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サンディスク、「スマート機能」を追加した車載用、産業用IoT向けフラッシュメモリ製品群

6つの要素で自動車メーカーのカスタマイズ需要に応える

2016年3月24日 開催

 米国のNAND型フラッシュメモリメーカーであるSanDiskの日本法人サンディスクは3月24日、同社の車載用および産業用IoT(Internet of Things、インターネット接続機能を持つ機器)向けのフラッシュメモリ製品群のラインアップを拡充。東京都内で記者会見を開催した。

 車載用製品の「SanDisk Automotive」は、動作温度範囲が-40度~85度、容量は8GB~64GB(SDHC/SDXC)、最大20MB/秒のシーケンシャル書き込み/読み取りというスペックになっている。SDカードの形状になっており、車載情報システムやV2V/V2I、ドライブレコーダーなどのアプリケーションを想定、従来製品との違いは「スマート機能」と呼ばれる新機能が実装されていることで、出荷は4月からの予定。

 サンディスク 車載&コネクテッドソリューション プロダクトマーケティングディレクターのラッセル・ルーベン氏は「スマート機能によりモニタリング機能などが追加されており、信頼性や寿命予測などが向上している」と述べ、自動車メーカーが柔軟にかつ高い信頼性でフラッシュストレージを活用できるようになると述べた。

今後はフラッシュメモリが自動車の重要な部品になるとの予想

サンディスク株式会社 車載&コネクテッドソリューション プロダクトマーケティングディレクター ラッセル・ルーベン氏

 サンディスクは、NAND型と呼ばれるフラッシュメモリを製造する専業メーカーで、NAND型フラッシュメモリ市場ではトップ3に入る大手メーカーだ。現在、NAND型フラッシュメモリはスマートフォン、PC、タブレットといったコンシューマやビジネス向けのコンピューティングデバイスのストレージとして一般的に採用されており、さらにサーバーの領域でもストレージとしての普及が進んでいる。

 ルーベン氏は「サンディスクの強みはNANDフラッシュメモリに関して多数の特許を持っていること。また、前工程と呼ばれるウェハーの製造から後工程と呼ばれるアッセンブリーまで垂直統合型で製造しているため、きめ細かく管理することができ、高い信頼性と品質を実現している」と述べ、NAND型フラッシュメモリでのサンディスクの長所をアピールした。

垂直統合でフラッシュメモリを製造していることがサンディスクの強み

 サンディスクのメイン工場は、東芝との合弁で日本の三重県四日市に建設された四日市工場で、ルーベン氏が「世界のNANDの40%はこの四日市工場で製造されている」と口にするほど大規模な工場となっている。また、サンディスクは四日市以外にも、上海、マレーシアに工場持っている。そうした各地の工場でフラッシュメモリを製造し、SDカードなどに組み立てて世界中に出荷するというのがサンディスクの垂直統合型のビジネスとなっている。

 多くの読者にとってサンディスクと言えば、SDカードやMicro SDカードのメーカーというイメージだろう。実際にサンディスクは、カードの中に入っているフラッシュメモリそのものを製造し、かつ最終製品となるSDカードまでを垂直統合型のビジネスモデルで製造、販売しているメーカーとなっている。

 また、ユーザーの目には付かないが、スマートフォンやタブレット、PCに内蔵されているフラッシュメモリも製造しており、ユーザーが気がつかなくても、今使っているPCやタブレットにサンディスク製のフラッシュメモリが入っているかもしれない。近年では、従来サンディスクの強みだったそうしたコンシューマ向けだけでなく、いわゆる「組み込み向けやIoT」と呼ばれる製品向けのフラッシュメモリビジネスにも取り組んでいるのだ。

 ルーベン氏は「今後IoTの普及がさらに進んでいくことで、これまで考えられなかったような機器もインターネットに接続されるようになる。2020年までに260億台のコネクテッドデバイスがインターネットに接続されると予想されており、データ量は44兆GBに達する。自動車でも、2020年までに販売される新車の75%がコネクテッドカーになると予想されており、今後さまざまなデータを生成するアプリケーションが増えていくと考えている」と述べ、多くのIT企業が予測しているとおり、IoT機器が爆発的に増えていくとデータ量が加速度的に増えていくだろうとした。

2020年までに新車販売される75%が「コネクテッドカー」になるとの予想

 その上で「現在のフラッシュメモリは、車載情報システムで地図データの格納場所として利用されている。しかし、今後はOSがより複雑になり、自動車に搭載されたセンサーが生成したデータなどをクラウドにアップロードするまでのキャッシュとしても活用されていく。さらに、将来のコネクテッドカーはOTA(Over The Air)でアップデートがかかるが、そのときのアップデート領域としても使われるし、元のバージョンを保存しておく領域が必要になる。4GBからそれこそ1TBまで、自動車にはさまざまなレベルでフラッシュメモリが必要になると考えている」と述べ、今後の自動車においてフラッシュメモリの重要性が増していくだろうとルーベン氏は強調した。

コネクテッドカーではフラッシュメモリのニーズがさらに増していく

スマート機能を追加することで高い信頼性と利便性を得ることができる

 ルーベン氏によれば、サンディスクはすでに車載グレードのSDカードとなるSanDisk Automotiveを出荷済みだという。-40度~85度の動作温度に対応しているほか、自動車向けで必要になる認証のAEC-Q100を取得しているなど自動車向けの仕様になっている。なお、容量は8GB~64GBで、速度は最大20MB/秒(シーケンシャル、読み込み/書き込み)。今回発表された新製品はそうした従来製品の特徴に加えて、同社が「スマート機能」と呼ぶ新機能に対応している。

新製品は従来からあるSanDisk Automotiveに追加される形になる

 ルーベン氏は「新しいスマート機能により、カードの状態を自動で確認したり、瞬断耐性を上げたり、自動車メーカーがカスタマイズできる機能などを用意している。これにより、自動車メーカーは高い信頼性や利便性を得ることができる」と述べ、スマート機能を具体的に説明。以下のような機能が用意されているという。

スマート機能では6つの要素を追加

(1)ヘルスステータス
カードの状態を通知する機能で寿命をパーセントで表示できる。これにより、寿命ギリギリまで効率よく使うことができる

(2)電源瞬断耐性
書き込み中の電源瞬断によるデータ破損を防ぐ専用アルゴリズム。電源が不安定な車載機で利用する場合でも、データのロスを防ぐ

(3)リードリフレッシュ
フラッシュメモリの特定の領域を集中して読み込んでいる場合でも、カード側で自動でリフレッシュをかけて破損に至らないようにする。寿命を最大化できる

(4)プログラム可能なストリング
自動車メーカーなどが32バイトの文字列をカードに書き込むことができる。これにより、オリジナルなSDカード以外を車載機で使わせないようにすることなどが可能

(5)ホストロック
ホスト対応パスワードでカードのデータをセキュアに保護する。カードを特定の車載機だけで読めるようにできる

(6)安全なファームウェア更新
従来はサンディスクの工場でしかできなかったカードのファームウェア更新が自動車メーカーなどの工場でも可能になる

SanDiskが発表したSanDisk Automotive SDカードのスペック
SanDisk Automotive SDカードの64GB

 このスマート機能は、同時に発表された産業用IoT向けの製品となるSanDisk Industrialシリーズにも採用されており、SanDisk Industrial SDカード(8GB~64GB、-25度~85度、SDカード)、SanDisk Industrial XT SDカード(8GB~64GB、-45度~85度、SDカード)、SanDisk Industrial microSDカード(32GB~64GB、-25度~85度、microSDカード)の3モデルが用意されているという。

SanDisk Industrial SDカードとSanDisk Industrial XT SDカードのスペック
SanDisk Industrial SDカードとSanDisk Industrial XT SDカード
SanDisk Industrial microSDカードのスペック
SanDisk Industrial microSDカード

 なお、すべての製品は4月の出荷を予定しており、価格などは非公表。いずれも同社代理店などを通じて販売される予定ということだった。

会場に展示されていた産業用SanDisk Industrial SDカードの応用例
ルーベン氏のプレゼンテーション資料

(笠原一輝)