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三菱自動車、2025年度上期決算 営業利益は81.0%減の173億円、当期純利益は-92億円で赤字化

2025年11月5日 開催
2025年度上期決算について説明する三菱自動車工業株式会社 代表執行役社長 兼 最高経営責任者 加藤隆雄氏

 三菱自動車工業は11月5日、2025年度上期(2025年4月1日~9月30日)の決算を発表した。

 2025年度上期の売上高は前年同期(1兆3073億8200万円)から3.5%減となる1兆2612億5900万円、営業利益は前年同期(907億3700万円)から81.0%減の172億5300万円、営業利益率は1.4%、経常利益は前年同期(692億3500万円)から77.1%減の158億2400万円、当期純利益は前年同期(379億5100万円)から赤字化して-92億3100万円。また、グローバル販売台数は前年同期(40万8000台)から2万4000台減の38万4000台となっている。

三菱自動車 2025年度上期決算の業績サマリー

営業利益81.0%減の173億円、当期純利益は-92億円で赤字に

三菱自動車工業株式会社 代表執行役副社長(CFO)松岡健太郎氏

 オンライン開催された決算説明会では、最初に2025年度上期の決算内容について三菱自動車工業 代表執行役副社長(CFO)松岡健太郎氏が解説。

 米国による関税の不透明感は一部が解消され、環境規制についても緩和の動きが見られる一方で、中国メーカーを中心とした価格競争はさらに激化しており、米中の対立などを背景とする素材の供給懸念、経済の停滞といった地政学的、マクロ経済的な不確実性は依然として高い状況にあると説明。

 販売環境ではコスト上昇や需要回復の遅れも重なって引き続き厳しい局面が続いており、このような市場環境を背景とする上半期業績は前年同期比で減収減益の結果となっている。当期利益が純損失になっている点は、米国の環境規制が変更されたことに伴う環境クレジットの評価損失として70億円、中国合弁エンジン工場の撤退に伴う関連損失60億円といった一時的な損失が含まれた結果となっている。

2025年度上期のグローバル販売台数と市場別の内訳

 市場別の販売動向では、アセアンではタイ、インドネシアで自動車需要の低迷が続く一方、フィリピンでは底堅い需要が継続。販売の激化が続いているが、柔軟な対応によって販売シェアを維持している。下期以降は新型モデルの仕向地拡大が本格化する計画となっており、シェア拡大を図っていく。

 オセアニアでは豪州で全体需要が微増しているが、販売競争の激化が下支えとなっている状況で販売環境は依然として厳しい状況が続くと説明。三菱自動車では販売が終了したモデルの影響で販売台数、シェアともに減少となった。下期以降は新型車「ASX」の販売強化、フリートパートナーズとの連携強化によって販売拡大に注力する。

アセアン・オセアニア市場の販売状況

 中南米では一部の市場で価格競争が過熱しつつ、堅調な需要が続いて販売が回復基調で推移。新型「L200 トライトン」や新型「アウトランダー スポーツ」の販売拡大によって台数増を実現。これからも新型車に注力して中南米全体で販売を底上げしていく。

 中東では紛争の影響によって自動車販売が一時的に急落したが、全体的には堅調に推移していると説明。一方で競争激化が販売に影響しており、今後は各国の販売会社、パートナーとの連携を強化して、ブランドの柱となっている「アウトランダー」やL200 トライトンを活用して計画達成を図っていく。

中南米・中東アフリカ市場の販売状況

 日本では一部モデルの販売を終了しつつ、「デリカD:5」の販売モメンタムが全体の販売を牽引して販売増となった。今後は新型「デリカミニ」を確実に立ち上げて販売台数と市場シェアのさらなる拡大を目指していく。

 北米市場の中心となる米国では追加関税による価格上昇を見越した需要の先取りとBEV購入の連邦税補助の打ち切りといったタイミングが重なって駆け込み需要が発生。三菱自動車では主に第1四半期に追加関税の対応として販売費用の抑制を行なったことで台数減となった。税制や環境規制の変化、BEVの税制補助終了など市場環境は大きく変化しており、他社の動向や顧客ニーズなどを的確に把握し、柔軟に対応して計画達成を図っていく。

 欧州では全体需要がわずかに増加しているが、主要国の販売激化の影響を受けて販売台数が減少。今後は新型「アウトランダーPHEV」の販売拡大に取り組み、投入を予定する新型車の確実なローンチに注力して成功させていくとした。

日本・北米・欧州市場の販売状況
2025年度上期の営業利益変動要因
2025年度第2四半期の営業利益変動要因

2025年度通期の業績見通しでは売上高を400億円引き下げ2兆8200億円に修正

2025年度通期の業績見通し

 2025年度通期の業績見通しは三菱自動車工業 代表執行役社長 兼 最高経営責任者 加藤隆雄氏が説明。上期の業績と経営環境を踏まえ、業績見通しは8月27日に公表した計画を基本的に据え置きとしつつ、販売台数を2万6000台下方修正。これと連動して売上高も2兆8600億円から400億円引き下げて2兆8200億円に修正している。

対前年度比の営業利益見通し変動要因

タイにあるMMTh 第3工場の休止を決定

第2四半期に市場投入した主な新型車

 決算内容に続き、加藤社長は第2四半期期間のビジネスハイライトを紹介。7月末からインドネシアでの販売が本格化した新型「デスティネーター」は9月末の時点で1万台以上を受注し、期待を大きく上まわる結果となっている。また、デスティネーターは今後、フィリピン、ベトナムといった市場にも順次投入される予定となっている。

 日本で10月29日に発売されたデリカミニと「eKスペース」はすでに1万台を超える受注を記録しており、こちらも好調なスタートとなった。デリカミニは2023年5月に発売されて以降、三菱自動車のブランドを象徴するモデルとして人気を集め、公式キャラクターである「デリ丸」とともに広く支持されているとアピール。新型デリカミニでは走行性能、機能性、快適性などを進化させ、冒険をともに楽しめる相棒として多くのユーザーに選ばれることを期待していると述べた。

 また、オールラウンドミニバンとして位置付ける「デリカD:5」も大幅改良を行なって10月30日から予約注文の受け付けを開始。新しいデリカD:5では力強いスタイリングと走りをさらに進化させたと紹介した。

 欧州市場向けのモデルでは、2025年度中に新型コンパクトSUVである「グランディス」を販売開始。グランディスはアライアンスパートナーであるルノーからOEM供給される「CMF-Bプラットフォーム」を採用して、マイルドハイブリッド、ハイブリッドをラインアップするという。

 9月にベルギーのブリュッセルで世界初公開した新型BEV「エクリプス クロス」も欧州市場での順次発売を計画。新型エクリプス クロスは三菱自動車にとって欧州初のBEVとなり、電動化ロードマップでも戦略的な役割を果たすモデルとなる。

欧州市場向けとなる新型コンパクトSUV「グランディス」、新型BEV「エクリプス クロス」を発表

 事業構造の改革では、米国での関税は一定の改善が見込まれているものの、競争環境では厳しさが続き、こうした市場環境でも利益を確保できるよう、7月には中国でエンジン事業からの撤退を実行しており、今後も必要な構造改革を続けていくと表明。

 タイでも構造改革を進めているが、足下でのピックアップトラックをはじめとする需要の減少、中国のBEVメーカーとの競争激化、タイバーツ高による輸出収益の悪化といった要素が重なって事業環境が厳しくなっていることから、“次なる改革フェーズ”としてタイにあるMMTh(ミツビシ・モーターズ・タイランド)第3工場の休止を決定。今後は生産する車種を第1工場に集約して効率化を推進していく。さらに休止した工場用地にサプライヤーを誘致したり、部品保管拠点として活用したり、コスト競争力を強化していく。

タイでの構造改革として、MMTh 第3工場の休止を決定した

 最後に加藤社長は「年初から大きな話題となった米国関税については一定のめどが付いたものの、15%という高い関税が維持されることとなりました。これに加え、中国メーカーの極端な安売り展開、米中の対立を主体としたレアアースや部品の供給懸念のほか、カーボンニュートラル対応の減速やAIの広がりなどにより、自動車業界では今後非常に大きく、かつダイナミックな変化が起きると考えています。当社もその大きな変化に乗り遅れないよう、一定の利益は確保しつつ、必要な改革を継続的に遅滞なく実行していくとともに、成長が期待される分野に積極的に投資を行なって事業の成長と安定化を図ってまいります」とコメントしている。

「下期は例年以上の新型車投入で海外販売を挽回していく」と加藤社長

質疑応答で回答する加藤社長

 質疑応答では海外市場での販売台数が伸び悩んでいることの対策について質問され、これに対して加藤社長は「海外市場では今年に入ってこれまで販売してきた『RVR』、海外では『ASX』や『アウトランダー スポーツ』として販売していたモデルですが、これと『エクリプス クロス』の販売が中止になったことによる台数減が大きく影響しています。これで海外市場の販売で調子がわるいように見えてしまっていますが、一方で先ほどから説明している『デスティネーター』は非常に好調で、下期からはデスティネーターがベトナムやフィリピンでも販売がスタートしていきます。古いモデルが終わって、少し間が空いて新しいモデルが出てくる端境期のような状態です。これで上期は低迷したような感じですが、下期には新型車が例年以上に多く立ち上がっていきますので、台数的にもある程度挽回できると考えております」。

「国内では上期の当初から販売が非常に好調を維持しておりましてが、これには『デリカD:5』と『デリカミニ』のモデル切り替えになって、生産してためておいた車両が売れてしまって販売できる車両が少し足りなくなっている状況にもなっています。デリカミニの受注は好調で、デリカD:5も受注開始から5日ですが、すでに1000台を超える受注をいただきまして極めて好調と言える状態です。国内はかなり当社の販売が伸びていると認識しております」。

「ただ、先ほど海外向けは端境期で下期からは販売が上がってくると言いましたが、やはり競争が激化してくるところはあると思いますので、そのあたりも考慮して国内の販売をいっそう強化してまいりたいと考えております」と回答している。

決算資料の表紙には新型「デリカミニ」の写真が使われている