ニュース

三菱自動車、新型「パジェロ」のデザインコンセプト「グランド・カリスマ」をデザイナー吉峰典彦氏が解説

「形態は機能に従う」という思想と剣道をモチーフにした新フロントフェイス採用

熱い想いから始まった開発工程

 三菱自動車工業は、新型「パジェロ」の事前説明会で、デザインを担当したプログラム・デザイン・ダイレクターの吉峰典彦氏によるデザインプレゼンテーションを実施した。

 吉峰氏は冒頭、「今回のデザイン開発が単なるデザイナーだけの作業ではなく、パッケージング、商品企画、設計、チューニングを担当するすべての開発陣が同じ高い熱量と目線を持って取り組んできた内発的なムーブメントであった」と振り返った。

三菱自動車工業株式会社 デザイン本部 プログラム・デザイン・ダイレクターの吉峰典彦氏

 続けて、三菱自動車のフラグシップモデルが日本から誕生することの重要性について、「ヨーロッパを代表する英国の高級クロス・カントリーモデルや、アメリカを象徴する本格オフローダーと並び、日本にはパジェロがある」という自負を強調した。

開発チーム全体が内発的な熱量を持って、1つの目線で作り上げた新型パジェロ

 さらに吉峰氏は、「初代パジェロが誕生した当時、私はまだ小学生でしたが、単なるオフロードカーのオマージュではなく、オフロード性能と上質な走りの融合という新しい価値を提示したことが強い衝撃として胸に残り続けています。その思想を継承し、さらに進化させたのが今回の新型パジェロであり、『それこそパジェロが日本から生まれる』というわれわれの根幹となる考え方で、ダカールラリーで培われたものは、単に砂漠を走る技術ではなくモノづくりのスピリットそのものであり、過去を振り返るのではなく“その先へ進むこと”を意味しています」と説明した。

新型パジェロではダカールラリーで培われたモノづくりの精神をさらに進化させた

エクステリアデザインコンセプトは「グランド・カリスマ~泰然自若~」

 新型パジェロのエクステリアデザインコンセプトは「グランド・カリスマ~泰然自若~」と定義。20年という時代の変化の中で、パジェロに不可欠な「独創進化」を表現するために、スペイン、韓国、フランスなど世界各国のデザイナーが交わした多角的な議論の中から生み出された言葉だという。パジェロにふさわしい雄大さと威厳、そしてプレステージなたたずまいを表現している。

「グランド・カリスマ~泰然自若~」をコンセプトに掲げた新型パジェロ

 プロポーションは、水平基調で厚みのあるボディという歴代パジェロのDNAをさらに進化。高い位置に力強く張り出したショルダーラインをフロントからリアへ水平に連続させ、リアフェンダーへと流れるように立ち上げている。さらに初代パジェロからインスピレーションを受けたロールバータイプのCピラーを採用。室内空間を最大限に広げたスクエアフォルムと洗練されたディテールにより、威厳と個性を両立させた。

初代のデザインからインスピレーションを受けたCピラーも特徴の1つ

 また、力強いプロポーションと良好な見晴らしを獲得するため、ピックアップトラック「トライトン」と比較して乗員の着座位置(コマンドポジション)を30mm引き上げ、ステアリング角度も最適化。トレッドも拡大することで、スタンスの安定感と走破性の向上を同時に実現している。吉峰氏は「まさに『Form Follows Function(形態は機能に従う)』であり、ただ立派に見せるのではなく、すべての造形に機能が伴っている」と解説した。

着座位置を30mm高め、トレッドも拡大している

 さらに三菱自動車のデザインアイコンである「ダイナミックシールド」は、従来の装飾的なガーニッシュ付加型から、ボディ全体と一体化させた造形へと進化。これにより単なる装飾ではなく「プロテクション(保護)」としての本質的な機能を表現したという。

三菱自動車のデザインアイコンである「ダイナミックシールド」のデザインエッセンスも継承している

 剣道の面(マスク)からインスピレーションを得たフロントフェイスは、感情的な怒りではなく「沈着冷静さ」や「静かだが圧倒的な風格」を演出。高貴な印象を与える「ガードバーグリル」と、スポーティな「ハニカムパフォーマンスグリル」という2つのフロントキャラクターが用意され、タフさと上質さを兼ね備えた個性を両立させた。

高貴な印象を与える「ガードバーグリル」(左)と、スポーティな「ハニカムパフォーマンスグリル」(右)という2つのフロントキャラクターを設定

 さらにフード(ボンネット)は「王冠」をイメージした高貴な立体造形とし、力強いフェンダー造形とともに、三菱自動車が得意とする車両運動統合制御「S-AWC」や「スーパーセレクト4WD-II」がもたらす圧倒的なパフォーマンスを視覚的に表現している。

王冠をイメージしたボンネットや力強いフェンダー造形が特徴

 また、前後で統一感を持たせた「T字型ヘッドライトとテールランプ」は、車両のロック/アンロック時に冒険心をかき立てる先進的なアニメーションライティングを作動。機能面では、メインランプユニットを外からの衝撃から保護するために内側奥深くに配置。一方でデイタイムランニングライトやターンシグナルは上部・外側に配置することで、歩行者や対向車へ意図を明確に伝える構造とした。これは初代パジェロから続く「ファンクショナル・ビューティー(機能美)」の思想を現代の技術で継承したものという。

衝撃保護と視認性を両立させた先進的なT字型ライティングシステム

 ひと目で新型パジェロと識別できるアイコンとして、「前後で統一されたT字型ランプ」「シュノーケル取り入れ開口部としての機能を備えた新形状フェンダーアイコン」「パジェロの歴史からインスパイアされたロールバー風Cピラー」「背面タイヤを想起させるリアのヘキサゴナル(六角形)テールゲート」をデザインエッセンスとして投入。吉峰氏は、「これらのアイコンが一体となることで、伝統と個性が高次元で融合した新しいパジェロの息吹を感じていただける」と新型の特徴をアピールした。

いくつかのアイコンを一体としたことで、伝統と個性が高次元で融合した新しいパジェロに仕上げている

インテリアは疲れず楽にゴールへ届く包容力を具現化

 インテリアデザインも、エクステリア同様に「グランド・カリスマ」のコンセプトに基づいて構築。デザインのインスピレーション源となったのは、パリ・ダカールラリーで活躍したラリードライバー増岡浩氏との対話だったという。

 増岡氏の「ダカールラリーで勝つために本当に必要なのは、ドライビングスキル以上に『疲れずに楽にゴールへ到達すること』だ」という言葉を受け、過度にスパルタンな走りに特化するのではなく、圧倒的な快適性を取り入れることこそがパジェロの本質であると再定義。あらゆる挑戦を受け止める「自信と包容力」をインテリア全体で表現している。

疲れにくい圧倒的な快適性と、走破性能の高い開放感を両立させた新型パジェロのコクピット

 インテリアのデザインを担当したのは、スペイン人デザイナーのホセ氏。自身もパジェロの大ファンであり、「初代パジェロこそがデザイナーとしての発想の原点であり、デザインフィロソフィーである『純(Simplicity)』が色濃く表れている」と語ったという。

 新型パジェロのインパネは、その「純」の思想をさらに拡張。インストルメントパネル上部を左右へ優美に広がる水平基調とし、広々とした開放的な空間を創出。インパネ両端にはグリップ一体型のカップホルダーをビルトインし、実用性と安心感を両立。インパネなどの広範な部位に柔らかいソフトパッド仕上げを施すことで、上質な手触りと品格を追求している。

 また、センターコンソールには走行系スイッチ類を一括集約。運転中でも迷わず直感的に操作できる人間工学(エルゴノミクス)デザインを徹底している。

スペイン人デザイナーのホセ氏が書いたデザインスケッチ
先代モデルからのインスピレーションも反映されている

 シート設計は、長距離移動でも体圧が効果的に分散され疲労を軽減する、包み込まれるようなフロントシートを開発。最上級グレードには「アウトランダー」でも高い評価を得ているプレミアムセミアニリンレザーを設定した。

 2列目シートには150mmのロングスライド機構を装備。フロントシート背面の形状をミリ単位で削り込んだエグリ構造との相乗効果により、ファーストクラス並みの広大な足下スペースを確保した。

150mmスライドを備える2列目シートと、大人がゆったり座れる3列目空間を備える

 さらに3列目シートも、ロールバー構造のCピラー内部にエアコンダクトを通す工夫を施すことで、頭上空間を飛躍的に拡大。フロア高と着座姿勢(体育座り感の解消)を徹底的に改善し、緊急用(エマージェンシー)ではなく、大人が長距離ドライブでも快適に座れる実用的な3列シート空間へと仕立て上げた。

 また吉峰氏が、「開発、生産、デザインが最も苦労し、最も自信を持っている」と語るのがクラフトマンシップの作り込みで、インパネのアクセントパネルには、日本の伝統工芸である「木目込み」や竹の美しさを取り入れた造形を採用した。

インパネのアクセントパネルには、日本の伝統工芸である「木目込み」や竹の美しさを取り入れた造形を採用

 さらに、とても分厚い特殊ラミネートフィルムを、工場の職人が1つひとつ手作業で貼り合わせる高度な工法を導入。他社では類を見ないこの手作業による仕上げが、独特の深みと質感を生み出している。加えて、ドアトリムに施された繊細な「S字ステッチ」も、機械制御が極めて難しく、製造現場とデザインチームが試行錯誤を重ねてクオリティを高めた要素の1つという。

職人が1つひとつ手作業で貼り合わせるドアトリムと繊細なS字ステッチ

 新型パジェロの先進性は、決して華美な装飾ではなく「ドライバーに必要な情報をシームレスに伝え、対話を深める機能」として定義。インパネ中央には、大型で視認性に優れた14.3インチの横長「モノリスディスプレイ」を配置し、オープニングアニメーションや、時間の経過とともに背景グラフィックが変化する演出も内蔵している。

14.3インチの横長「モノリスディスプレイ」

 メーターパネル内には、初代・2代目パジェロのアイコンであった「3連メーター」をデジタル表示で現代風に再解釈した「トリプルメーター」を搭載。高度、傾斜角、コンパスなど直感的に使える6つの機能をユーザーのライフスタイルに応じて自由に選択・配置できる仕様とした。さらに、ドライバーが運転だけに集中できる、最もシンプルで直感的な専用メーター表示モードも用意されている。

初代・2代目の3連メーターを現代のデジタル技術で進化させた14.3インチマルチメーターは、好みに合わせて設定可能

カラーラインアップは8種類

 ボディカラーは、新型パジェロの多面的な個性を際立たせるため、上質さと洗練された雰囲気を漂わせる「アーマーカッパー」、タフな機能美と精悍さを追求した「ファントムブルー」の2つのテーマを中心にラインアップ。全8色が用意され、最上級モデルにはコントラストが映えるブラックルーフ仕様も設定される。

上質な「アーマーカッパー」と機能美を強調する「ファントムブルー」をはじめとする豊富なカラー展開

 プレゼンテーションで吉峰氏は、「新型パジェロは日本で生まれ、ダカールラリーという過酷な環境で鍛え上げられたモノづくりの精神によって完成したモデル。伝統を受け継ぎつつ、プレステージ性を備えてさらなる進化を遂げたこの新型パジェロは、単なる一歩ではなく内外装ともに劇的な跳躍を果たしています。自信を持ってお届けする新型パジェロに、ぜひご期待いただきたい」と締めくくった。