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豊田自動織機、交流方式V2Gの技術基盤を確立 BEVによる電力網の需給調整を低コストで実現する可能性

2026年7月13日 発表
双方向車載充電器など含む「統合電源ユニット」を実機検証用に改造し、検証用機器とした

 豊田自動織機は7月13日、電気自動車(BEV)などの車載バッテリに蓄えた電力を電力網へ供給する技術「Vehicle to Grid(V2G)」について、交流(AC)方式による技術基盤を確立したと発表した。これまでの直流方式に比べて低コストで実現でき、BEVの蓄電池利用が進み、再生可能エネルギーの需給調整などに活用が進む可能性がある。

 技術基盤の実機検証は、スウェーデンの国立研究機関であるRISEおよびノルウェーの充電器メーカーDEFA社と共同で実機検証を実施。V2Gに関する国際規格(ISO15118-20)の要件に基づき、車載バッテリに蓄電した電力を車両側で交流に変換し、スウェーデンの三相交流の電力網へ電力供給できることを確認した。

豊田自動織機が提唱する交流(AC)方式の優位性は、低コスト

 V2Gとは、BEVのバッテリに蓄えられた電気を電力会社の系統電力網に接続し、相互に利用する技術を指す。近年、世界的に導入が進む太陽光や風力などの再生可能エネルギーは、天候によって発電量が大きく変動するという課題を抱えているが、V2Gはこの変動を吸収する「需給調整」の役割を担うことが期待されている。

 例えば昼間に太陽光で発電した余剰電力をBEVに蓄え、電力需要が高まる時間帯に電力網へ戻すことで、電力の平準化に寄与する。BEVを単なる移動手段から「走る蓄電池」として活用するものとなる。

 豊田自動織機が今回確立したのは、車両から交流を取り出して電力網へ戻す「交流(AC)方式」。現在、日本国内で普及しているV2Gは、車両のCHAdeMOの急速充電コネクターから直流の電力を取り出し、建物側の機器で交流に変換する「直流(DC)方式」となる。

直流方式のV2G

 これに対し、今回採用された交流方式では、車両側に搭載された「双方向車載充電器」を用いて、車内で直流から交流への変換を完結させる。

 この方式の最大の利点は、建物側の設備コストを大幅に抑制できること。CHAdeMOのコネクターから取り出す直流を交流電源に変換する機器は50万から150万円程度の機器代金がかかり、設置スペースも必要となるため個人の戸建て住宅への普及にはハードルがあった。

交流方式のV2G、住宅側に変換設備が不要になる

 しかし、交流方式であれば地上側の設備を簡略化でき、豊田自動織機によれば導入コストを20万円程度まで抑えることが可能だという。車両に搭載する車載充電器の双方向化とV2Gへの対応コストはかかるが、そのコスト増は限定的となり、建物側の設備負担軽減のコストメリットのほうが極めて大きいのだという。

V2Gの狙いは再生可能エネルギーの供給調整にある

 オンライン説明会に登壇したエレクトロニクス事業部 技術部 システム統括室 室長の中島尚宏氏は、V2Gの狙いとして「太陽光や風力発電など、日射量や風量によって発電量が左右される再生可能エネルギーの電力を、クルマのバッテリを使って供給調整することにある」と強調した。

 V2HとV2Gの違いにも触れ「個人の戸建て住宅でいえば、戸建ての中でその電力の需給のバランスを取るものがV2H」とし、具体的には「太陽光発電の買い取り単価が下がってきているため、その部分をクルマにためて、夜間に電気を使いたいときに自分で発電した電力をクルマから供給してもらうことで電気代を抑える」と説明した。

 今回のV2Gは「やり取りの範囲を系統電力網という大きな範囲で融通を利かせることが大きな違い」とし、車両から電源を取り出す方法などは同じながら、目的は「メガソーラー、大型の風力発電といった大規模な再生可能エネルギーが変動するところを、EVの普及でたくさんのEVで需給バランスを取り、社会自体の電力も安定させ、需給調整することが狙い」と述べた。

 V2Gを組み入れるユーザー側のメリットについては「クルマは走るために買うものだが、駐車している時間も長い。止まっているときに電力の平準化に協力することで何かしらの対価が得られれば、ユーザーにとってBEV所有のコストメリットが出るのではないか」と、経済的なメリットの可能性も示した。

 交流方式の実用化の時期については「今回の実証を踏まえ、2030年頃には車載充電器の機能としてV2Gに対応したものを仕立てられればと考えている」との見通しが語られたが、実現には技術確立だけでなく、法規的な課題もある。

 中島氏は「系統電力網に交流で電力を戻すための法整備は、日本を含め世界中でまだルール作りの最中にある。安全面を含めたルール作りが商用化の鍵」と語り、技術と並行して社会制度の整備が必要であることを強調した。

BEVを走る蓄電池に

 豊田自動織機では、これまでBEVに関してパワーエレクトロニクス製品の開発、生産を行ない、日産「リーフ」にも車載充電器を含むパワーエレクトロニクス機器が採用されるなどトヨタグループ内外に製品を供給してきた。

 中島氏は開発の背景にある動機を「われわれはこれまで車載充電器を開発・生産してきたが、従来の車載充電器はクルマが止まっているときに建物から充電するためだけの機器であり、それ以外の役割があまりなかった」と振り返る。

 最近では、車内で家電が使えるよう双方向化したものを搭載する車種が増えていることもあり、中島氏は「双方向化した機能をさらにV2Gで電力網まで返すことで、車載充電器の価値が高められる」とし、BEVが移動手段としてだけでなく「走る蓄電池」として活躍する環境づくりに貢献するよう、技術開発に取り組むという。