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トヨタ、ニュル仕様GRヤリスの4WDカップリング冷却は底面のNACAダクト増設で対策 ダブルディフューザー効果も現出
GAZOO Racing Company 久富圭氏に聞く
2026年7月24日 12:53
- 2026年7月24日 発表
4WDカップリングの冷却改善を行なったオートポリス戦のGRヤリス
7月25日~26日の2日間にわたってスーパー耐久第5戦がオートポリス(大分県日田市)において開催される。トヨタ自動車とルーキーレーシングが組んだ「TOYOTA GAZOO ROOKIE Racing(以下、TGRR)」は、この第5戦に2026年のニュルブルクリンク24時間レースに挑戦したTGRR GRヤリス DATでエントリー。32号車として参戦する。
2026年のニュル仕様GRヤリス(以下、26式ニュル仕様)は、1つ目はエンジンのパワーアップ、2つ目が空力面の改善、そして3つ目がフロントサスペンションのジオメトリ変更とトレッド拡大と3つの点で進化・改良を実施。2025年のニュル仕様GRヤリス(以下、25式ニュル仕様)が、市販車のままのパワートレーンで挑戦して完走したので、新たな挑戦を盛り込んでいた。
ただ、実際のニュルブルクリンク24時間レースにおいては、空力の改善やエンジン出力の増強などによって負荷が増大。想定以上の負荷と、フラットにした底面のディフューザー機構によって4WD機構をコントロールする4WDカップリングが発熱。結果として封入オイルの高温状態が続いて劣化し、振動問題が発生してしまった。レース現場では原因不明だったため、パワートレーンを全交換する事態となってしまった。
その後、富士24時間レースにおいてGAZOO Racingカンパニー 高橋智也プレジデントが説明会を実施。オートポリス戦には、熱対策したGRヤリスを投入することを明言していた。
では、今回オートポリス戦に投入される2026年のニュル仕様改良型GRヤリス(以下、26式ニュル仕様改)は、実際どんな改良が施されたのだろう? オートポリスで参戦準備を進めていたGAZOO Racing Company GR統括部 ZR GR4主任 久富圭氏に詳細を聞いてみた。
ダブルディフューザー効果も現出したNACAダクト設置
久富氏によると、ニュルブルクリンク24時間レースにおける4WDカップリングの温度上昇は、ある程度見込んでいたものの想定以上のものだったという。主な原因としては、今回増設したディフューザー、底面のフラット化によって4WDカップリングに風が当たりづらくなったことにあるという。
そのため、26式ニュル仕様改ではフラットな底面にダクトを設置。底面を流れる空気を直接4WDカップリングにぶつける構造になっている。
その形状もワークスらしくCFD(Computational Fluid Dynamics、数値流体力学)で解析。フラットな部分から空気流を導くのに適したNACA形状のダクトを設置している。このNACA形状のダクトだが、レーシングマシンでよく見かけるもので、久富氏によると「いろいろ論文なども調べてみたが、この形状が適している」とのこと。試行錯誤の末、定番形状が採用されている。
ちなみにNACA(National Advisory Committee for Aeronautics)はアメリカの航空技術の研究機関で、第二次大戦後にNASA(National Aeronautics and Space Administration)に発展。特にNACA翼型など翼の形の解析で知られた機関で、特徴的な翼の形として知られている層流翼などもシリーズ化して発明(同時期に日本ではLB翼として独立して発明)している。さらに、まったくGRヤリスとは関係ない話だが、初代カローラの開発者として知られる長谷川龍男氏は、戦時中は航空機技術者で層流翼の改良型であるTH翼を発明。論文を現在でも見ることができる。なお、このNACAダクトは、NACAが戦後にNASAになったことでNASAダクトと呼ぶ場合も多い。
ただ、この26式ニュル仕様改に採用されたNACAダクトの吹き出し口は緩やかに後部にかけて盛り上がっており、ベンチュリー効果を意識したもの。そこそこの風量は確保できているように見えた。
さらに温度低減対策として、ジェイテクト製ITCCである4WDカップリングのカップリングケースにも特殊塗装を実施。「表面がざらざらになる塗装」とのことで4WDカップリングは赤く塗装されている。金属表面をざらざらにすることでカップリングケースの表面積を増大。冷却効果の拡大を狙っている。
取材後に気がついたのだが、金属表面に施す赤くざらざらな塗装といえばエンジンヘッドカバーなどに用いられる結晶塗装が思い出される。結晶塗装であるかどうかは、機会があったら確認してみたいところだ。
これらの対策により、条件設定したシミュレーション環境下においては従来よりも20℃以上の温度低減を確認。夏の5時間耐久レースであるオートポリス戦において、実車における効果を確認していく。
久富氏によると、狙った効果ではなかったものの、このNACAダクトによる導風はリアのディフューザーにもよい効果があったという。
26式ニュル仕様ではリア下部に巨大なディフューザーが設置されているが、26式ニュル仕様改でも変更なく採用。ディフューザー効果を最大とするため、2本出しマフラーを1本出しとして、両サイドにおける空力的メリットを稼ごうとしている。
中央部における効果は構造物があり乱流となるため捨てていたのだが、NACAダクトから導かれた空気がこの中央部を積極的に流れるようになり、2段でのディフューザー効果が発生。ダブルディフューザーとよべる状況が現出しているという。これは、久富氏も想定外の効果であるといい、この効果についてもオートポリス戦において確認していく。
さらにオートポリス用の26式ニュル仕様改で採用したのは、ブレーキへの導風ボックス。これはニュルブルクリンクとオートポリスのコース特性の差もあり、オートポリスの方がブレーキに厳しいという。この導風ボックスもCFDによってシミュレーションされており、ワークスらしくリソースが投入された開発が行なわれていた。





