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住友ゴムとNECが戦略的パートナーシップ活動を加速
2030年までにAIで高度化された研究開発スタイルを構築へ
2025年11月26日 19:34
- 2025年11月26日 発表
住友ゴム工業とNEC(日本電気)は11月26日、「世界で競争力のある研究開発基盤の構築」に向けた共創を加速すると発表した。
この「世界で競争力のある研究開発基盤の構築」は、両社が2025年7月に発表した戦略的パートナーシップで掲げたもの。その活動を発展させ、2030年までにAIで高度化された研究開発スタイルを構築するとともに、社会課題の解決につながる新たな事業やイノベーション創出も目指すとしている。
今回、先行的な取り組みとして、疑似量子アニーリング技術を活用したタイヤ材料の配合予測と、AIエージェントおよび材料探索ソリューションを用いた新材料探索の実証を進めていることが明らかにされた。
現時点で有効な成果を得たとしており、今後、実用化に向けた共創を進めるほか、新材料開発やタイヤ材料開発以外にも重点テーマを設定し、AIや量子などの最新技術を活用した研究開発を推進する。
住友ゴム 常務執行役員の水野洋一氏は、「住友ゴムは、長期経営戦略である『R.I.S.E. 2035』に取り組み、2030年に向けてタイヤプレミアム化の推進、2035年に向けた新たな収益の柱を構築することを目指している。そのためには研究開発基盤の高度化が不可欠である。NECの伴走支援により、NEC研究所の最先端技術を取り入れ、仕事の仕方を変革するとともに、NECが社内利用している業務AIの知見をもとに住友ゴムに適したAI化を推進する。AIを活用し、新たな価値を創出する研究開発環境を実現する。市場投入までのスピードを重視し、未来の価値ある体験をいち早く提供し、継続的なイノベーションの創出と、顧客価値の創造につなげる」とした。
また、これまでのNECとの共創を振り返り、「NECは、住友ゴムの業務課題を把握し、ベテランのノウハウをAI化した『匠AI』の構築で実績を持つ。双方の技術者や研究者の相互理解が深く、戦略的パートナーとしても理解しあえている。NECとの共創により、AIエージェントを含む次世代AIを開発し、人とAIが相互に協力する関係を構築する。戦略的パートナーシップにより、新たな価値創造に向け、継続的に進化させていく」と抱負を語った。
住友ゴムとNECの取り組み
NEC 執行役 Corporate EVP兼CTOの西原基夫氏は、「住友ゴムでは、タイヤ開発における熟練技術者の技能伝承の課題があり、体系化が困難な匠の技をAI化することから共創がスタートしている。2024年9月にNECの技術ビジョンを紹介したところ、NECの先端技術を住友ゴムの研究開発現場に波及させることが住友ゴムの競争優位につながるとの判断から、戦略的パートナーシップの提案をもらった。それ以降、研究開発、製造、保守に至るまでの業務プロセス全体の変革を見据えて、本格的な共創活動を開始している」と振り返り、「AIや量子は産業革命につながる技術である。さまざまな業界トップのお客さまと連携し、早期に技術のケイパビリティを開示し、社会との共創を拡大していくことが成功の鍵になる。住友ゴムの戦略的パートナーとして、研究開発基盤の高度化を実現し、知識創造企業への変革を支援することに力を注ぐ」と述べた。
両社は、2025年7月に戦略的パートナーシップを締結し、共創を通じて「世界で競争力のある研究開発基盤の構築」に向けた活動を開始すると発表していた。今回の取り組みは、その具体的な成果の第一歩となる。
両社では、2030年までに変革すべき注力テーマを定めるとともに、NECが持つAIをはじめとする先端技術や研究者の高度な技術知見と、住友ゴムが持つ研究開発力を組み合わせることで、世界的に競争力を持つ研究開発基盤の構築と、ビジネスの早期実現を目指すことになる。
NECでは、2024年10月から「NEC先端技術コンサルティングサービス」を開始。NECの研究者が研究開発の段階から顧客に伴走し、AI技術や高度な知見を活用して、さまざまな課題解決を支援しているが、住友ゴムとの連携でも同サービスを活用する。
両社では、2030年までに取り組む重点テーマとして、「新材料開発」と「タイヤ材料開発」を掲げている。
1つめの「新材料開発」では、材料の探索だけでなく、AIがパートナー候補の提案などを行なえる基盤構築を目指す。
住友ゴムの水野氏は、「通常タイヤからプレミアムタイヤまで、すべてのカテゴリーのタイヤ用ゴムの配合開発を、熟練度に関わらず効率化できることが期待される」とし、「新材料分野の研究者の開発能力を2倍にし、海外でも同じ仕組みで研究開発を可能にしたい」と期待する。
2つめの「タイヤ材料開発」においては、タイヤ配合における企画から開発までのプロセスをAIによって高速化、高度化することを目指すという。「候補材料の選定から試作着手までの期間を2分の1以下にするとともに、新材料標準化までの期間を短縮することで、開発総コストを3分の1以下に削減する計画である」と高い目標を掲げた。
一方、この2つの重点テーマに対して、共通コア技術として、「疑似量子アニーリング」と「材料探索ソリューション」を、先行開発したことにも触れた。
材料分野における先行的取り組みと成果を報告
住友ゴム 研究開発本部長の上坂憲市氏は、「マテリアルインフォマティクスの課題は材料の組み合わせが数百兆通りにおよび、今後もさらに増加する点にある。また、新材料の開発ではアイデアの創出や試作に膨大なコストと時間がかかるという課題がある」と指摘。「疑似量子アニーリングの活用により、目標特性から最適なゴム配合レシピを超高速に探索する仕組みの構築を目指した。また、材料探索ソリューションでは、世界中の文献情報と社内知識を融合し、研究者の思考プロセスや暗黙知を導入したAIの実現を目指した。どちらも大きな成果をあげた。NECとの共創により、新たな価値創造につなげたい」と述べた。
疑似量子アニーリング技術では、タイヤ材料の配合予測を行ない、高度な性能が求められるプレミアムタイヤ用ゴム配合を視野に、住友ゴムが持つ過去の実験データから、素材の種類と配合量が材料特性に与える傾向を分析。抽出したデータに対して、NECの疑似量子アニーリング技術を活用して、目標とする特性を満たす素材の種類と配合候補を網羅的に探索したという。
検証では、住友ゴムが過去に開発したプレミアムタイヤ用ゴム配合と、今回の探索で予測した複数の配合案の特性を比較したところ、目標とする特性項目の90%以上を満たすゴム配合案を導出でき、非熟練者が同等の配合案を導出する際に要する時間と比較して約95%短縮できたという。
もう1つのAIエージェントと材料探索ソリューションを用いた新材料の探索では、プレミアムタイヤの新たな材料探索を目的に、AIエージェントを構築。生成AIとグラフベースAIを組み合わせて、材料候補の絞り込みを行なった。
AIエージェントの構築においては、NECの研究者と、住友ゴムの材料開発者が連携し、材料探索における思考プロセスや暗黙知を抽出して、学習させたという。
アクティブトレッド技術として、2023年に発表した水スイッチの材料探索が可能であるかを検証。「イオン結合が水に触れるとほどける」という特性を再現可能な材料の探索を行なったという。
実証では、AIエージェントがさまざまな言語の公開文献から材料開発の知見を集約して解析。関連情報なども自律的に収集して、候補材料の探索範囲を拡大したという。また、人手による作業に比べて、探索期間を60~70%削減できたという。
住友ゴムの上坂氏は、「NECの支援により暗黙知を抽出し、それを学習させたことで、エキスパートといえるAIエージェントを構築した。研究者の思考プロセスに沿って行動を重ねたデータベースを作成し、精度と網羅性も向上させた。水スイッチの材料組み合わせ候補が探索結果の上位にランクインするという結果が出た。従来の手法では発見が困難だった新しい材料候補を効率的に発見できることを確認できた。新たな機能を有するタイヤ用ゴム材料の研究開発に応用していきたい」という。
また、「疑似量子アニーリング」と「材料探索ソリューション」を、事業企画機能と研究開発機能の中核に位置づけ、タイヤ材料開発以外にも広く展開していく考えも示した。
業務をAI駆動型に革新するソリューションの創出を目指す
一方、NEC ビジネスイノベーション統括部の田中修吉氏は、「NECは、住友ゴムとの共創を起点とした活動を進める。化学品プロセス産業の企業に向けて研究開発組織が取り組む技術や、経営課題にアプローチし、業務をAI駆動型に革新するソリューションを創出していきたい。今後は、研究開発と事業がつながっている領域にも挑みたい」とした。
NECでは、住友ゴムが保有する高機能ゴムに関する技術を同社の事業分野に応用および適用するほか、NECが保有するAI技術を住友ゴムが手がける新事業へ適用することを検討。両社が保有する先端技術と知財を掛け合わせて、社会インフラや宇宙・防衛、ヘルスケアなどの多様な産業領域で新たな事業機会の探索と創出を目指すという。
































