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スズキ、新型「GSX-R1000R」商品説明会 GSX-Rの「走る・曲がる・止まる」の思想を極めたフラグシップ

2026年7月10日 開催
商品説明会に並んだ新型「GSX-R1000R」と開発陣

 スズキは7月10日、新型「GSX-R1000R」の新商品説明会を開催。排出ガス規制への適合という壁を乗り越え、スズキのフラグシップをいかにして深化させたのか、新型GSX-R1000Rの開発を担った6名が登壇し、各担当者がそれぞれの開発のポイントやマシンに込めた想いを語った。

 新型GSX-R1000Rは、スズキのモータースポーツ活動で培われた最先端技術をフィードバックしたフラグシップ・スーパースポーツモデル。日本国内での発売日は7月17日で、価格は237万6000円となる。

 新型モデルでは「高性能を維持しながら、環境性能をも両立させる」を目標に、平成32年(令和2年)国内排出ガス規制と最新の騒音規制をクリアしつつ、GSX-Rシリーズ発売40周年を記念する特別なグラフィックを纏っての登場となる。

 パワーユニットは、水冷4サイクルの直列4気筒DOHC4バルブ999cm 3 エンジンを搭載。最高出力は140kW(190PS)/13200rpm、最大トルクは108Nm(11.0kgfm)/11000rpmを発生する。

 吸排気ポート形状の変更や排気バルブ径の24mmから25mmへの拡大、圧縮比を13.2:1から13.8:1に高めて燃焼効率を向上させるなどのブラッシュアップを実施。さらに、独自の可変バルブシステム「SR-VVT」や「フィンガーフォロワーバルブトレイン」の進化、電子制御スロットルバルブ径を46mmから48mmへ拡大など、日常的に使う回転域から超高回転域までリニアで扱いやすい特性へと磨き上げた。

 会場で行なわれた技術説明には、新型GSX-R1000Rのチーフエンジニアである二輪事業本部 二輪商品企画部 二輪第1カーライン 大型の東郷隼也氏をはじめ、エンジン設計の信太弓弦氏、生産技術の加賀美瑛持氏、エンジン実験の岩田秀矢氏、車体部品の高橋海都氏、そしてテストライダーの大城光氏が登壇。新型モデルに投入された新技術や開発の舞台裏について詳細な解説が行なわれた。

高出力一辺倒ではない、トータルパフォーマンスの追求

初代GSX-Rから続く歴代シリーズの歴史の振り返り

 開発全体を統括したチーフエンジニアの東郷隼也氏は、GSX-Rが誇る40年の歴史を紹介。初代GSX-Rから続く歴代シリーズの歴史を振り返り、「今も変わらない、高性能一辺倒ではなくトータルパフォーマンスを追求するというGSX-Rの基本ポリシーがあります。私たちは一瞬の速さでは市販車の価値は語れないと考えています。高い出力を安定して維持できる耐久性、そしてライダーが無理なく性能を引き出せるコントロール性も備わって、初めて真の性能が成立します」とGSX-Rの伝統を語った。

サーキットを舞台に進化を続けたGSX-R

 東郷氏自身もスズキファンとしてスズキに入社。GSX-Rシリーズの伝統に対して、新型GSX-R1000Rの仕上がりには強い自信を見せる。東郷氏は「GSX-Rは走っていると、自分自身の足で走っているような感覚にどんどんなってくる。自分の体にすごくなじむというところがGSX-Rの特徴だと思っています。やっぱり『Rって特別なんだな』と感じることができますので、スズキらしい確実な進化を、ぜひ新型GSX-R1000Rで感じていただきたい」との思いを話した。

GSX-Rの本質
新型「GSX-R1000R」開発のポイント
初代GSX-Rの誕生から40周年を記念したカラーリングを導入した
新型「GSX-R1000R」

信頼・耐久・高性能のバランスを追求したエンジン

エンジン設計を担当した信太弓弦氏

 エンジン設計を担当する信太弓弦氏は、最新の排出ガス規制や騒音規制をクリアしつつ、最高出力を維持するためのハードウェアの進化について解説。バルブトレインのブラッシュアップ、レシプロ部品の信頼性向上、吸気システムの再構築、排気システムの最適化に取り組んだという。

 信太氏は「圧縮比を高めようとすると、ピストン自体の容積が増え、またピストンが受ける荷重も増えるので、重量は増えてしまう傾向にあります。ですが、FEMを用いて裏面のリブ形状を最適化することで、重量比3gの軽量化を実現しました」などと、特にピストン形状見直しによる3gの軽量化や、クランクシャフトの太径化(ジャーナル径35mmから37mm)による剛性向上といった設計のポイントが紹介された。

エンジン全体のコンセプト
ピストンヘッドの形状変更

量産性確保のために諦めていた生産技術に挑戦

生産技術を担当した加賀美瑛持氏

 生産技術を担当する加賀美瑛持氏は、今回新たに導入された「スズキスマートファクトリー」プロジェクトに触れ、ミクロン単位の加工精度を量産ラインで安定して実現するための取り組みを紹介した。

 新型GSX-R1000Rの開発にあたっては、これまで量産性確保のために諦めた技術に挑戦。鈴鹿8耐に参戦したCNチャレンジ車両へトライ品を投入して先行評価を実施し、量産機種に早期フィードバックするといった取り組みが行なわれた。シリンダーのボア内径の加工精度を極限まで高めることで気筒間のバラつきを抑えるなど、エンジンのフィーリング向上につながるエンジン全体のフリクションロス低減を実現させたという。

 加賀美氏は「CNチャレンジのレース車両には、浜松工場で組まれたエンジンが搭載されています。クランクシャフトなどのエンジン部品も、同じ浜松工場の量産ラインで製作された部品を使っています。量産ラインのレベルアップもスピードアップできるということで、このような取り組みを始めました」と明かした。

エンジンフリクションの低減につながるスズキスマートファクトリーの取り組みが紹介された

自然なフィーリングと扱いやすさの調律

エンジン実験を担当した岩田秀矢氏

 エンジン実験を担当した岩田秀矢氏は、電子制御スロットルバルブ径の拡大(46mm→48mm)に合わせたマップの最適化や、新開発の「スマートT.L.R.コントロール」について解説。排出ガス規制をクリアしつつ、1000ccクラスの高出力エンジンとしての力強さと、スロットルの開けやすさを高次元で調律したといい、ライダーの感性に極限まで寄り添うスズキ独自の制御の仕上がりに強い自信を示した。

 岩田氏は「エンジンが持っている素直な出力特性と、それを最大限に引き出すためのエンジンの適合。これらはGSX-Rシリーズには欠かせない要素です。新型モデルでもそのDNAをしっかりと受け継いでおり、さらに磨きをかけた完成度をぜひ体感していただきたい」との想いを語った。

エンジンハードウェアの変更や最新スペックのECMなどが投入された
エンジンのスペック
従来モデルと新型モデルの周波数特性の違い

鈴鹿8耐マシンのパーツを純正アクセサリーで再現した「ウイングレット」の開発

車体部品を担当した高橋海都氏

 二輪事業本部 二輪車両設計部 艤装設計課の高橋海都氏は、鈴鹿8耐参戦マシン「Team Suzuki CN Challenge」のために開発した空力パーツをベースに、新型の純正アクセサリーとしてリファインしたドライカーボン製「ウイングレット」の開発ポイントを解説。単に見た目のインパクトだけでなく、ハンドリングに悪影響を与えない最適なダウンフォース量を実走テストから導き出したという。

 高橋氏は、「(初期の試作案では)ダウンフォースが効きすぎて、フロントが重くなりサスペンションのセッティング変更が必要になってしまうというテストライダーからのコメントがありました。オプションパーツですので、サスをいじらずにハンドリングを成立させたい。そこからウイングの横幅や形状を空力解析し、さらにデザイナーとも『外観的に格好いい形状』を求めて何度も調整を重ねました。ただ見た目が格好いいだけでなく、走行性能もしっかり作り込んでいます」とテストライダーと何度も意見を交換し、デザインと性能を極限まで両立させた開発の舞台裏を明かした。

鈴鹿8耐マシンの「ウイングレット」を純正アクセサリーで再現

国内外の過酷な実走テストが証明する完成度

テストライダーの大城光氏

 品質保証本部のテストライダーである大城光氏は、静岡県にあるスズキの竜洋テストコースをはじめ、国内外のサーキットや欧州の公道など、ありとあらゆる過酷な環境で新旧モデルの乗り比べを実施。「スズキは開発の中で車両を実走させる距離、時間というのは、より長いと自負しております」と語る。

 新型GSX-R1000Rについては、低回転域のトルクがしっかりと増しているため、街中での普段使いやワインディングのコーナー立ち上がりでの扱いやすさが大きく向上していると評価、「1万回転以下で、今までのGSX-Rではゴリゴリした昔ながらのフィーリングがあったと思うんですが、その辺が滑らかになっていて、スムーズにエンジンが回転しているというフィーリングが感じられます」とコメント。

 また、新開発の「スマートT.L.R.コントロール」をはじめとする電子制御の進化について、大城氏は「新型は、コーナーの立ち上がりで車体をフルバンクから起こしてスロットルを開けていくような状況でも、リアが穏やかにスライドしながらしっかりと前に進んでくれます。より自信を持ってスロットルを開けていくことができるようになり、車体全体の挙動が自然で、スムーズかつ力強い加速を可能にしています」と、その完成度を強調した。

テストライダーとしての評価
自然な挙動を実現した電子制御

「スズキの中の最高峰」を体現した、GSX-Rの変わらない思想

チーフエンジニアの東郷隼也氏

 こうしたチーム一丸となって環境規制というハードルを越え、純粋に走りの本質を磨き上げた新型GSX-R1000Rについて、チーフエンジニアの東郷氏は「スズキにとって新型『GSX-R1000R』は本当に特別なモデルです。この『R』には、その時代時代において私たちが考える『走る・曲がる・止まる』の“一番”をすべて詰め込んでいます。まさに『ベリー・ベスト・オブ・スズキ(スズキの中の最高峰)』と呼ぶにふさわしい仕上がりです。スズキらしい確実な進化を、ぜひこの新型GSX-R1000Rを全身で感じていただきたいです」と話した。

GSX-R1000R
GSX-R1000R