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トヨタ自動車の新社長 近健太氏はミニバンが大好き、「子供を乗っけていろんなとこに行きました」 現場の困りごとを解決しトヨタの力を最大に
2026年7月21日 10:46
- 2026年7月21日 発表
トヨタ自動車 代表取締役社長 近健太氏は7月18日、同社第122回定時株主総会で取締役に選任後初の就任インタビューを聖光寺(長野県茅野市)近くのホテルにおいて実施した。
この共同インタビューでは、近社長が社長就任後から掲げる損益分岐台数の引き下げについての考え方や、バリューチェーンビジネスの考え方、従業員とのコミュニケーションについて語られた。
近社長によると、(例えばリーマンショックなど)非常にわるいことがあったときにしっかり踏ん張れる会社の体質、ステークホルダーの方たちとしっかり仕事を続けられる体質を作っていきたいという。
「やはり、一に求められるのは収益体質なので、それをやるにはある程度のところに損益分岐台数を持っていかないと、そういう風にならない。闇雲に下げていけばいいかっていうと、そんなことではないと思います。ただ今はやや高い状況があるので、それを少し反転させていきたいと思っています」「やることは、本当にロングヒットみたいなことはなくて、一つ一つ、みんなが明確に分かっているけども、なかなか手がつけられないところとか、そういったことを一つ一つやっていくことだと思います」(近社長)。
バリューチェーンビジネスについても同様で、部品、補給品、用品、金融、保険といったクルマにまつわる分野を、一つ一つやっていくことが重要で、ロングヒットみたいなことはないと語った。
近社長の経歴は、1991年4月にトヨタ自動車に入社。主に経理部門で経験を積み、その後、当時社長だった豊田章男氏の秘書となる。この秘書になったことが転機であると語り、後に経理や人事、先進技術カンパニーなど幅広い部門で執行などを担当。2022年にはトヨタ自動車の副社長に就任している。
その後、2023年からはウーブン・バイ・トヨタの代表取締役CFOに就任。2025年からはトヨタの執行役員を兼任し、2026年4月にトヨタの社長に就任した。
財務・経理畑のスペシャリストであり、トヨタの社長としても豊田章男会長からは「お金の人」と紹介されるなど、トヨタの「稼ぐ力」の強化を期待されている。
経営的な視点からは、しっかりと利益を上げることはとても大切なことではあるが、ニュルブルクリンク24時間耐久レースでガンガン走ってしまうモリゾウ選手こと豊田章男会長、クルマの開発者でもあった佐藤恒治副会長と比較してしまうと、クルマをどう見ているかという発言はそれほど伝わってこなかった。近社長のクルマ観について聞く機会があったので紹介したい。
近社長は、ミニバンが好き。子供を乗せて走るのが好き
実は近社長は、ウーブン・バイ・トヨタの代表取締役CFO時代にウーブンシティのある裾野市で開催されたラリーチャレンジにドライバーとして参加するなどクルマ好きであるのは間違いない。「クルマの図面は引けないものの~」と語るなど、開発畑ではないものの、運転するのはとても好きだという。
ただ、運転技量に関してはトヨタの開発ドライバー集団である「凄腕」の人たちのところに時たま習いにいっている程度といい、今はラリーで必須となるサイドブレーキターンを習得にチャレンジしたいと語る。
このサイドブレーキターンに関しては、ウーブン・バイ・トヨタ時代にSVPの豊田大輔氏や、ラリードライバーの勝田範彦選手に習ったものの習得できていないという。「当時大輔君とかに、『ちょっと曲げてグっと踏めば、あ、グッと引けばキュッと行きますから』」「ノリさんとか『もうそこビュー行けばいいんですよ。うん。ビュッと』」と、うまい人ならではの表現はなかなか理解するのが難しかったとのこと。いずれ近社長がサイドブレーキターンを習得し、再びラリーチャレンジに挑戦することはあるかもしれない。
ただ、近社長は走ることも好きだが、クルマそのものが好きだという。「これ、佐藤さん(佐藤恒治副会長)からも言われたんですけど、私はやっぱり走るのもすごい好きですけども、クルマそのものが結構好きだったりします。子供を乗っけていろんなとこに行きました」。
この子供とのドライブを実現してくれたクルマとして、とくにCセグメントのミニバン「ノア」や「ヴォクシー」が好きで、乗り継いできたという。現在の4代目「ノア」「ヴォクシー」はTNGAのGA-Cプラットフォームになったほか、第5世代THSの頭出しになるなど、トヨタが力を入れて進化させてきた車種。もちろん、近社長もそういった進化を家族とともにすごく体感してきたそうだが、一番好きだったのが80型の「ノア」「ヴォクシー」に用意されていたチャイルドミラーだという。
「僕が好きだったノアはここんとこに(と上方を指しながら)、なんて言うんですかね、サングラスホルダーがあるじゃないですか普通のクルマって。そこに鏡があるんです。で、(後方の)3列目まで全部見える。そうすると子供が、うちの家族はチャイルドシートを3台付けていた時代もあって。音がしないと不安なんですよ」と、後方に座っている3人の子供を目で確認できるのが何よりもよかったという。近社長は家族と一緒にミニバンでお出かけする、よきパパの気持ちをしっかり理解できる人であるのは間違いないようだ。
ただ、このチャイルドミラーオプションは、現行の4代目「ノア」「ヴォクシー」では設定されていない。現在だと、室内への子供の置き去り警告などを備えたデジタルミラーになっていくのかもしれないが、近社長が語る「後席に座っている子供を目で確認したい」という要望をかなえた形で復活することを期待したい。近社長は、用品などのバリューチェーンビジネスに力を入れると宣言しており、そうした用品の一つ一つにバックストーリーのあることはとても大切なことでもあるからだ。
トヨタのクルマは今後どうなっていくのか?
ではそんなよきパパである近社長は、トヨタのクルマをどういった方向に導いていくのだろうか。豊田会長が社長時代に宣言した「もっといいクルマづくり」はこれからも変わらない。
その上で近社長は、SDV(Software Defined Vehicle、ソフトウェア定義車両)によるパーソナル化の方向性について言及した。トヨタはSDVの目的を「悲しい交通事故をゼロにすること」と定義。交通事故をゼロにするために、ソフトウェアのアップデート、ソフトウェアの可能性を追求していくことを宣言している。
ただ、そのソフトウェアの進化の過程で、パーソナル化の方向はあるだろうと語る。前述したように近社長は、トヨタのソフトウェア開発を担うウーブン・バイ・トヨタのCFOでもあった。ウーブン・バイ・トヨタの社長である隈部肇氏と話をすることも多く、「隈部さんは、ハードウェアを使い倒させるのがソフトの役割だってよく言うんです。なのでハードウェア以上のことはできない。だけども、人によってこういう風がいい、こういう風な方が潜在的に疲れを感じてないということは、ソフトはできるみたいなことは、1つ方向としてはあると思う」と、トヨタとしてのソフトウェアの使い方を語ってくれた。
「現場の困りごと」を解決し、トヨタ自動車の力を最大限発揮
近社長は就任以来、トヨタの現場を精力的に回っている。その中で、トヨタの現場の強さを改めて知るとともに、非効率な部分も見えてきているという。
それを近社長は「現場の困りごと」と表現。その困りごとを解決していくのが自分の大切な仕事であると位置付けている。
その背景には、トヨタの人たちに対するリスペクトがある。「私は図面も描けないですし、(豊田)会長のようにここのボルトがちょっと緩んでるっていうことを感じるセンサーも僕にはない。いろいろ調べてみたらちょびっとだけ緩んでたとかですね。そういうことが分かる人たちがトヨタにはいっぱいいる。私はやっぱりそういうことをできる人がいて、そういうことがトヨタのクルマづくりに重要なんだと。だからその人たちがしっかり働きやすくならないとダメなんだと。そういうことをしっかり理解をして、阻害要因があればそういうのを解決していく。ちょっと間接的になっちゃうんですけども、そこは絶対ぶらさないでいきたい」と語り、トヨタのさまざまな技能を持つ人たちが、より働きやすい環境を作っていくことを、現場の困りごと解決と表現している。
もちろんその目的は、現場の困りごとをなくすことによるトヨタスタッフの力の最大化。IT業界ではエンパワーメント(Empowerment)と表現されがちなことでもあるが、それを「現場の困りごと」を解決し、現場の力を最大限に発揮することと語るのが、主権は現場と位置付けるトヨタ自動車のトップであるのかもしれない。





