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アステモ、レアアースフリーで資源リスクを低減するバッテリEV用の新型モーター開発 180kWと135kW

2025年10月27日 発表
新型モーターのモックアップ。左が主駆動用ステーター&ローター、右が副駆動用ローター

レアアースフリーで資源リスクを低減するバッテリEV用新型モーター

 アステモは10月27日、レアアースフリーで資源リスクを低減する新型モーターを開発したと発表した。発表したモーターは2種類で、主駆動を視野に入れたフェライト磁石使用の「磁石補助同期リラクタンスモーター」と、副駆動を視野に入れた磁石不使用の「同期リラクタンスモーター」。

 磁石補助同期リラクタンスモーターは、180kW(400/800Vdc)。同期リラクタンスモーターは、135kW(400/800Vdc)になる。

従来の永久磁石モーターと、新型の同期リラクタンスモーターの比較

 従来のバッテリEV用は、出力に必要な強力な磁力を発生させるため、ローターにネオジムなどのレアアースから成る永久磁石(ネオジム磁石)を多く使用していた。しかしながら、ネオジム磁石は地政学的なリスクが高いレアアースのため安定供給が課題となっていた。

 しかしながら、一般的な永久磁石であるフェライトでは磁力がネオジム磁石の1/3となるため、同程度の磁力を得るためには3倍のサイズが必要になっていた。永久磁石を使用しない誘導モーターや巻線界磁モーターなどが実用化されているが、これは巻線に多くの銅材料を使用する。銅材料についても、再生可能エネルギーや電動車両の普及拡大に伴い需給のひっ迫が懸念されており、資材リスクが存在した。

 アステモは、従来型の永久磁石モーターを代替する新型の同期リラクタンスモーターを開発。この新型モーターではローターコアの形状による磁気抵抗(リラクタンス)の差を利用して回転力を生み出す。磁力を伝える経路を複数の層に分ける「多層フラックス構造」を開発し、ローターコア部分に磁極が形成されるように電流を適切に制御し、ネオジム磁石が生み出していた強力な磁力を補うことが可能になったという。

 バッテリEVの駆動力として常時駆動するモーターには、フェライト磁石を補助的に埋め込んだ磁石補助同期リラクタンスモーターによって、従来の永久磁石モーターに対してサイズ増加を30%に抑えて180kWの出力を実現。パワーアシストとして必要なときだけ動かす副駆動モーターでは、磁石を埋め込んでしまうと、主駆動モーターによって惰行回転しているときに磁石の磁力がブレーキとして働き、エネルギーロスが発生する。そのため副駆動モーター向けには、磁石を一切使用しない同期リラクタンスモーターを開発。最大135kWまでの出力をカバーすることで、バッテリEV駆動システム全体の消費電力を抑制する。

 今回開発した新型モーターは、10月30日から東京ビッグサイトで開催されるジャパンモビリティショー2025に展示する。