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日本財団、被災地で活躍したベンツ車両を日本自動車博物館へ寄贈
「ゼトロス」「ウニモグ」「Gクラス」の3台
(2013/8/26 13:52)
日本財団は8月11日、東日本大震災の災害支援を目的にダイムラーAGから無償提供された車両のうち、使用期限が切れた「メルセデス・ベンツ ゼトロス」「メルセデス・ベンツ ウニモグ」「メルセデス・ベンツ Gクラス」の3台を日本自動車博物館(石川県小松市)に寄贈した。日本自動車博物館では、11日より一般公開を開始した。
これらの車両は、東日本大震災発生後の支援物質の輸送、ガレキ搬出などのために、ダイムラーAGおよび、その日本法人である三菱ふそうトラック・バス、メルセデス・ベンツ日本が提供した50台のうちの3台。ダイムラーグループは、これらの車両を日本財団に提供することで被災地支援を実施。震災発生後1週間もしないうちに、車両50台のほか、200万ユーロ(当時のレートで2億5000万円)の復興資金援助を行った。
日本財団はこれらの車両を、岩手、宮城、福島の復興支援を行う自治体やNPO団体に貸し出し、効率的な支援車両の運用を図った。
これらの特殊車両は国内法規に沿っていないものもあったが、当時の政府と交渉することで2年間限定の国内使用許可を得ていた。今回、日本自動車博物館へ寄贈となったのは、2年間限定の使用許可が切れること、道路の復旧も進み特殊車両でなくとも通行できるようになったこと、後世に被災地での活躍の功績を残すことなどがあり、日本自動車博物館側で3台の車両を選択した。
寄贈式は8月11日に日本自動車博物館前で行われた。冒頭挨拶に立った日本財団 常務理事 佐藤英夫氏は「震災から1週間に満たないときに200万ユーロの支援、50台の車両提供をいただいた。この素早い決断により大きく勇気づけられた」と語り、震災発生直後の混乱した状況のなかでの支援決定にお礼を述べた。「日本自動車博物館に展示していただくことで、ダイムラーグループの友情、ドイツ国民の友情、被災地での功績を長く伝えていければと思っている。たくさんの方に見ていただいて、ときには被災地・被災者の方を思い出していただきたい」と結び、この3台のクルマが、震災を忘れず、未だ復興したとはいえない被災地や被災者の現状を思うきっかけになってほしいとの思いをにじませた。
ダイムラーグループを代表しては、三菱ふそうトラック・バス 相談役 江頭啓輔氏が挨拶。「我々にとって本当に忘れられない2011年3月11日の災害の後、ダイムラーグループは長い間日本で仕事をしているため、企業市民として何かお役に立つことを考えて実行しようとなった。日本におけるダイムラーグループの3社(メルセデス・ベンツ日本、三菱ふそうトラック・バス、メルセデス・ベンツ・ファイナンス日本)の経営陣がドイツ本社を交えて協議を行った。その結果、4月21日にドイツから20台空輸することができた。そこに三菱ふそうトラック・バスの30台を加えた50台を被災地ですぐ使っていただきたいため、日本財団に提供した」といい、船便で送ったら遅くなるためアントノフ飛行機をチャーターして運びその輸送費が6000万円ほどかかったことなど、当時のエピソードを明かした。
その後、日本自動車博物館 館長 前田智嗣氏へ、佐藤 日本財団常務理事と江頭 三菱ふそうトラック・バス 相談役から目録を贈呈。前田館長は、「寄贈されたクルマには関係者の思いが込められている。その思いを引き継いで展示させていただきたい。(展示車を)見ていただいた皆さんにいろいろ感じていただければ」と述べた。
日本自動車博物館は、日本でも最大級の自動車博物館で500台超の展示車両数を誇る。テーマごと、メーカーごとに数多くのクルマが集められており、見応えは十分だ。立地も、粟津温泉、山中温泉、片山津温泉、山代温泉の加賀四湯に近く、旅行のついでに立ち寄るのもよいだろう。ドイツから緊急に持ち込まれ、超法規的措置が行われることで被災地で活躍した車両を、ぜひ一度ご覧になっていただければと思う。