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SEMAショー2026開幕「イベントの経済効果は約58兆円規模」とSEMA CEOのマイク・スパニョラ氏

2026年11月3日~6日(現地時間)開催
米国ネバダ州ラスベガス・コンベンションセンターにて「SEMAショー2026」が開催されている

 世界中から自動車アフターマーケット関係者が集結する世界最大規模のトレードショー「SEMAショー2026」が、11月3日~6日(現地時間)の4日間にわたり、米国ネバダ州ラスベガス・コンベンションセンターで開催されている。

 開幕初日の朝7時には、オープニングイベント「SEMAキックオフ・ブレックファスト(Kickoff Breakfast)」が実施され、業界関係が集い、15のカテゴリーにわたるイノベーションを表彰する「SEMAベスト・ニュー・プロダクト・アワード2026」の授賞式や、SEMA年間最優秀製造業者賞とSEMA年間最優秀チャネルパートナー賞の発表が行なわれた。さらに、コメディアンで自動車やバイク愛好家のジェイ・レノ氏と、ハーレーダビッドソンCEOのアーティ・スターズ氏によるトークショーも実施された。

熱気に包まれた「2026 SEMAキックオフ・ブレックファスト」の会場

年間3830億ドルの経済効果と80か国以上が集結する巨大市場の現在地

 イベントMCを務めたのは、カスタム&レストア専門ショップと映像制作会社を営む、ケビン・オエステ(Kevin Oeste)氏で、「通算59回目、私自身にとっても30回目のSEMAショーです。法制化に向けた勝利、市場の成長と興奮、そして会場内には1300点を超える新製品が展示されています。さぁ、アクセルを床まで踏み込む時間ですよ!」と呼びかけて会場を盛り上げた。

会場のボルテージを一気に高めたMCのケビン・オエステ氏

 続いて、SEMA(Specialty Equipment Market Association)とPRI(Performance Racing Industry)のCEOであるマイク・スパニョラ(Mike Spagnola)氏が登壇。最新の市場規模データを紹介しつつ、「全米および世界80か国以上から自動車メーカー、バイヤー、ビルダー、メディアが集結しています。この自動車アフターマーケット産業がもたらす年間経済効果は、最新の試算で実に3830億ドル(約58兆円規模)に達しています。ただし、この数字以上に誇らしいのは、これが無数のビジネス、雇用、技術革新、そして何よりも“チャンス(機会)”を意味している点です。皆さんは日々のビジネスや従業員、顧客から時間を割いてここに来ています。私たちの使命は、その投資を確実に価値あるものにすることです」と力説。

SEMAショーの経済効果の大きさをアピールするマイク・スパニョラCEO

 また、近年のアウトドア志向やモータビリティの多様化を受け、二輪車、パワースポーツ、サイド by サイド、アウトドアライフスタイル領域の展示を大幅に拡張したことを報告。さらに、ウエストホール外のパーキングエリアには2000tもの土を搬入し、オフロード車両のダイナミックな走行性能を間近で体感できる特設コースを設けたことを明かした。

 マイク氏は、「人によっては単なる泥だらけの駐車場に見えるかもしれないですが、私たちはこれを“進化(Progress)”と呼んでいます。ぜひ会期中は、新しい人と出会い、新しいアイデアを見つけ、新しいビジネスチャンスを創出してほしい」と締めくくった。

SEMA新製品アワード発表。現場の課題を打破する最新ギアが栄冠

2026年の革新的な製品を表彰する「SEMA新製品アワード」授賞式も行なわれた

 キックオフ・ブレックファストのハイライトの1つが、エントリー総数1300点以上の中から選出される「SEMA新製品アワード(SEMA New Product Awards)」の発表。審査員団によって革新性、技術達成度、品質、消費者アピール度、市場性などが厳格に審査され、主要各部門の受賞者が発表された。

カーケア&プロテクション部門:BARREL FX

 受賞製品は、ディープリムや大型カスタムホイールの奥深くまで手軽に洗浄できる専用ケアツール。メーカー担当者は「構想から2年、カーコミュニティの生の声を聞きながら妻の支えを得て開発しました。この受賞は大きな前進になります」と喜びを語った。

カーケア部門を受賞した「BARREL FX」の開発苦労と喜びを語る担当者

補修・リフィニッシュ部門:CELETTE

 受賞製品はCELETTEの「Web Tools」。車体計測・修復作業にAI分析を取り入れた高精度リペアツール。

CELETTEの「Web Tools」は車体計測・修復作業にAI分析を取り入れた高精度リペアツー

エマージングテクノロジー部門:NAPA TRACS

 受賞製品は「NAPA Xccelerator XR Training Goggles」。全米で65万人以上不足しているとされる整備士・テクニシャン不足を解消すべく、Soleraなどと共同開発したXR(拡張現実)技術活用の次世代トレーニング&作業支援プラットフォーム。

整備士を育成できる「NAPA Xccelerator XR Training Goggles」の実機を持参してアピールしたスタッフたち

エンジニアード部門:Hard-N-Fast Racing Products Inc.

 受賞製品は「Black Widow」で、極限のレース現場で求められる電力・信号の高精度マネジメントを担う次世代電子制御ユニット。綿密なハードウェア設計と過酷な環境耐性が審査員団の唸るエンジニアリングとして認められた。

新製品の「Black Widow」と開発に携わったスタッフ

エクステリアアクセサリー部門:FLATED LLC

 受賞製品の「RIV MR52 AirTopper」は、新世代バッテリEV(電気自動車)ピックアップ「リビアン」の荷台サイズにジャストフィットする空気注入式ソフトシェルキャノピー。軽量かつ強靭で、使わないときはバックパックサイズに折りたたんでしまえる実用性が支持された。

軽量かつ強靭で、使わないときはバックパックサイズに折りたたんでしまえる空気注入式ソフトシェルキャノピーを開発したFLATED LLCのスタッフ

インテリアアクセサリー部門:SPEEDHUT

 受賞製品は、1966年~1977年フォード「ブロンコ」および 1961年~1967年製フォード 「F-100」向けの「Gauge Cluster GPS Speedometer+Tach」で、レストモッドが人気の初代ブロンコやクラシックF-100に向けて開発。ダッシュボードのクラシカルな美観を保ちながら、裏側に最新のGPS車速センサーとタコメーターを一体統合した、エンスージアスト待望の電装ユニットとして評価。

パッケージデザイン&ディスプレイ部門:FLATED LLC

 受賞製品の「Mini Mid-Rise Air-Topper Display」は、かさばる製品をいかに店舗でアピールするかというリテール側の悩みを解決した展示キット。実物のインフレータブル構造や携帯性の高さを卓上で直感的に体感できる精巧なミニチュアディスプレイとして絶賛を集めた。FLATEDはエクステリア部門と合わせて見事アワード2冠を達成。

「Mini Mid-Rise Air-Topper Display」は店舗で製品をアピールするための展示キット

パフォーマンス・レーシング部門:Edelbrock、COMP Cams、TCI、FAST、Russell、Lunati

 受賞製品は「FAST LS XCR LS3 Intake Manifold 112 MM」で、パフォーマンス界を牽引する老舗グループの合同プロジェクト。GMの定番名機「LS3」エンジンの吸気限界を引き上げるべく設計され、112mmという巨大なスロットル開口部に対応した超高効率レーシング・インテークマニホールド。

老舗グループの合同プロジェクトで誕生した超高効率レーシング・インテークマニホールド「FAST LS XCR LS3 Intake Manifold 112 MM」

パフォーマンス・ストリート部門:Livernois Motorsports&Engineering

 受賞製品の「Differential Brace System for 2015-2027 Mustang w/ Differential Cooler Option」は、2015年~2027年型までのフォード「マスタング」を網羅するデフ補強ブレースキット。ハイパワー化が進むストリート&トラック走行で破損しやすいデフケースを保護しつつ、専用デフクーラー配管の増設にも対応する拡張性が高く評価された。

マスタング用のデフ補強ブレースキットがパフォーマンス・ストリート部門を受賞

パワースポーツ/SxS/ライフスタイル部門:All-Fit Automotive/RIMiQ

 受賞製品は「BLUE INFLATiQ by RIMiQ All-In-One Portable Tire Inflator - QwikFlow Technology」で、アウトドアおよびオフロード熱の高まりを受けて新設された注目のカテゴリー。独自技術「QwikFlowテクノロジー」を採用し、SxSやオフロード車の太いタイヤでも現場でスピーディに空気圧充填・調整が行なえるオールインワン型ポータブル電動インフレーターが初代王者に輝いた。

オールインワン型ポータブル電動インフレーター

ストリートロッド&カスタムカー部門:Jenvey Dynamics Limited

 受賞製品は「シボレー LS3 ダウンドラフト・スロットルキット(EFIインジェクション)」で、英国から参戦した同社スタッフは「1993年の創業以来、英国自社工場でのワンサイト製造にこだわり続けてきました。チーム全員の努力の結晶です」と喜びを語った。

英国から参戦し、受賞の喜びを語るJenvey Dynamics Limitedのスタッフ

タイヤ&関連製品部門:BARTEC TPMS

 受賞製品は「Sens-Rite」。20年以上にわたりTPMS(タイヤ空気圧監視システム)の技術開発を続けてきた同社が、待望の初受賞を果たした。

20年以上にわたりTPMSの技術開発を続けてきたBARTEC TPMSが待望の初受賞を果たした

ツール&イクイップメント部門:ADAS Depot

 受賞製品は「CarCal QuickCal 5.0」フルシステム&ターゲット。先進運転支援システム(ADAS)のキャリブレーション作業を現場で迅速化する統合ツール。

CarCal QuickCal 5.0

トラック&オフロード部門:FLAT PEAK

 受賞製品は、「ルーフトップテント用レベリングマウント Version 1.5」。傾斜地でもルーフトップテントを瞬時に水平に補正・設置できるオーバーランド必須のギア。

ルーフトップテント用レベリングマウント Version 1.5で受賞したFLAT PEAKのスタッフ

ホイール&関連製品部門:CTA TOOLS

 受賞製品は、「カーボンファイバースリーブ付きメタリック・ラグソケットセット(4ピース)」。高価なカスタムホイールのボルトホールを傷つけない保護スリーブ付き高強度ソケット。

カーボンファイバースリーブ付きメタリック・ラグソケットセット(4ピース)

 また、優れた企業活動を称える年間アワードとして、「SEMAマニュファクチャラー・オブ・ザ・イヤー」にクラッチメーカーの「Advanced Clutch Technology(ACT)」が、SEMAチャネルパートナー・オブ・ザ・イヤーには、老舗流通大手の「Motor State Distributing」が選出された。

SEMAマニュファクチャラー・オブ・ザ・イヤーを受賞したクラッチメーカー「Advanced Clutch Technology」
SEMAチャネルパートナー・オブ・ザ・イヤーを受賞した「MOTOR STATE DISTRIBUTING」

ジェイ・レノ氏×ハーレーダビッドソンCEO アーティ・スターズ氏 特別対談

 ブレックファストの最後は、SEMA殿堂(Hall of Fame)入りを果たした伝説的コメディアンであり自動車コレクターのジェイ・レノ(Jay Leno)氏と、ハーレーダビッドソンCEOのアーティ・スターズ(Artie Starrs)氏が登壇。

ステージ上で対談するハーレーダビッドソンCEO アーティ・スターズ氏(右)と、ジェイ・レノ氏(左)

 軽妙なジョークで会場を沸かせたレノ氏は、開口一番「私はアメリカのものづくり、そして労働組合(ユニオン)に支えられた製造業の大ファンです」と切り出し、「かつてボウリンググリーンのコルベット工場を訪れた際、工場から徒歩圏内に住む労働者たちが誇りを持って働き、フェラーリやマクラーレンの10分の1の価格で同等以上の性能を持つクルマを作っていた。アジアの安価な労働力に対抗するには、賢く緻密な製造技術しかない。ハーレーもまさにその誇りを体現している」と語りかけた。

 対してスターズCEOは、ペンシルベニア州ヨーク工場のエピソードを披露。「先週ヨーク工場で2027年モデルの最初の1台がラインオフした際、組み立てラインの全員がバイクを取り囲み、誇らしげに見つめていた。フロアを歩けば『祖父も父もここで働き、両親はここで出会った』と語る職人ばかり。自国に拠点を置き、自らの手でバイクを造る誇りこそが私たちの頂点にあります」と応えた。

手ごろな価格帯の新世代シングルモデル「スプリント440」の意義を語るスターズCEO

若者と中流階級へ向けた「スプリント440」の投入

 対談の核心は、現代のアメリカ社会が直面する格差問題と、若年層のバイク離れへの対策へと及んだ。レノ氏は「現在のアメリカを見ると、超富裕層向けの高級レストランかフードトラックばかりで、中流階級(ミドルクラス)が急速に消えつつある。自動車メーカーも高額な車両を少数に売って利益を出そうとしているが、真にアメリカを支えてきたのは『自分が工場で作った製品を、自分で買える給与を得る』健全な中流層です。ハーレーの平均新車価格が2万5000~2万8000ドルに達する中、学生ローンを抱えた若者にどうやってバイクを届けるのか?」と鋭く問いかけた。

 スターズCEOはこれに深く同意しつつ、ミラノショーで正式発表したばかりの新型単気筒モデル「スプリント440」の戦略的意義を語った。「スプリント440の価格は約6000ドル(約90万円)に設定しました。当社はライディングアカデミーで毎年約6万人の新規ライダーを育成していますが、免許を取得しても既存ラインアップが高額すぎて新車購入につながらないケースが増えていました。6000ドルのスプリントなら、月々の支払いは100~125ドル程度、スマートフォンの通信料金感覚で手に入る。信用スコア(クレジット)がまだ浅い25歳の若者でもハーレーの世界に飛び込めるよう、金融プログラムも含めてゼロから再構築しました」と明かした。

 かつての名車「スプリント250(アエルマッキ製)」を愛車に持つレノ氏が単気筒のフィーリングについて尋ねると、スターズCEOは「バランサーシャフトを備え、ミルウォーキーの街中から高速道路まで非常にスムーズに走れる。もちろんキックペダルはなくセルスターター式だけどね」と会場の笑いを誘った。

1936年式「ナックルヘッド」のヘリテージと電動化の将来展望を語り合う両氏

クラシックの魂と電動化(LiveWire)の共存

 168台以上の二輪・四輪コレクションを所有するレノ氏は、自身のお気に入りである1936年式「ナックルヘッド」についても言及。「36年にナックルが出た当時、4速ミッションやOHV、ハンドクラッチの採用にディーラーは『複雑すぎて客がついてこない』と猛反対したが、結局大ヒットした。ユーザーを過小評価してはならない」と語ると、スターズCEOも「現代の若いライダーたちも、まさにそのクラシックな佇まいやストーリーに憧れている。現在私が執務しているオフィスの2フロア下は、かつて創業者4人が並んでナックルヘッドを世に送り出した歴史的な場所だ。そのヘリテージのデザイン言語は、2027年・2028年の将来モデルにも色濃く受け継がれます」と予告した。

 また、電動バイクブランド「LiveWire(ライブワイヤー)」の未来について問われたスターズCEOは、「0-60mph加速2.8秒という圧倒的なパフォーマンスを持つ素晴らしい製品ですが、バッテリコストや航続距離の課題から市場はまだ黎明期にある。電動化が将来重要な選択肢になることは間違いないですが、それは技術進化の時間軸とともにあります。私たちはヘリテージである内燃機関の魅力と、未来のテクノロジーの双方を冷静に見据えていく必要があります」と語った。

 最後にレノ氏は、「アメリカ製であることを誇りに思い、健全なものづくりを続ける企業を見るのは本当に素晴らしい。スプリント440の成功を祈っている」とエールを送り、SEMAキックオフ・ブレックファストは幕を閉じた。