな設計となっている。さらに、ショックアブソーバーの作動油としても従来以上の優れたパフォーマンスを発揮できるとしている。
作動油には通常、摩擦材と呼ばれる添加剤が付加されている。それとショックアブソーバー側のオイル流路の調整機構との組み合わせにより、サスペンションスプリングの振動の減衰力をコントロールする、というのが大まかなショックアブソーバー(ダンパー)の役割だ。
開発者によると、これまでの鉱物油主体のオイルでは摩擦材で制御できる範囲は少なかったが、サステナルブではその範囲が広がり、主に減衰が作動し始める初期レスポンス領域における摩擦力をさまざまにコントロールできるようになったという。
イベント当日は、このサステナルブを使用したショックアブソーバー装備のトヨタ「ヤリス」と、ヤリス純正仕様に沿ったショックアブソーバーを装備(作動油はカヤバ製の市販品で、ボディは分解式)した車両とで比較試乗できるようになっていた。作動油以外は完全に同一の仕様とのことだった。
筆者が実際に試乗したところでは、まっすぐ走っているだけでも明らかな違いを感じられた。凍結路面上には細かな凹凸もあるが、純正仕様の車両だとただただ落ち着かない印象だったところが、サステナルブ仕様の車両はその凹凸1つ1つに沿ってサスペンションが動いているような感触。
ハンドルを切ったところですぐには向きを変えてくれない滑りやすい氷上ではあるものの、サステナルブ仕様は行きたい方向に頭がすっと入ってくれるため、パイロンスラロームやハンドリングエリアのコーナーをずっと楽にクリアできる。
片山氏も、試乗して戻って来るやいなや、「まるでタイヤが変わったみたい。(純正仕様だとタイヤが滑って向きを変えてくれないところも)滑らかに追従する。これは偉大な発明じゃないか」と興奮気味に話し、「本当にオイルだけ(を変えている)?」と開発者を問い詰めるほど。「たった100mのスラロームを走っただけで違いを感じられる。タイヤの限界の少し先まで使えるようになって、それだけでラインどりの自由度がまるっきり変わってくる」とも語っていた。
サステナルブは2024年度の全日本ラリーでKAYABA RALLY TEAMが採用し、実地検証を進めてきた。チームの社員ドライバーである石黒一暢選手はサステナルブについて「非常に有用なもの。ドライバーによっては直接的にタイム短縮につながると感じる人もいると思う」とし、「少なくともドライバーに不安を抱かせないので、そういう安心感の中で走れると精神的な余裕も生まれてくる」と話した。
同社によると、現在は摩擦材の配合を変えて汎用性や性能を高めるべく調整を行なっている段階。2025年度には競技車両のオーバーホールサービスにサステナルブ仕様のメニューを追加する予定で、2026年度には一般ユーザーも購入できるように市販化を目指すとしている。
自分や相手を傷つけない運転の仕方を身に付けられる
当日はほぼ終日雪が降り続いたうえ、時折強い吹雪で視界が遮られることもあったが、参加者の多くはイベント終了となる15時頃まで熱心に走り込み、時にはインストラクターに積極的に話しかけ、同乗してもらいながらアドバイスを受けていた。
主催した日下部氏は「今日はドライビングのベーシックな部分をわれわれPROSPECのスタッフが、その応用となるところをインストラクターの方が教えてきました。特にインストラクターは1人1人(出身レースカテゴリーが違うこともあり)視点が異なるので、その中から自分に合うアドバイスを選ぶのがいいと思います」と、氷上ドライビングレッスンのポイントを改めて解説。
インストラクターの1人として参加した片山氏は、「こういうイベントは一般の方も絶対に参加した方がいいですよね。一度でもこういうトレーニングをしておけば、万一のときにもパニックにならずに済むし、自分や相手を傷つけない運転の仕方を身に付けることもできます」とコメントした。
また、指導にあたったKAYABA RALLY TEAMのドライバーである石黒選手には、「ワークスドライバーとしてレースの中で求められること、失敗したときにいかに原因を分析していけるか、といったところを話しました。この短時間で彼の顔つきも、話す内容も変わってきて成長が感じられます」とし、「メーカーの社員ドライバーが少ない時代なのでプレッシャーは大きいかもしれないけれど、同じようにかつて三菱自動車の社員ドライバーだった篠塚建次郎さんや増岡浩さんのようなドライバーになってくれれば」とエールを送った。
その当事者である石黒選手自身は、「去年の課題だった、氷上においてアクセルもブレーキもステアリングも操作が全て遅かったところは、今日に至るまで自主練習も繰り返してきたことで合格点をいただけました。上位の壁は厚いですが、2025年の全日本ラリーでは実力でしっかり入賞していきたいと思います」と、新たな刺激を受け意気込みは十分のようだった。
























