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ホンダ、四輪事業の再構築について三部敏宏社長が説明 2029年3月期に過去最高水準となる営業利益1兆4000億円以上への回復を目指す
2027年に次世代ハイブリッド、2028年にN-BOX EV投入。さらに2028年以降に新型ヴェゼルデビュー
2026年5月15日 21:47
- 2026年5月14日 開催
本田技研工業は5月14日、2026年3月期 通期(2025年4月1日~2026年3月31日)の決算内容を発表するとともに、四輪事業の再構築に向けた取り組みと今後の事業の方向性について取締役 代表執行役社長 三部敏宏氏が説明を行なった。
会場では2年以内に発売予定とアナウンスされた、次世代ハイブリッド車のプロトタイプ「Honda Hybrid Sedan Prototype」「Acura Hybrid SUV Prototype」の2台を世界初公開するなど、こうした記者会見では異例ともいえる形で実施された。
なお、2026年3月期 通期(2025年4月1日~2026年3月31日)の決算内容は、売上収益は前年同期(21兆6887億6700万円)から0.5%減となる21兆7966億1000万円、営業利益は前年同期(1兆2134億8600万円)から赤字化して4143億4600万円減、営業利益率は1.9%減、税引前利益は前年同期(1兆3176億4000万円)から赤字化して4033億円減、親会社の所有者に帰属する当期利益は前年同期(8358億3700万円)から赤字化して4239億4100万円減となっている。
ホンダは3月に記者会見を行ない、四輪電動化戦略の見直しの一環として北米で生産を予定していたEV(電気自動車)3車種「Honda 0 SUV」「Honda 0 Saloon」「Acura RSX」の開発・発売の中止などを発表。これら戦略の見直しに伴い、四輪電動化戦略の見直しに関連した損失の金額について、最大で2兆5000億円に上る試算を公表していた。
その3月の記者会見で、三部社長は「今回このような大きな額の損失を計上することになりましたが、今私たち経営に求められていることは、過去を取り繕うことではなく、この現実を正面から受け止め、四輪事業を中長期的に成長できる構造へと転換することだと考えています」と述べており、今回行なわれた説明会ではその具体的な案、目標数値が示される形となった。
ホンダとしては足下の市場環境の変化を踏まえ、コスト体質の改善、開発効率の向上、重点地域への経営資源の集中投入による魅力ある商品の拡充を通じた競争力の向上を図っていく。そのために、まず今後3年間を四輪事業の再構築に集中的に取り組む期間とし、2029年3月期には二輪・金融事業の成長と合わせ、過去最高水準となる営業利益1兆4000億円以上への回復を目指すことがアナウンスされた。その目標に向け、「経営資源の戦略的再配分」「ものづくり体質の徹底強化」「外部リソースの戦略的活用」を軸に四輪事業の再構築を行なっていくという。
三部社長は冒頭、将来の損失を回避するという観点から「Honda 0 SUV」「Honda 0 Saloon」「Acura RSX」の導入中止を決定したことについて触れつつ、ホンダがEVから撤退するのかという点については明確に否定。「引き続き日本やアジアなど、地域ごとのニーズや普及スピードに応じたEVの販売を行なっていますし、北米でも市場環境やお客さまの需要動向を冷静に見極めながら、時期が来たときに魅力的な製品をお届けできるように、引き続き仕込みを行なってまいります」と述べた。
また、四輪事業の課題の本質は単なるEV市場の減速だけではないとし、「過去、ホンダは四輪事業の構造改革を進め、四輪事業はICEとハイブリッドで1兆円近くを稼ぎ出せる体質まで収益を改善しましたが、ホンダの主力市場である北米では関税による負担を吸収しきれず、収益減となっているほか、中国やASEANなど新興OEMを中心に競争環境が一層激化する市場においては、売価や新価値提供のスピードといった面で競争力を失っており、台数減を招いています。この認識のもと、四輪事業再構築の鍵となるのはコスト体質の改善、開発効率の向上、そして攻める地域に対する経営資源の集中投入による魅力ある商品の拡充、これらによる競争力の向上です」。
「今後は、まず3年をめどに四輪事業体質改善に集中的に取り組み、引き続き盤石な収益性を有する二輪や金融の事業成長と合わせて、2029年3月期には過去最高の営業利益水準への回復を目指していきます。並行して2027年から次世代ハイブリッドモデルの導入と注力地域と位置付けた北米、日本、インドに対して、お客さまのニーズを見極めながら、現状不足しているカテゴリーへ新たな製品投入を行なっていくことで、商品拡充を進めていきます」と説明。
また、これらを実行する上ですべてを自前で行なっていくのではなく、外部リソースを活用することで柔軟性を持たせていくという。以上を踏まえ、四輪事業の回復に向けた取り組みとして「経営資源の戦略的再配分」「ものづくり体質の徹底強化」「外部リソースの戦略的活用」の3本柱について説明を行なった。
「経営資源の戦略的再配分」
「経営資源の戦略的再配分」では、「需要動向を見据えたパワートレーンポートフォリオの見直し」「重点地域への商品ラインアップの拡充」の2つの施策に取り組んでいく。
「需要動向を見据えたパワートレーンポートフォリオの見直し」について、具体的には開発・生産リソースをハイブリッド車に再分配する。これにより当初のハイブリッド車の投入計画よりもさらに前倒しした計画を実現し、魅力ある商品の拡充につなげていくとしており、「もともとEVが本格的に普及する2030年までは、引き続きわれわれの強みであるハイブリッドが環境対応の主力になるとの考えのもと開発を進めており、2027年からは計画どおり、ハイブリッドシステム、プラットフォームを共に刷新した次世代ハイブリッド車の導入を開始します。これを北米を中心に、2029年度までにグローバルで15車種投入する計画です」と説明。このうちの2モデルが、今回会場で展示された「Honda Hybrid Sedan Prototype」「Acura Hybrid SUV Prototype」の2台となり、ともに2年以内に発売を予定しているという。また、北米で底堅い需要を持つ大型車については、力強い走行性能とけん引性能に環境性能も兼ね備えたDセグメント以上の大型ハイブリッドモデルを2029年に投入する。
この次世代ハイブリッドシステムについて、三部社長は「エンジンの高効率エリアの拡大と、ハイブリッドユニットとの駆動効率の向上などにより、世界最高効率のパワートレーンを実現します。これに操縦安定性などの全方位進化や、さらに軽量化した次世代プラットフォーム、電動AWDユニットを組み合わせることで10%以上の燃費向上を目指すとともに、ホンダならではの走りをさらに進化させていきます。さらにバッテリやモーターなどの主要部品を中心に、お取引先さまとの共創活動や生産効率化、部品共用化などによるコスト低減を追求し、次世代ハイブリッドシステムのコストは2023年モデルに対して、30%以上のコスト低減を目指して取り組みを進めているところです」。
「そして2028年には、新たな移動体験価値を提供する次世代ADASを搭載したモデルも、予定どおり発売に向けて開発を進めており、グローバルで5年間で15車種以上に適用していく計画です。普及価格帯のハイブリッドモデルに搭載することで、ドライバーの意のままに操る喜びと、ストレスのない快適な移動体験の組み合わせによる、ホンダならではの提供価値をより多くのお客さまに体感いただきたいと考えています」とコメント。さらにこのハイブリッド車の需要に確実に応えるため、ハイブリッド車の生産および部品供給体制を強化する。米国オハイオの完成車工場では、余剰能力をすべてICE/ハイブリッド車に充てるとともに、北米すべての工場でハイブリッド車の生産ができるようにするという。
増産にあたって鍵となるバッテリについては、LGエナジーソリューションとの合弁会社であるL-H BatteryのEV用バッテリラインをハイブリッド向けに転用し、競争力あるバッテリの生産供給に向けて取り組みを進めていることを報告。さらにモーターやインバーターにおいても、Assyおよび構成部品の現地調達率を4倍以上に高め、関税影響の軽減と供給リスクの低減の両立を目指していく。
「重点地域への商品ラインアップの拡充」については、今後のさらなる成長戦略を描く市場として北米、インド、日本を注力地域と位置付け、戦略的なリソース配分を行なう。
北米については触れたとおりとなり、ホームマーケットである日本は、ホンダにとって単に台数やシェアを追い求める市場ではなく、新しい技術や提供価値を磨き上げ、その完成度をグローバルに示す意味で重要な位置付け。その1つがEVとなり、日本では人の暮らしになじんだ軽自動車の使い方と、クリーンで静粛性の高いEVの相性が良いことから軽自動車からEVの拡充を図っている。具体的にはN-VAN e:、N-ONE e:となり、これらに続いて2028年にN-BOXのEVモデルの発売を予告するとともに、「また、登録車においても4月に発売した新型インサイトや、5月下旬には小型EVのSuper-ONEの発売を控えています。幅広いEVラインアップをご用意するとともに、今後のEV普及を見据えたノウハウを蓄積していきます」とアピール。
さらに2026年の東京オートサロンで披露した、スポーツライン/トレイルラインの追加に加え、2027年からSUVモデルを中心に次世代ハイブリッドモデルを投入する。2028年以降は新型ヴェゼルを皮切りに、次世代ADASの主力モデルへの搭載を開始していくことが明かされ、三部社長は「このように軽自動車、登録車ともにお客さまの期待にタイムリーにお応えする高付加価値のラインアップを拡充していくことで、現在の販売台数以上の新車販売と、盤石な事業基盤の実現を目指していきます」と宣言した。
インド市場では、インドの特性・嗜好にあった商品を届けるべく、インドベストの性能要件に再定義し、全長4m未満のカテゴリー、ミッドサイズカテゴリーに対するインド向け戦略車を2028年から投入する。また、インドで年間600万台近くを販売している二輪事業の盤石な事業基盤を活用し、ホンダ二輪車保有客の四輪車へのステップアップ需要を確実に捉え、事業の成長を目指していく。その一環としてデジタルプラットフォーム会社「Honda Digital Innovation India」の設立、2026年度中に事業開始予定のキャプティブファイナンス会社の活用などにより販売拡大を目指す。
三部社長はこれらの地域に加え、「抜本的な競争力強化が必要」という中国市場についても触れ、「ご存知の通り、中国市場は競争が一層激化しており、生産、販売台数の減少など非常に厳しい事業環境にありますが、この中でも戦い続けていくための取り組みをご説明いたします。中国国内向けには、現地の標準化部品を使ったコストダウンに取り組みながら、中国での知能化の圧倒的な進化スピードを取り込むべく、ADASなど次世代技術については現地技術も活用していきます。さらに現地パートナーのプラットフォームを活用した新エネルギー車(NEV)を投入することで、中国のお客さまのニーズにしっかりと応えていきます。また、標準化部品の活用など、中国国内での開発効率向上の取り組みをグローバルに展開していくことで、ASEANをはじめとする他地域においても商品力、コスト競争力の強化に取り組んでいきます」と説明している。
「ものづくり体質の徹底強化」
「ものづくり体質の徹底強化」では、「抜本的な原価低減」「徹底的な開発効率化」「環境変化に強い生産体質の構築」の3点を推進していく。
「抜本的な原価低減」では直材のコストについて、ホンダの独自基準の見直しによる標準品の積極的な活用、中国やインドの競争力の取り込みにより、グローバルで原価体質を向上させる。
「徹底的な開発効率化」ではエンジニアリングチェーンマネジメントの徹底的な見直しにより、「開発費」「開発期間」「開発工数」について2025年比でそれぞれ半減する「トリプルハーフ」を実現していく。デジタル環境やAIの活用により、設計・テスト・生産準備を効率化することに加え、開発要件そのものや企画・開発マネジメントの見直しなど開発プロセス改革により、マイナーモデルチェンジは2026年度から、フルモデルチェンジは2028年開始の開発から、期間をそれぞれ半減していく。
また、「環境変化に強い生産体質の構築」では新機種・設備投資の効率的な投入・配分などにより、今後5年間で生産効率の約2割向上を目指すという。
「外部リソースの戦略的活用」
中国やインドなどのコスト競争力、業界標準品の活用など外部リソースを柔軟かつ戦略的に活用する。バッテリについては、当面は完全な自前化ではなくL-H Batteryの設備を最大限活用するとともに、将来のEV需要拡大への対応も見据えながらも、当面は需要の高いハイブリッドやその他用途を取り込んだ運営効率化を進めるなど、北米での競争力を重視したバッテリ調達戦略をとる。
カナダでの包括的バリューチェーン構築のプロジェクトは無期限での凍結とし、今後の調達戦略を引き続き検討していく。こうした自前のコア技術と外部リソースを組み合わせることで、不確実性の高い市場環境下で競争力強化を図るとしている。



















