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ブリヂストン、使用済みタイヤから新しいタイヤの素材を取り出す技術とは?
2026年7月27日 14:39
- 2026年7月24日 開催
ブリヂストンは、東京都小平市に「Bridgestone Innovation Park」という技術開発拠点を構えている。
その敷地内にブリヂストンのこれまでの歩みや、モータースポーツ用タイヤを含む製品、最新テクノロジーなどを見学できる施設として「Bridgestone Innovation Gallery」を開設している。こちらの施設は月曜日~土曜日まで開館しており、事前予約なし、入館料無料で見学できる。詳細は公式Webサイトで確認していただきたい。
今回は「Bridgestone Innovation Gallery」で開催された、「あなたの知らない、世界のブリヂストン。タイヤ原材料と『走る実験室』の世界」と銘打った報道関係者向けセミナーについて紹介する。
セミナーではブリヂストンの執行役CIO 草野智弘氏が「長期的な事業継続に不可欠なサプライチェーンを支える原材料について」をテーマに解説。そして「原材料の研究開発を市販タイヤ開発につなげる『走る実験室』」というテーマを、ブリヂストンの執行役CPO兼グローバルモータースポーツ管掌 今井弘氏が担当した。
使用済みタイヤからオイルと再生カーボンブラックを取り出す
今回のセミナーは座学ではなく「Bridgestone Innovation Gallery」内にある展示物を見ながら解説を聞く形式となっていた。
まずは草野氏による原材料の解説から。ブリヂストンでは2011年にリファインした環境宣言を発表している。ここでは、未来のすべての子供たちが「安心」して暮らしていくためにできることとして、「自然と共生する」「資源を大切に使う」「CO₂を減らす」の3つの項目を打ち出している。
その後、2012年のパリモーターショーでは、石油外資源100%のコンセプトタイヤを展示。さらに2022年には、使用済みタイヤを資源として使うブリヂストン独自モデルの「EVERTIRE INITIATIVE」が始動した。
2023年には走る実験室であるモータースポーツを通じた技術実証と価値訴求を拡大していくこととなった。そして2025年のジャパンモビリティショーでは、リサイクル材料を使用したコンセプトタイヤを展示したことが説明された。
ブリヂストンのコア事業であるタイヤ製品にて、ビジネスモデルを循環型・再生型にするための取り組みを行なっている。具体的にはユーザーの車両データを参考にしてタイヤを効率的に使う方法の提案や、メンテナンスやリペアを行なったりすること。そして使用済みタイヤを回収し、リトレッドや、ケースと呼ばれるタイヤの台座部分を再利用することで、資源を有効に使っていくというもの。また、回収した使用済みタイヤを素材へと分解することで、将来のタイヤの原材料に戻していくマテリアルリサイクルにも取り組んでいる。
さて、少し難しい話が続いた後、草野氏は「そもそもタイヤの原材料とは何か?」について解説した。タイヤを構成する原料は大まかに分けると天然ゴムと合成ゴムが約半分を占める。それ以外には、ゴムの強度を出すための素材や薬品、繊維や鉄といったものが配合されている。
このうち天然ゴムとは、東南アジアやアフリカで生産されているパラゴムノキから採れる「ラテックス」を凝固させた天然由来のものとなる。
ラテックスの固め方には2通りの方法があり、それによって2種類の天然ゴムに分かれる。その1つが「RSS(Ribbed Smoked Sheet)」と呼ばれるグレードの高い天然ゴム。もう1つが「TSR(Technically Specified Rubber)」と呼ばれるもので、こちらは比較的スタンダードな天然ゴムとなっている。
これら天然ゴムの特徴は破壊強度が高い点にある。そのため、例えば航空機のタイヤや、トラック、バスなど、シビアな条件下で使用されるタイヤに、より多く使われる傾向となっている。
次に合成ゴムだが、これはナフサからゴムの原料を作り出すもので、工業化されているだけに、目的に応じた特性を与えることが可能。その特徴を生かして乗用車用タイヤやレース用タイヤなどに多く使用されている。そしてブリヂストンでは合成ゴムの設計力に大いに自信を持っていて、例えばスタッドレスタイヤ「ブリザックWZ-1」には、親水性を付与した合成ゴムが使われている。これは簡単にいうと、水との相性がよいタイヤで、水を抵抗に変えることで滑りにくくするという考えから生まれた合成ゴムだ。
3つ目はカーボンブラック。これも石油由来のもので、重油を燃やす際に不完全燃焼させることによって「煤」のような状態にした物質。
カーボンブラックの構造を電子顕微鏡などで調べると、ひもが複雑に絡み合っているような状態の間にカーボンブラックが入り込んでいる状態となっている。そのひもを伸ばしたときにカーボンブラックがひもとひもをつなぐ役目をするので、引っ張る力に対して切れにくくする効果があるのだ。そのような特性からカーボンブラックを原料として使用することで、耐久性や耐摩耗性といった性能を付与できるようになる。
ブリヂストンではカーボンブラックに関して、粒子を細かくすること、構造をより複雑にすること、製造時に生じる分布の乱れをできるだけ均一にすること、さらに表面活性と呼ばれる各種反応をコントロールすることなどが技術的に制御できているとのことだ。
なお、今回のセミナーでは、事前に3種類のゴムのサンプルが参加者に配られていた。これは天然ゴム、合成ゴム、合成ゴム+カーボンブラックで作った試験片であり、解説を聞いたあと、草野氏から「それぞれを手で引っ張ってみてください」と言われた。
そこで順番に引っ張ってみると、天然ゴムの試験片はよく伸びるが切れない。合成ゴムの場合は柔らかいのだが切れやすい。そして合成ゴムにカーボンブラックを混ぜた試験片は、硬くて切れないというものであった。
見た目はほとんど同じなのに、材料によってこれほどの違いがあるのは、非常に参考になる体験だった。
天然ゴム農園と新しい品種の開発について
ここからはブリヂストンの天然ゴムに対する取り組みの説明となった。天然ゴムを取り出せるパラゴムノキは、赤道直下の熱帯地域といった比較的狭い範囲でしか栽培することができない。主な産地は東南アジアとなっているが、現在はアフリカの一部も栽培地域となっている。
そしてブリヂストンでは、インドネシアとアフリカに自社農園を持ち、そこで栽培したパラゴムノキから取れる天然ゴムを自社のタイヤに使っている。これはメリットしかないように思えるものだが、農園を作るにはもともとある森林を伐採することになる。そのため、農園の拡大は森林破壊につながってしまうことから、農園を広げることに関して制限がかけられている状態だ。
そこで生産性を向上させるための取り組みとして、病気などによって収穫量が減少しないように病害の診断を行なったり、ビッグデータを使うことにより単位面積当たりの収穫量を増やしたりする取り組みを行なっている。
さらに、ブリヂストンの農園で培った技術を地域の小規模農家に提供することで、生産性を向上させることも行なっている。これは、ブリヂストンにとっては生産量の増加につながり、地域の農家にとっても収入増につながることから、お互いにメリットがある活動として進められているとのことだ。
この他の活動としてはパラゴムノキ以外に、新しいゴムの供給源を実用化することにも取り組んでいる。これはグアユールという品種で、パラゴムノキとは違い、乾燥地域で育つものとなる。現在はまだ研究開発の段階だが、グアユールからの天然ゴムが実用化されると、天然ゴム自体の供給が増えるだけでなく、乾燥地域に緑を育てることにもつながり、社会貢献性の高さも期待できる。また、原料を採る植物の産地を増やすことは、病害や気候変動のリスクへの対策にもなるので、実用化が期待されているものである。
合成ゴム、カーボンブラックへの取り組みについて
次はリサイクルの話となる。ブリヂストンが行なっているのは、使用済みタイヤを熱分解することでオイルと再生カーボンブラックを取り出し、それを再びタイヤの原材料として使用するという取り組みだ。これを「水平リサイクル」と呼んでいる。
熱分解の基本的な方法としては、使用済みタイヤを容器に入れ、その容器に熱を加えると、タイヤのゴムが熱によって分解されていく。
このとき、容器内部の酸素も少なくし、いわゆる「蒸し焼き」のような状態にすることで、分解されて出てきた煙が冷やされて油となってたまり、容器内に残ったものが再生カーボンブラックになるのだ。
ただ、前述した重油から作られるカーボンブラックと大きく違うところは、リサイクルによって取り出した再生カーボンブラックには、もともとのタイヤに使われていたカーボンブラックの特性が異なるものも混ざっている点。
イメージとしては「最先端のタイヤと以前の世代のタイヤが同時にリサイクルされた場合、残ったカーボンブラックはどのような品質になるのか」が問題になるので、それを中間レベルの品質にそろえることも、水平リサイクルで目指していることである。
ちなみに元となる使用済みタイヤからどれくらいのオイルと再生カーボンブラックが採れるかというと、例えば原料となる使用済みタイヤを100とした場合、オイル、再生カーボンブラックともに、現状でも30%くらいは採れているとのこと。今後はより多くの量を採ること、さらに良質なものを採ることを目標にしているそうだ。
こうした研究を行なうための実証設備は、今回のセミナー会場となった「Bridgestone Innovation Park」の中にある。また、それとは別に岐阜県関市にある「ブリヂストン関工場」内に使用済みタイヤの精密熱分解パイロット実証プラントを建設し、2027年下期の竣工を予定。そしていずれはタイヤ水平リサイクルを工業化し、新しいビジネスとして育てていく考えだ。
走る実験室としてのモータースポーツ
ここからは、今井氏によるサステナブルな材料を使ったモータースポーツ用タイヤの話となる。
ブリヂストンは60年以上に及ぶモータースポーツ参戦の歴史を持ち、モータースポーツ活動を自分たちの原点の1つであると捉えている。そしてモータースポーツ活動では、極限の場で徹底的に走り込むことで、人材と技術を磨くことを活動の中心としているとのこと。また、モータースポーツタイヤを開発することで、モータースポーツ文化を支えていくことも、事業の大きなテーマとなっているそうだ。
ブリヂストンでは、モータースポーツの一部のカテゴリーで再生カーボンブラックを使ったタイヤを供給している。再生カーボンブラックは使用済みタイヤを熱することで、ガスとオイル、そして燃えかすとして取り出されるものなのだが、そこで得られる再生カーボンブラックには、もともとのタイヤに使われていたシリカなどの無機物が含まれ、それが凝集している。つまり、余計なものが付いている状態で、そのままタイヤ原料にすると、素材が不安定なため、力がかかった際に凝集していたものがばらけてしまい、タイヤとしてすぐに駄目な状態になってしまう。
そのようなことから再生カーボンブラックを使用するにしても、従来のカーボンブラックと同じように「無機物がなく、分散している状態」にすることが求められる。
そこでブリヂストンはまず「見る技術」を確立。これにより、再生カーボンブラックがどのような状態にあるのかを正確に把握する。次は「使いこなす技術」として、配合や練りの技術について研究開発を進めている。
このような研究は「Bridgestone Innovation Park」で行なっていて、さらにブリヂストン関工場内の新しいプラントでも進めていくとのことだ。
再生カーボンブラックを使用したタイヤは、すでにモータースポーツの世界に投入されている。その1つが、2025年に開催された「ワールドソーラーチャレンジ」という、約5日間をかけてオーストラリア大陸の約3000kmを縦断するレースだ。
セミナー会場には約600kmを走行したタイヤが展示されていたが、路面と接しているトレッドを見ると、トレッドが剥がれたりしている部分はなく、きれいに摩耗している状態だった。
そしてもう一つがスーパー耐久シリーズ。2025年の第7戦富士スピードウェイのST-Qクラスに出走した「マツダ・スピリット・レーシング」のロードスターに装着されたタイヤである。こちらも耐久レースという長丁場を走り切る実績を残し、ドライバーからもよい評価を得られたということだ。
ブリヂストンではモータースポーツの現場にて、再生カーボンブラックを使用する技術の実証を続け、そこで生まれた新たな原材料を市販タイヤに展開していくとのことだった。


























