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パナソニックの「コクピット・ドメイン・コントローラー」とは? 開発陣がSDV時代を見据えた統合型プラットフォームへの思いを語る

1959年から共創してきたマツダの新型「CX-5」に搭載

2026年7月7日 実施
都内でパナソニックの「コクピット・ドメイン・コントローラー」に関する発表会が実施された

車両のSDV化のトレンドは日々加速している

 パナソニック オートモーティブシステムズは7月7日、マツダの新型「CX-5」向けに開発した「コックピット・ドメイン・コントローラー(以下、CDC)」の発表に合わせて、都内で発表会を実施した。

 まず、市場と技術の大きな変化について、パナソニック オートモーティブシステムズのGlobal事業・商品開発本部 SDVコンピューティング事業統括部の中村知樹統括部長は、「自動車業界は今、ソフトウェアがクルマの機能価値を定義するSDV(ソフトウェア・ディファインド・ビークル)への移行が進んでいます。快適な車室空間、スマートフォンやクラウドを含めた車内外との機器連携、AIを含むコンピューティングの活用など、ユーザーが日々感じる価値の多くがソフトウェアによって提供されるようになります」と説明。

市場のトレンドはSDV化

 続けて、「さらに重要なのは、クルマは購入した時点で完成するのではなく、時代の変化やユーザーニーズに合わせて機能をアップデートし続けられるわけですから、今後クルマは所有後も進化するプロダクトに変わります。この変化の中心にあるのが車室内で人とクルマをつなぐコクピット領域であり、それゆえにCDCのような統合プラットフォームの重要性が高まっていると考えています」とCDCの必要意義を紹介した。

パナソニック オートモーティブシステムズ株式会社 Global事業・商品開発本部 SDVコンピューティング事業統括部 統括部長 中村知樹氏

 また、中村氏は、「今後SDV対応車両は大きく増加していくと見込まれ、これは一過性の技術トレンドではなく、クルマの価値の作られ方そのものが変わることを意味しています。そして車両の魅力を高め続けるためには、ソフトウェアを安定して動かすコンピューティング基盤、複数機能を統合するシステム設計力、量産車として品質を両立する力が不可欠となりますが、パナソニックはこれまで車載エンターテイメントで培ってきた量産経験と、大規模ソフトウェアの開発力を生かすことで、この成長領域で競争力を発揮できると信じています」と自社の優位性を強調。

今後のSDV適合車両の生産見込み

 さらに、「SDV化の進展に合わせて車載アーキテクチャも大きく変化している」と前置きし、「従来は機能ごとにECUを配置する分散型が中心でしたが、機能が増えるとECUの数や配線、ソフトウェア管理が複雑になり、開発効率やアップデート性の面で課題が大きくなります。そこで車載アーキテクチャは、ドメインごとに主要機能を集約するドメイン型、さらに車両全体をゾーン単位で最適に制御するゾーン型へと、ソフトウェアがアップデートしやすい形へ進化していきます。CDCはこの進化の中でコクピットドメインを担う中核となります。複数の機能を統合しつつ、ソフトウェアで管理・進化させることで、SDV時代に求められる開発効率、拡張性、ユーザー体験の向上を実現します」とCDCのポジショニングを説明した。

車載アーキテクチャの進化とトレンド

 また中村氏によれば、車載インフォテイメントも同様に大きく進化していて、音楽や映像を中心としたDA(ディスプレイオーディオ)から、通信機能やスマホ連携を備えたコネクテッドDA、さらにナビゲーションや車両情報連携を含むIVI(In-Vehicle Infotainment)システムへと拡張。

パナソニックオートモーティブが発表したCDC(コクピット・ドメイン・コントローラー)

 さらに今後インフォテイメントは、メーター、HUD(ヘッドアップディスプレイ)、車両情報など、コクピット全体のUX(ユーザーエクスペリエンス)を統合して、アップデートを通じて進化するCDCへと広がるという。

 中村氏は、「このCDCこそが、まさにSDV時代を支えるコックピットの中核プラットフォームであり、従来のインフォテイメントの枠を超えて、新たな車両体験を支えるものとなります」と言及した。

車載インフォテイメントの進化

パナソニックオートモーティブが掲げる「移ごこちデザイン」とは?

「移ごこちデザイン」紹介動画 (30秒ver.)

 パナソニックオートモーティブが目指すCDCとは、単に高性能コンピュータをクルマに乗せる取り組みではなく、移動の時間をもっと安心で、快適で、1人ひとりあった体験に変えること。そこで、「クルマに乗るすべての人に安心を。」「クルマを至福の空間に。」「クルマの可能性を広げていく。」「デジタルで移動をスマートに。」「移動で地域をイキイキと。」「まだ見ぬ移ごこちを目指して。」と、6つのビジョンで“移ごこちデザイン”を表現。これらの実現を通じて、安全性や快適性だけではなく、人・街・地球に優しい移動体験と、持続可能なモビリティ社会の創造を目指すとしている。

6つのビジョンからなる“移ごこちデザイン”

 中村氏は、「先述した車載インフォテイメントの進化により、ただ単体の機能を提供するのではなく、安全性や快適性、利便性を統合して、人それぞれに最適な移動体験を提供したいと考えています。そして、CDCはこの“移ごこち”を実現するための重要な基盤の1つと位置づけていて、事業戦略ではSDVやAI時代を見据え、車両の中で増え続けるソフトウェアの機能を支えつつ、統合や継続的に進化させるための基盤ビジネスとなる“SDVコンピューティング”と、これまで培ってきた人に寄り添う、人理解のノウハウを展開して、1人ひとりに合わせた移動体験価値を創造する“ヒューマンセントリックUX”の2つの領域に注力する」と説明。

パナソニックオートモーティブの事業戦略

 今回発表したCDCは、この2つの領域の交点であり基盤となる製品で、コクピットドメインの主要機能を統合制御しながら、その上でよりよいUXを継続的に提供できる基盤として、今後も成長させるとしている。

 最後に中村氏は、「SDV化によってクルマの価値はソフトウェアを通じて継続的に進化するものへ変わっていきます。その中でコクピットは、人とクルマをつなぐ最も重要な接点の1つです。パナソニックは車載インフォテイメントで培ったソフトウェアの開発力、量産品質、人に寄り添うUXの知見などを生かしつつ、コンピューティング技術によって、移ごこちの実現を目指します」と締めくくった。

コンピューティング技術による移ごこちの実現

パナソニックオートモーティブのCDCを採用したマツダ新型「CX-5」

 発表会場には、パナソニックオートモーティブが手掛けたDCDを搭載したマツダの新型「CX-5」も展示された。

パナソニックオートモーティブのCDCが搭載されているマツダの新型「CX-5」

 CX-5のコクピットについて、マツダのクルマ開発本部領域長 江角圭太郎氏は、「優れた視界視認性、理想的なドライビングポジション、運転に集中できるコクピット設計により、視線を外さず安全に操作できる、直感的で使いやすいHMI(ヒューマン・マシン・インターフェイス)へ、マツダとして刷新しました」と説明。

新型CX-5のコクピットの特徴

 ちなみに、図の赤色の部分である「HUD」「メーター制御」「静電センサー付きステアリングスイッチ」「センターディスプレイ」が、パナソニックオートモーティブが担当した領域で、これらをCDCで制御することでシームレスな連携を実現させた。

パナソニックオートモーティブの担当領域

 また、CDCにはGoogleビルトインが搭載されていて、Google Map、Google Play、アップデートにて対応中のGoogle Geminiにより操作性と楽しさを向上させたほか、グラフィカルユーザーインターフェイスには、「Unity」を採用したことで、Unityの3Dグラフィックにより直感的な操作を可能にしている。

新型「CX-5」に搭載される15.6インチセンターディスプレイ(アルプスアルパイン製)。CDCはGoogleビルトインを搭載し、エアコンの温度調整やオーディオのボリューム、地図検索など、発話でサクサクと操作できるほか、Unityの3Dグラフィックにより、きめ細やかな表示のタッチパネルディスプレイとなっている
左が新型「CX-5」の10.25インチ7インチフル液晶メーター(日本精機製)、右が高精細なHUD(ヘッド・アップ・ディスプレイ)
HUDのユニット「アクティブ・ドライビング・ディスプレイ」

 パナソニックオートモーティブとマツダは、HMIの分野で10年以上の共創の歴史があり、従来のOEMと部品サプライヤーという関係を越え、共にユーザー価値から考え、システムを開発する謙虚、尊敬、信頼を持ち合うパートナーであるという。

 今回、新型CX-5にパナソニックオートモーティブのCDCを採用した決め手について江角氏は、「マツダの掲げている“操る歓び”を体現できることと、しっかりとした高い安全性が担保されている点」と回答。

マツダ株式会社 クルマ開発本部領域長 江角圭太郎氏

CDCは先進UXを備えたコクピットプラットフォームを実現する

 続いて登壇したパナソニック オートモーティブシステムズ Global事業・商品開発本部 SDVコンピューティング事業統括部 事業総括 谷原一寛氏は、「日本発でグローバル競争力のあるプラットフォームこそ、われわれが成し遂げるべき共通のゴールで、日本のものづくりの強みを集結し、SDV時代に求められる俊敏なソフトウェア進化を融合させ、世界をリードするモビリティの未来を、マツダと共に切り開いていきたい」とあいさつ。

 また、マツダとの関係について谷原氏は、「1959年から現在にいたるまで、さまざまな車載製品を開発、提供してきた長い歴史があります」と説明。また、「2014年からはコネクティビティ・マスター・ユニット(CMU)やHUD、フル液晶メーターなどの開発で連携してきました」と関係を振り返った。

パナソニックオートモーティブとマツダの協業は長い

 さらに、今回発表したCDCは約3年前から開発に着手してきた製品で、「進化したHMIと、これからも進化し続けるSDVを支えるコックピットの中核システムと位置づけられていて、両社の協業の成果である」と谷原氏はアピール。

パナソニック オートモーティブシステムズ株式会社 Global事業・商品開発本部 SDVコンピューティング事業統括部 事業総括 谷原一寛氏

 新開発のCDCは、単なる車載部品の統合ではなく、アップデート可能で進化し続けるクルマを実現するSDVの基盤であり、高度な周辺機器連携、先進UXを実現する革新的なコクピットプラットフォームとなる。大きな特徴は「SDV基盤とVirtIOの適用」「コクピット周辺機器との高度な連携」「直感的で使いやすい車載UX」の3点。

CDC製品概要

IVI、メーター、HUDを統合

 従来はそれぞれ別々に存在していたIVI、メーター、HUDという3つのECUを、1台のコンパクトな筐体に統合。また、コックピット周辺の各種ECUを統合制御するアーキテクチャにもなっているほか、 OTA(Over The Air)マスターを搭載することで、 CDC自身と周辺機器の継続的なソフトウェア更新にも対応し、導入後も進化し続けるコクピット環境を実現。これにより、新たな価値をクルマのライフサイクルで提供を続けられ、愛車が進化し続ける歓びに貢献するとしている。

IVI、メーター、HUDという3つのECUを1台の筐体に統合

 またCDCには、パナソニックが業界標準化の推進に取り組むデバイス仮想化技術「VirtIO」技術を商用適用。VirtIOは、ハードウェアとソフトウェアを分離し、お互いが独立して進化できる準仮想化フレームワークであり、開発スピードと投資効率を革新する技術的イノベーションとなる。これにより、ハードウェアと平行開発が、クラウド仮想環境におけるソフトウェア開発が可能となり、柔軟性と再利用性を高め、継続的な機能進化による長期的なソフトウェア資産価値の向上に貢献する。

オープンソースのデバイス仮想化技術「VirtIO」を適用

コクピット周辺機器との連携

 CDCは、IVI、メーター、HUDの3画面を統合制御することに加え、アーキテクチャにおいて周辺機器との高度な連携を行ない、運転に必要な情報を最適な場所で表示。画面の境界を感じさせないシームレスな情報フローで、安心・快適な運転環境を提供し、運転シーンに同調して走る歓びを増幅する移動体験を提供する。

3画面統合制御による安心・快適な車室空間の提供

 また、周辺機器との高度な連携による快適な車室空間の事例としては、ユーザーが車両に乗り込んだ際、CDCが3画面表示、音、アンビエントライトのオーケストレーションで美しく浸透させ、乗り込んだ瞬間から感性に訴えるイマーシブで上質・快適な車室空間を創出する「ウェルカム演出」機能があり、CX-5にも搭載されている。

ウェルカム演出の実装

 そのほかにも、CDCがインナーカメラの顔認識と連動してユーザーを認識し、ドライビングポジション、空調温度、お気に入りのプレイリスト、ディスプレイの表示やアカウント連携など、1人ひとりに最適な車室内空間を提供する「パーソナライゼーション」など、車両が人中心の思想に基づいたおもてなしをするという体験価値に昇華させるという。

パーソナライゼーションの提供

直感的で使いやすい車載UXの実現

 高度な音声操作、高精細3Dビジュアルにより、操作性と視認性を高次元で両立させる先進UXは、高度な音声操作によってドライバーが視線をそらすことなく、安全かつ快適にクルマと会話できる環境を整えてくれる。また、3Dエンジンを搭載し、コックピットの画面には高精細でリアルかつ滑らかな3Dデジタル表現が広がる。視認性に加え、ドライバーの感性に響くインターフェイスに仕上げた。

直感的で使いやすい車載UXの実現

 最後に谷原氏は、「今回のCGC開発は、難易度が高くチャレンジングな商品でしたが、マツダとの共創に加え、複数のグローバル技術パートナーとの連携によって立ち上げ、マツダの実現したい世界観とパートナーの先端技術を融合させ、パナソニックの車載インテグレーション力で商品化を実現できました。今後もグローバル競争力を持ったSDVプラットフォームを進化し続けて、モビリティの未来を加速させます」と説明会を締めくくった。