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住友ゴム工業、7年間の社長職を振り返った山本悟氏「ダンロップブランドのグローバル展開、構造改革、成長事業の基盤作りなど、すべてやり切った」と総括
2025年12月27日 11:02
- 2025年12月25日 実施
住友ゴム工業は12月25日、代表取締役の異動に関する記者会見をオンラインで実施した。会見では、新社長に現取締役 常務執行役員の國安恭彰氏が就任し、現社長の山本悟氏は会長に就任すると発表。正式決定は2026年3月26日付けの予定と説明した。
現社長の山本氏は今回の社長交代発表について、ユーザー、株主、クライアント、地元住民、社員とその家族に感謝を述べるとともに、2019年3月の社長就任から約7年が経ち、コロナ禍の困難を社員一丸となって乗り越え、2023年からの新中期計画のスタート、構造改革と成長事業の基盤作りに従事し、構造改革の対象事業については2025年中にすべて目途付けが完了すると報告。
また、欧米豪のダンロップブランドの買収によりグローバル展開が可能となったこと、アクティブトレッドやセンシングコアなど独自技術によるビジネスの土台作りなども計画通りに進行でき、長期経営戦略R.I.S.E.2035も発表し、2026年からは攻めに転じて本格的な成長フェーズに舵を切ると説明。「この節目を迎える今こそ、次の時代を切り拓く新たなリーダーにバトンをわたす最良のタイミングだと判断しました」と交代の理由について言及した。
続けて、「これからの成長戦略を力強く推進していくためには、新たに強い発想と情熱を持った次世代のリーダーが先頭に立ち、挑戦を重ねていくことが不可欠です。ここ数年間は後任の社長を選ぶために、さまざまな機会を通じて役員とコミュニケーションを取り、その育成とともに後任としての適性も見極めてきました」と述べるとともに、後任社長に必要な能力については、誠実で責任感が強く、人として信頼される存在となる「人間力」、何事にも強い意志で自分事として主体的に対処していく姿勢を持つ「オーナーシップ」、強い信念を貫きやり遂げる「意志力」、果敢に挑戦して大胆な決断を下す覚悟を有する「決断力」、さらに「コミュニケーション能力」「組織運営能力」と、全6項目に関して評価し後任を選出したと説明した。
後任の國安常務について山本社長は、「何事にも誠実に取り組む姿勢により周囲から信頼される存在であり、何が起こっても自分事として主体的に対処していく姿勢を持ち、困難なことにも強い信念でやり遂げていく意志力を有しております。また、特に重視していた自由闊達に意見が言い合える、挑戦できる組織風土作りにも力を発揮してくれる」と期待を述べた。
國安常務は、2021年に加古川工場での防舷材検査および南アフリカ子会社でのタイヤ生産の品質管理に係る不適切な事案が判明した際、タイヤ技術本部長として最前線に立ち、困難から逃げず、すべてを自分事として自ら率先して信頼回復に尽力。山本社長は、「合理的な判断力、誠実で謙虚な人柄、新たなことへの高い適応力は、これからの経営に不可欠な資質であり、このときに後継候補の1人として強く認識しました」とエピソードを明かした。
また國安常務は、経営企画を中心に事業経営部門に従事してきた人物で、「品質を基盤に技術改革とグローバル競争力の強化をけん引し、長期経営戦略R.I.S.E.2035を着実に前進させ、会社を次のステージへと導いてくれると確信している」と期待を述べた。
山本氏が社長に就任した2019年当時の住友ゴムは、グローバルに生産販売拠点を拡充し、成長の土台が整備され始めた時期で、「先行投資した地域を含めた体質強化、ブランド価値向上、強い収益基盤の構築、欧米を中心とした成長基盤の強化と、4つの方針を示し経営にまい進してきた」と振り返った。しかし、就任直後にコロナ禍になり、思うような経営ができなかった時期もあり、社員の安全確保と事業継続を最優先にしつつ、在宅勤務やリモート会議の導入、サプライチェーンの再設計にも取り組み、利益基盤強化と組織風土改革を目的とした全社プロジェクト「Be the Change Project」を立ち上げ、山本社長自らが先頭に立ち推進してきたという。
この活動では部門を越えた連携も生まれ、3年間で7000件に及ぶさまざまな改善アイデアや施策を積み重ねることで、利益やキャッシュの創出で成果をあげ、コロナ禍で売上利益が急減する危機を早い段階で緊急対策を打ち出すことで挽回。山本社長は「改めて住友ゴムは何のために存在するのかを問い直し、住友ゴムが大切にする理念や目指す方向を明確にするための企業理念体系Our Philosophyを構築、パーパス(存在意義)を『未来をひらくイノベーションで最高の安心とヨロコビをつくる。』と明確化した」と説明。
2023年にスタートした新中期計画については、ROIC経営を導入し、構造改革対象事業を選定するとともに、成長事業の基盤作りも平行してグループ全体で推進し、米国工場の閉鎖、国内ウェルネス事業の売却、スイスの医療用ゴム製品子会社の売却、国内ガス管事業撤退などを実行してきたことで、2025年までにすべての目途付けが完了。その結果、2025年には過去最高益を更新する見込みだという。
2026年からは長い歴史を持つダンロップをグローバルで輝くブランドに成長させていくスタートの年となり、タイヤ事業では独自技術「アクティブトレッド」、スポーツ事業では「ゴルフ」「テニス」でのブランド向上、産業品事業では「メディカルラバー」や「制振ダンパー」、オートモーティブ事業では「センシングコア」の展開など、各分野で成長ドライバーを推進し、さらなる飛躍を目指すため会長に就任し、「國安新社長を全面的にサポートしていく」という。
7年間の社長業務全般について振り返った山本社長は、「いつも90点以上を取りたいと経営のかじ取りを行なってきたが、なかなか実現できなかった。ただ最終年の2025年については、構造改革、成長事業の基盤作りを含め、やり残してきた課題を達成できたので、すべてやり切ったと思っているので90点をあげたい」と自身の社長生活を総括した。
もっとも思い出に残っている出来事については「やはり2025年1月にラスベガスにて、Goodyearから欧州・北米・オセアニア地域における四輪タイヤのダンロップ商標権等を買い戻しの調印をしたときですね。これで念願のダンロップブランドのグローバル展開が可能になりましたので、もっとも印象が強く残っています」と締めくくった。
2026年3月より新たに社長へ就任する國安恭彰氏
新たに社長に就任する國安恭彰氏は、広島大学工学部を卒業し住友ゴム工業へ入社。主にタイヤ技術部門で長期にわたりタイヤの設計開発業務を担当。2015年には米国のクライスラーに技術プレゼンを英語で行ない、自身が開発に携わったピックアップトラック用タイヤの納入に成功。この当時「チームで働くこと、グローバルでの成果を常に意識しないといけないことを実感した」という。
2020年には品質保証を担当し、2021年に不適切事案を対応。直近では経営戦略やESG経営の推進を統括するなど、「国内外の市場変化、技術革新のスピードの速さを、まさに肌で感じてきた」と語る。また、自動車産業はCASEやカーボンニュートラルの対応に加え、SDVの考え方が広まるなど、大きな転換期を迎えていて、「これまで以上に柔軟かつ迅速な対応が求められていると強く感じている」と説明。
続けて、「山本社長の時代でグローバルにダンロップブランドで挑戦できる環境が整いましたので、成長基盤をさらに強固なものとし、長期経営戦略R.I.S.E.2035で掲げたロードマップを確実に推進すると同時に、新しいイノベーションを推進しながら持続可能な社会に貢献する企業としての責任を果たします」と決意を語った。
なお、山本社長から交代の打診を受けたのは9月中旬とのことで、「そのときはとてもおどろいたが、引き継ぐ決意とともに、身の引き締まる思いだった」と振り返った。また、設計開発に長く従事し、幾多の苦労を経験し、中にはあきらめに近い思いにいたった時期もあったが、あきらめてしまったらすべてが終わってしまうため、先輩からいろいろアドバイスをもらい、こっちの道がダメなら違う道があるということを意識して、決してあきらめないという気持ちを大事にしていることから、座右の銘は「道は無限にある」と心に刻んでいるという。





