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小野測器と東大大学院新領域創成科学研究科、EV振動計測・制御分野での連携成果を発表
電気モーターの回転制御だけで振動を抑制する研究
2025年11月21日 11:12
- 2025年11月19日 開催
小野測器と東京大学大学院新領域創成科学研究科(以下、東大)は11月19日、千葉県柏市の東大柏キャンパスにおいて、2022年10月1日より開講している「電気自動車の振動計測制御に関する社会連携講座(第1期)」の成果を発表。EVやドローンの電気モーターの回転制御で振動を軽減することなどを実演した。
合わせて研究中の走行中給電、ドローンの飛行中給電などの技術も公開した。さらに今後の活動についても発表した。
電気モーターの回転制御だけで、振動を抑制し快適性や静音性を向上
今回の社会連携講座とは授業のような講座ではなく、特定の目的を持った研究のための活動。東大と小野測器が2022年から活動し、モーターの高い応答性を活用し、車両構造に依存しない制御、乗り心地を考慮した低振動、低騒音な制御をしようという研究。
これを、台上試験装置を使って車両の振動要因の解析とモデリングを行ない、台上試験での評価や、実路走行での評価などを行なっていく。
具体的に制御内容は、モーターの回転には振動があり、車体側にモーターを搭載する現在の一般的なEVではドライブシャフトやギヤのバックラッシュ、筐体マウントなどの振動要因がある。車輪内にモーターを収めるインホイールモーターでも、バネ下重量増加によるバネ下振動などがある。
これをモーターが回転する中で、非常に短い時間で正方向、逆方向にトルクをかける回転制御によって振動を打ち消す動作をさせる。
内燃機関の場合では、こうした制御を行なおうとしても、正方向のトルクしかかけられず、しかも応答が遅いため不可能。電気モーターでは極めて高い応答性と逆方向にもトルクがかけられることでこうした振動抑制が可能になる。
さらに、インホイールモーターの場合は回転制御で上下方向の力を加えることがしやすくなり、アクティブサスペンションのような動きも実現できる。こうすることで、制御にはエネルギーを使うものの、道路の凹凸を進む際のエネルギーロスを抑えることができ、乗り心地をよくした上で全体のエネルギー消費を減らす方向に持っていくことが可能になる。
また、モーターの回転制御はドローンにおいても応用可能。プロペラの回転制御をすることで推力振動を抑制し、騒音軽減や横風にも対応しやすくすることもできる。
これは、この日公開した実験の1つ、ドローンの飛行中給電と関係がある。飛行コースの一部に沿って飛行中給電の装置を設置すれば着陸して充電することなく飛び続けられる可能性が出てくるが、その場合、騒音問題が発生する可能性がある。ドローンの振動抑制は想定される問題に対して先まわりして実施する意味もあるとのことだ。
第1期は台上試験装置を活用した平行軸e-Axle搭載車両の振動抑制制御を実施
講座の第1期の研究は、電気自動車の駆動モーターの高応答性に着目し、車両振動抑制制御および車両運動制御に関する研究開発。台上試験装置の「RC-S(Real Car Simulation system)」を使い、走行抵抗相当の負荷トルクをかけて、車両には実際に道路を走っているかのような挙動を与える。
もともと台上試験装置はクルマがほぼでき上がってから車両評価に活用することが多いが、今回の研究では制御器設計に活用する。クルマの設計としてはかなり前の段階となり、設計の手戻りを防ぐことにつながる。
研究では三菱自動車工業のe-Axleユニットを搭載したPHEVの振動抑制を目的とし、RC-Sを活用して制御設計を行ない、実際にe-Axle単体と車両に搭載しての試験では共振周波数の低減が確認でき、さらにスリップ路面での発進制御において、滑らずにスムーズに加速することなどが可能になった。それにより、テストコースなしでもRC-Sを活用することで、制御器を簡単かつ効率的に設計と評価ができるとしている。
また、ドローンに関してはプロペラとモーターだけの単体での振動抑制制御を行なった。通常は一定で回転するが、プロペラの位置や横風などに合わせて回転速度を調整することで、振動を抑制することができた。
2026年4月からの第2期は台上試験装置をさらに開発
2026年4月からは、台上試験装置についてさらに研究を進める。これは、試験対象となるモーターが高度な応答力を制御できるようになると、台上試験装置が要求される性能も上がっていくため。
等速ジョイントのガタ打ち、モーターの回転子の位置によるトルクのリップル、制御装置と設備間の通信遅延といった試験装置の振動要因を抑制する制御を開発していく。
また、ドローンについても第1期ではモーターとプロペラの単体だったが、機体を考慮した振動抑制などを行なっていく。
小野測器では、EVの振動抑制制御や運動制御を研究
一方、小野測器は自動車など最終製品を開発・製造する会社ではないが、電子計測器や試験装置を提供する会社として、今回の講座においては台上試験装置の「RC-S」を手掛けている。さらに、第2期においては台上試験装置の性能を上げていく研究も進める。
この講座で開発した技術を使い、サイバー空間上でクルマの状態を再現し、フィジカルとサイバーをより融合させた開発を、2027年10月に稼働する愛知県豊田市の中部リンケージコモンズをはじめ、横浜市や宇都宮市の研究開発拠点を結んで進めていくという。
また、今回の発表は東大と小野測器の共同研究であると同時に、小野測器の国内留学制度を使い、小野測器の社員である尾田氏が東大の博士課程に在籍して研究に参画していることも特徴となる。
小野測器では次世代のエンジニア育成を促す活動の1つとして実施しており、同社の大越社長によれば、尾田氏を講座に送り出したことは小野測器にとって初の試みだとしているほか、講座に関わる社員全員の成長も感じているという。
台上試験装置の「RC-S」など、実験の内容を公開
当日は机上での説明のほか、東大柏キャンパスで行なっている実験について公開した。台上試験装置の「RC-S」は右後輪のみの装着だが、制御を有効にすることで振動抑制できていることが公開された。
また、東大柏キャンパスの東京大学大学院新領域創成科学研究科では、以前からインホイールモーターや走行中給電の研究を行なっている。インホイールモーターの効果や、走行中給電のようすも最新の試験車で公開された。





























