試乗インプレッション
ボルボの特別仕様車「XC90 D5 R-Design」、悪天候でも安心して走れた“3つの理由”
2020年3月19日 09:00
筆者は大型SUVのある生活に憧れている。心豊かになれるからだ。
2014年に発表された「XC90」の佇まいは内外ともに落ち着いていて、このクラスの大型SUVに多いラギット感は薄められた。ボディラインはSUVの王道でスクエアな面構成だから、そばに立てばその大きさを意識する。しかし、不思議とタフでマッチョなイメージはなく、ボルボの他シリーズと同じくエレガンスな印象が先にくる。これこそXC90の大きな存在意義ではないか。
今回、ボルボSUVラインアップのフラグシップであるXC90のディーゼルエンジン搭載車に、スポーティな内外装がおごられた「D5 R-Design」が特別仕様車として加わった。充実装備は後半に紹介するとして、まずはロードインプレッションを述べてみたい。
パワートレーンはXC90 D5シリーズと同一で、直列4気筒DOHC 2.0リッター直噴ディーゼルターボエンジンに8速ATの組み合わせ。試乗車はオプション装備となるエアサスペンション「電子制御4輪エアサスペンション/ドライビングモード選択式FOUR-Cアクティブパフォーマンスシャシー」を備えているが、シャシー設定そのものは他グレードと同じ「ツーリングシャシー」だ。
試乗は連続する勾配と急なカーブが続く箱根路。天候はご覧のようにわるく、時折濃い霧に悩まされた。分かりやすく運転環境としてはわるい状況ながら、終始落ち着いてステアリングを握ることができた。
その理由は大きく3つ。視界/明るい車内/走行性能にある。まず視界。4950×1960×1760mm(全長×全幅×全高)の堂々としたボディサイズなので狭い路での離合では苦労するが、見切りがよいこと、シート調整幅が広いこと、ドアミラーの鏡面が大きいことから視界は広く、そして360度カメラの手助けもありすれ違いなどでの幅寄せはしやすい。
次に明るい車内。R-Design初の新色「ブロンド」(オプション装備)のシートと、プラス・パッケージに含まれるガラス面積の大きなパノラマガラスサンルーフ(ともにオプション装備)によって、あいにくの天気でも気分は晴れやかだ。こうして心に余裕が生まれるので運転操作もおのずと穏やかになる。
そして走行性能。235PS/480Nmを発揮するターボディーゼルエンジンは、車両重量2110kgのボディを軽やかに引っ張る。もっとも、重量級ボディに235PSなので、ガソリンモデルの「T6」やプラグインハイブリッドモデルの「T8」のような速さはない。が、1750-2250rpmにかけて480Nmの大きなトルク値を発揮することから、多人数乗車であってもギヤ段をシフトダウンさせることなく、優雅に芦ノ湖スカイラインを上りきる。
D5ディーゼルエンジンのよいところは、約190PSを出力する3000rpmあたりでもトルクの落ち込みが少なく、未だ450Nm以上のトルク値を発揮している点。なので、走行中に勾配がさらに急になってきても車速を落とすことなく、状況によっては加速も思いのままだ。さらに加速が必要ならばパドルシフトでダウンシフトさせれば最高出力を発揮する4000rpm付近でも実用的な加速を示してくれる。
カーブも得意だ。4気筒エンジンであることに加え、ドライビングモード選択式FOUR-Cアクティブパフォーマンスシャシーを装着しているため、鼻先はステアリング操作とともにスッと動く。ここは車両重量を感じさせない軽やかな部分。それでいてエアサスペンションならではのスカイフック的なまろやかな乗り味も味わえる。
先だって試乗したメルセデス・ベンツのSUVで、XC90とボディサイズがほぼ同じ「GLE 400 d 4MATIC スポーツ」は6気筒エンジンを搭載していたこと、サスペンションの設定がオフロード寄りであったことから、XC90 D5 R-Designのような軽さはなかった。このあたりの評価はどちらがよい、わるいではなく、自身とSUVの付き合い方で決めるとよいだろう。
エクステリアはスポーティに、インテリアは上品に
続いてXC90 D5のR-Designの特別装備をみていく。外観上は、専用フロントグリル、前後専用バンパー、専用グロッシーブラックパーツ(サイドウィンドウトリム、ドアミラーカバー、ルーフレール、前後バンパートリム)、専用アルミホイール(9.0J×22インチの5ダブルスポークダイヤモンドカット/ブラックでタイヤは275/35R22を装着)で差別化。
インテリアでは電動ランバーサポート、クッションエクステンション付専用スポーツシート(Nuback/本革コンビネーションが標準装備)、専用カーボンファイバー・パネル、専用本革巻のシルクメタルステアリングホイールとシフトノブ、パドルシフト、専用アルミニウム・スポーツペダル、専用アルミニウム・スカッフプレート(イルミネーション付)、専用フロアマットが特別に装備される。
さらにオプション装備として、プラス・パッケージ(チルトアップ機構付電動パノラマガラスサンルーフ、ステアリングホイールヒーター、後席2列目シートヒーター)が23万円、Bowers&Wilkinsプレミアムサウンドオーディオシステム(1400W、19スピーカー、サブウーファー付)が46万円、電子制御4輪エアサスペンション/ドライビングモード選択式FOUR-C アクティブパフォーマンスシャシーが31万円、ファインナッパレザー/パーフォレーテッドレザー・コンビネーションシート(チャコール/ブロンド、試乗車は新色のブロンドを装着)が13万円がそれぞれ用意される。
また、XC90の2020年モデル全車に、City Safety ステアリング・サポート(衝突回避支援機能)、オートブレーキ機能付CTA、タイヤ空気圧モニタリングシステム、パークアシストパイロット動作中のオートブレーキが装備されたほか、「パイロット・アシスト」作動中にステアリングへの運転支援が一時解除された場合に、ステアリングホイールの微振動により一時解除を知らせる機能が加わっている。
特別仕様車であるXC90 D5 R-Designの車両価格は959万円。XC90のディーゼルエンジンラインアップのうち、ボトムグレードのD5 AWD Momentum(894万円)とトップグレードのD5 AWD Inscription(979万円)の間に収まる。もしこの先、筆者がXC90 D5のオーナーになるチャンスが巡ってくれば、間違いなくR-Designを選択する。内外装の専用装備が魅力的だからだ。中でもオプション装備となるファインナッパレザー/パーフォレーテッドレザー・コンビネーションシートで、上品な白色に近いR-Design初の新色「ブロンド」が選べることも、R-Designを選択する大きな理由だ。なお、ボルボ・カー・ジャパン広報部によるとR-Designは特別仕様車ながら台数限定ではないという。とはいえ、「受注期間などには何らかの制約が付く可能性も」とのことなので、気になる方はディーラーで確認いただきたい。