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NVIDIA、クレジットカードより小型な「Jetson TX1」を国内提供開始
ドローン等に搭載可能な消費電力10W以下の組み込みコンピュータ
(2016/3/2 23:08)
- 2016年3月1日 発表
NVIDIAは3月1日、組み込みコンピュータ「NVIDIA Jetson TX1」を国内導入すると発表した。用途は限定されたものではなく、例えば車載コンピュータとして画像認識や情報解釈などにも活用できる。提供開始は3月中旬で価格はオープンプライス。参考までに米国の価格は開発キットが599ドル、モジュールは1000個購入時に1個あたり299ドル。
Jetson TX1は15年前のスーパーコンピュータに匹敵するという1テラフロップスの処理能力があるとされ、10W以下の消費電力でパフォーマンスを発揮する。クレジットカードサイズに近い50×87mmのサイズのモジュールとコンパクトながら、NVIDIAのGPUのパワーを利用するCUDAをサポート。ディープラーニングをはじめ、非常に複雑な処理に対応する。
通常の組み込みコンピュータと異なる点は、パフォーマンスはもちろんだが、NVIDIAのGPU技術を利用するため、ディープラーニングの学習モデルを含め、PCやワークステーションで培ったテクノロジーを移行しやすい点。自動車に搭載すれば自動運転には不可欠な画像認識などさまざまな計算処理に活用が可能。小型であることと低い消費電力も特徴。
モジュールには以前のJetson TK1より1世代新しい最新のMaxwellアーキテクチャーのGPUを搭載して処理を行ない、プロセッサーはクアッドコアのARM Cortex-A57、4GBのDDR4メモリーとストレージには16GBのeMMCを搭載。インターフェイスとしてIEEE 802.11acのWi-Fi、Bluetooth、ギガビットイーサネットを内蔵する。
モジュールを中央に配置し、必要な放熱器や各種物理インターフェイスを備えた開発キットにはACアダプターも同梱され、開梱すればすぐに起動してソフトウェア開発ができるようになっている。USBやイーサネットのコネクター、メモリーカードスロットなどのほか、5メガピクセルカメラといったものまで装備している。
処理性能のほか、開発ツールが揃っていることも特徴
都内で行なわれた報道向け説明会では、NVIDIAで自律機器関連を担当するプロダクトマネージャーのジェシー・クレイトン氏がJetson TX1の説明を行なった。
同社は1年ほどに前に今回のJetson TX1の前世代となるJetson TK1を発表したが「OEM企業、研究者、メーカーのみなさまなど、グラフィックスを使った作業を10W以下でできる」と特徴を説明。さまざまなものに組み込まれていると紹介した。
Jetson TX1は、例えばドローンの自律飛行にも活用が可能。自律制御を実現するためには物を見る力が不可欠。対象物のトラッキング、場所の特定、自らの操縦、物を識別して分類などを正確に実現することが必要とした。
画像認識は複雑な計算であるためクラウドを使う方法もある。クレイトン氏は通信の遅延やデータ伝送容量の関係から「クラウドを介在させて情報を取ることは現実的に不可能」と指摘した。そのため、単体で計算処理を行なうことが望ましいが、ドローンに高性能PC相当のプロセッサーを搭載すると消費電力が多いことから重くなり、飛行パフォーマンスが低下する。そこで、GPUを使ってみてはどうかということでJetsonを開発したという。
クレイトン氏はJetson TX1は高い処理能力を持っているだけでなく、NVIDIA Digits DevBoxによる学習済みモデルを活用できるほか、フィードバックしてディープラーニングをさらに進めるということも可能。NVIDIAの共通したGPUコンピューティングのアーキテクチャーを採用していることも特徴だと説明した。
また、ハードウェアとしての性能のほか、多数の開発ツールを同時に提供していることも強調した。
自動運転技術を扱えるJetson TX1をドローンに活用
説明会には、産業用ドローンを開発するエンルートの開発部長のイェン・カイ氏が登壇し、Jetson TX1のドローンへの活用について解説した。カイ氏は「ドローンは現在、さまざまな分野で使われているが、操縦オペレータの負担が非常に大きい。それを解決するために自動運転車の技術をドローンに応用しようと考えている」と述べた。
しかし、「現在の自動運転車で使われているチップをドローンに持っていくのは発熱と消費電力の関係から難しい」とし、その解決方法の1つとして地上にグランドステーションを配置して通信制御する方法がある。しかし、それでも通信容量に問題があり、ビデオストリームと操縦用の信号が干渉すると、コントロールを失う危険がある。
そのため、Jetson TX1を使って自動操縦を検討。さらに監視作業では、カメラで不審車を捉えた場合、映像すべてを送るのではなく、Jetson TX1で自動的にナンバープレート部分だけを切り出して送信することもできる。データを最低限とすることで不安定な通信状態でも数十機のドローンを飛ばして監視活動ができるという。
カイ氏はまた、CUDAを採用している点にも触れ「CUDAを熟知した開発者はドローンの業界では6000人いる。この人たちはこのボードを待ち望んでいた。これからは、彼らがさまざまなものを作ってくれる」と歓迎の意向を示した。
なお、カイ氏は自動車向けにも使われる「SegNet」を使って画像処理のデモを行なった。空撮映像をリアルタイムで処理して対象物を分類した様子をスライドで紹介したほか、ドローンの実機に取り付けたカメラで映しだされた映像を処理する様子も展示された。
説明会では、Jetson TX1のデモも行なわれた。開発キットにそのままディスプレイやキーボードを接続して、Linuxを動かした上で、さまざまな画像認識を実際に行なった。通常であればワークステーションクラスのパワーが必要なリアルタイムな画像認識もスムーズに行なわれた。