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NTTモビリティ設立発表会、2028年度には自動運転レベル4の実証実験を計画 2030年代には1000台以上を支援
2025年12月18日 13:20
- 2025年12月17日 開催
NTTは12月17日、自動運転専業会社となる新会社「NTTモビリティ株式会社」を2025年12月15日に設立し、事業を開始したと発表した。
12月17日に行なわれた新会社設立の記者会見で、NTTモビリティの代表取締役社長に就任した山下航太氏は、「人々の豊かな暮らしの実現において、移動は大切なものであるが、移動を支える交通の担い手が減少しており、人から移動の自由を奪うことにつながる点を懸念している。移動の自由を、未来に残すことが、NTTモビリティの役割である。自動運転技術により、地域の人たちに寄り添い、ハードウェア、ソフトウェア、人を含めた総合的サービスを提供することで、日本の地域交通を支えていく」と抱負を述べ、さらに「自動運転が安全で便利な当たり前のサービスとなり、日常に溶け込む日を目指して、NTTモビリティは始動する」と宣言した。
2028年度までに全国各地でサービス運用ができる体制構築を目指す
まずは、社会実装する個別案件を推進するとともに、サービス開発に取り組み、2028年度までに、全国各地でサービス運用ができる体制を構築。また、NTTグループがこれまで取り組んできたレベル2の実証実験を、2028年度にはレベル4に引き上げるという。2030年代に1000台以上の運行支援を目指し、売上高で数100億円規模を目標にする。
新会社は、資本金は14億3000万円で、NTTが100%を出資。自動運転車両の提供および管理サービス、自動運転導入や運用支援サービス、遠隔モニタリングシステム提供サービス、自動運転に関連する周辺サービスを提供する。
NTT東日本、NTT西日本、NTTドコモ、NTTドコモビジネスなどのNTTグループ各社が、全国35件以上で取り組んできた自動運転に関わる実証実験などにより培ってきた知見や技術を集約。専業会社として専門性を高め、自動運転事業を推進するという。
NTTモビリティのビジョンには、「人が移動でつながり続ける毎日へ」を掲げ、ミッションを「人と技術が融け合う自動運転サービスを共に創る」とし、自治体、地域の交通事業者、技術を持つパートナー、利用者などとの連携により、自動運転サービス提供を目指す。
具体的には、自治体、交通事業者、民間企業に対して、自動運転の導入および運用支援をワンストップサービスとして提供。自動運転車を用意し、走らせ、運行を支援する役割を担う。
「自動運転車両提供・管理サービス」の提供
「自動運転車両提供・管理サービス」では、地域ニーズに合ったベース車両や自動運転システムを調達し、車両の保守やメンテナンス、故障時の駆け付けサービスも提供する。「自動運転導入・運用支援サービス」としては、ルート設計、デジタルマップ作成、走行チューニングのほか、運用人員向けのトレーニングプログラムの提供も行なう。また、「遠隔モニタリングシステム提供サービス」においては、システム構築や提供、車両内外の遠隔モニタリング、乗務員業務のAI化を進める。
開発や調達、導入はNTTモビリティが担当し、全国に展開しているNTTグループ各社が顧客接点の窓口となる。事業領域は、定時・定路線バス、オンデマンドバス、ロボットタクシーとしており、まずは路線バスの領域から事業を開始する。トラックの領域への参入については現時点では検討していない。NTTグループが持つ技術や人、体制を生かしながら、地域ごとに最適化したアプローチを行ない、案件をひとつずつ積み重ねながら社会実装を図る考えを示した。
山下社長は「日本では運転者数の枯渇や、地域交通の維持困難化が進んでいる。とくにバスへの影響が大きく、毎年1480km以上のバス路線が廃止され、バス運転手の有効求人倍率は全職業平均の1.8倍と、人不足が顕在化している。人々が日常の移動に使っていた手段が使えなくなっており、その地域が広がっている状況だ。こうした課題解決に向けては、自動運転技術の導入が有効である」と、地域課題の解決に自動運転技術を活用するメリットを強調。だが、「自動運転の本格的な社会実装に向けては課題が山積している。安心安全な自動運転の実現、全国各地でのサービス展開、サステナブルな事業運営が、社会実装に向けて取り組むべき課題であり、ここに貢献していきたい。自動運転の社会実装を力強く進めたい」と述べた。
「安心安全な自動運転」の実現
「安心安全な自動運転」の実現では、地域密着での安心サポート、高信頼通信による安全性確保、データおよびAIの活用を通じた路車協調による安全性向上を図る。
「NTTグループが持つ地域密着力は、NTTモビリティにとって大きなアドバンテージになる。地域を知り、近くにいるからこそ、地域環境にあわせた導入支援や駆け付けサービスが可能になる。また、無線を含む通信の安定化技術により、車内外のモニタリング品質の向上を実現できる」などとした。
路車協調では、通信システムやAIを活用した路車協調技術およびシステムを活用。車両に搭載されたセンサーだけを使用するのでは限界があるような死角からやってくる車両の情報を、車両が相互に提供して、減速および停車を指示。より高い安全性を備えた自動運転を実現するほか、道路工事などの環境情報を提供して、安全な走行ルートを指示し、道路環境の変化に対応しながら、地域に寄り添った自動運転を実現するという。
NTTモビリティ 取締役副社長の永宮雅晴氏は「米国の道路に比べると、日本の道路は狭く、路上駐車している車両を追い越すにも、日本では反対車線にはみ出す必要があるなど、自動運転の実現において、厳しい環境にある。安全性をしっかりと磨いていく必要がある」と述べた。
全国各地でサービスを展開
全国各地でのサービス展開に向けては、オペレーションの標準化、地域需要に基づくサービス企画を進める。「共通化や標準化の領域を拡大し、各地域への導入を容易にする一方で、地域ごとの需要にもきめ細かに対応したサービスを提供する。矛盾するように見えるが、このバランスが重要である」と述べている。
サステナブルな事業運営については、N対Mによる統合モニタリングを開発、提供するほか、統合したデータ活用による効率化、車両側の走行制御機能のクラウド化を図る。ここではIOWNの活用も視野に入れており、高速、低遅延のIOWNによるクラウド活用を通じて、車両コストの低減につなげられると見ている。宮永氏は「長期運営を可能にする維持運営費の適正化を図る」とした。
NTTモビリティが開発する統合モニタリングは、車内外のセンサーから得られた情報をもとに異常を検知し、アラートを出す一方、自律的に対処できるもので、AIを活用することで効率的な管理が可能になるという。レベル4の自動運転に必要なサービスと位置づけており、さらに自動運転車が増加する普及期においても有効なシステムだと捉えている。
2026年に4月からは、NTT武蔵野研究開発センターの周辺において、複数車両および複数ベンダーの自動運転車を活用した統合モニタリングの実証実験を行う計画だ。通信の安定化に向けた技術開発も促進するという。
また、NTTモビリティでは、独自の検証拠点であるCo-Creation Hubを、2026年2月に、NTT武蔵野研究開発センタ内に開設し、自動運転の高度化や、自動運転の新しい価値の創出を目指すという。道路環境の変化への対応や、データ活用による安全精度向上などの「安心・安全向上のための技術の高度化」、複数サイズのバスや、遠隔モニタリングシステムの同時活用による「多様な車両・技術の検証」、教育プログラムの提供やパートナー連携などを通じた「人材育成・トレーニング」、地域イベントへの参加や、地域連携体制の構築などによる「社会受容性向上に向けた取り組み」を進めるという。
NTTモビリティはサービスを提供する会社で車両の開発は行なわない
NTTモビリティは、サービスを提供する会社と位置づけており、自動運転車両を開発したり、ADK(Autonomous driving Kit=自動運転開発キット)を開発したりする予定はない。NTTモビリティは現在4社のADKを活用しており、ニーズにあわせてADKを選択できるようにしているという。
NTTモビリティの山下社長は、「NTTグループで取り組んできた案件や、技術開発からくるノウハウを統合して、新会社を設立した。これまでにグループ各社がそれぞれに取り組んできた成果を統合することで、パターン化できるタイミングに入ってきたと判断した。これにより、コストの適正化とともに、他の地域への展開速度を高める狙いもある。NTTグループが持つ強みを生かしながら、事業展開を進めていく。通信やデジタル技術の積極的な活用と、全国47都道府県での人材や組織の活用の掛け合わせによって、自動運転の社会実装を進める」と述べた。




