ニュース
小野測器、2027年9月に稼働予定の新開発拠点「中部リンケージコモンズ」建設予定地を公開
東京大学と共同で行なっている制御技術を実装した自動車用試験設備を導入予定
2025年12月19日 19:53
- 2025年12月18日 開催
電子計測機器の開発・製造・販売を手がける小野測器は12月18日、2027年9月に稼働予定の新拠点「中部リンケージコモンズ(Chubu Linkage Commons)」の建設着工に向けた地鎮祭を開催し、同時に報道陣向けの現地取材会を実施した。
同日、小野測器が2020年に取得した愛知県豊田市の事業用地で、着工へ向けた地鎮祭が行なわれた。ここに建設予定の中部地域の新事業所「中部リンケージコモンズ(CLC)」は、小野測器にとって横浜、宇都宮に続く3か所目の技術開発拠点で、施設は大きく2つの棟で構成され、本館事務棟は小野測器の中部営業所の機能に加え、共創パートナーが集えるカフェエリアを設ける。もう1つは「ATLab.c1」と名付けられた実験棟で、計測室やプロジェクトルームに加え、車両整備場、充電ステーション、そして最新のNV実験室を備えた実践的な開発環境となる。
目指すのは、技術と人が集まり、訪れるだけで未来にワクワクするような開かれた「成長し続ける事業所」を目指し、2027年までの建設・始動フェーズに続き、共創パートナーを増やしてオープンイノベーションを推進するコミュニティの形成フェーズ、そして新領域への挑戦も視野に入れ、敷地内にはさらなる実験棟のためのスペースも確保している。
敷地面積は約4500m 2 、投資額は約23億円を見込んでいる。2027年9月の稼働を目指し、2026年1月から工事がスタートする。
このCLCでは小野測器のコア技術をさらに進化させていくとしており、音響振動計測技術に、TPA(伝達経路解析)という技術を組み合わせて、NVの評価技術を進化。加えて、実車の試験だけでなく、シミュレーションと連携したモデルベース開発にも対応することで、EV特有の高周波騒音などの課題に対して開発効率を向上させるとした。
また、クルマごと入れることができるNC-30相当の静かな大型半無響室と、路面状況を再現するRCS(リアルカーシミュレーションベンチ)を組み合わせられる実験室を構築。実走行に近い環境で高精度な計測が可能となり、デジタルツイン構築に必要なデータの取得等を支援する。
現在、小野測器では「国立大学法人東京大学 大学院新領域創成科学研究科」と「電気自動車の振動計測制御に関する社会連携講座」を開設しており、「クリーンかつ快適な電気自動車社会の実現」を目指した研究を行なっている。この講座を通じて、EVの振動抑制制御に関する共同研究を進めており、この講座で得た世界トップレベルの高度な制御技術をCLCに導入する自動車用試験設備に実装予定とも語られた。
小野測器の大越祐史代表取締役社長はこの取材会の冒頭、「現在、私たちは大きな転換期を迎えております。私たちの目指す姿、それは単なる計測器メーカーで終わらない、共創メーカーになることです。そのために、私たちは持続可能なモビリティ社会を実現するソリューションプロバイダーへ進化いたします。人とテクノロジーのより良い関係を支え、サステナブルな社会の実現を加速させることがわれわれの長期ビジョンです」。
「この背景には、われわれを取り巻く外部環境の劇的な変化があります。世界的なカーボンニュートラルへの動きは、私たちの主要顧客である自動車産業の開発プロセスを根本から変えようとしています。また、開発現場におけるデジタルの波も押し寄せています。これは、従来の計測器や試験機の市場にとっては縮小のリスクとなり得ますが、私たちはこれを新たな市場創出のチャンスと捉えております。この変化の中で勝ち残るため、私たちは長年培ってまいりました3つの強みを最大限に活かしてまいります」。
「第1に、確かな技術力と製品品質に裏打ちされたものづくりの力。第2に、計測技術のスペシャリストとして正確で信頼性の高いデータを提供する測る力。そして第3に、お客さまの課題解決まで伴走する顧客サポート力です。先進的なお客さまとのリアルな接点で課題を深く共有できることこそが当社の資産だと思っております」。
「これらの強みを活かし、具体的にどう動くか? その答えが今回の事業戦略『共創とデジタルシフト』であり、新事業所『中部リンケージコモンズ』です。この中部リンケージコモンズは、単なる新しいオフィスではありません。ここは、お客さまとの共創を生み出す場です。私たちはこの拠点をフックにエンジニアリング事業を拡大し、さらにシミュレーションソフト開発を強力に推進してまいります。エンジニアリングとサービス事業を通じてデジタル開発へとシフトする。市場のニーズをリアルタイムで把握し、即座に製品、サービスに反映させていく。その最前線とする基地が中部リンケージコモンズとなります。私たち小野測器は、外部環境の変化に柔軟に対応し、自社の強みを活かすことで成長市場へビジネスを拡大してまいります。中部リンケージコモンズを起点に新たな商機を創出し、持続可能なモビリティ社会の実現に貢献してまいる所存です。今後の挑戦にどうぞご期待いただきたいと思っております」とあいさつした。
このCLCを担当する塚越照取締役兼上席執行役員も、「このプロジェクトは私たちの強い思いが込められております。単なる新事業所の建設ではありません。これまでのようにお客さまが私たちに仕事を依頼するだけではなく、ここに来れば何か新しいことが生まれる、当社中心の場ではなく、パートナー同士がお互いにつながり、共創できる場所にしたいと考えております。技術と人が集い、未来を共創する新たな拠点として、自動車産業の中心地である中部エリアに、デジタル開発を推進する実験環境を整備することで、お客さまとの距離を縮めて次世代モビリティ開発を強力に加速させていきます」と語った。







