試乗インプレッション
ボルボ公認のロムチューニング「ポールスター・パフォーマンス・ソフトウェア」装着車を体験してきた
価格は18万8000円。その費用対効果はどうか?
2019年7月30日 10:25
「ポールスター・パフォーマンス・ソフトウェア」とは?
ボルボがディーラーで行なっているメーカー公認のロムチューニング「ポールスター・パフォーマンス・ソフトウェア」を体感した。これはボルボのハイパフォーマンスブランドであるポールスターが行なっているもので、レースで培ったポールスターのテクノロジーを、ボルボの市販車へ向けていかに展開するかを考えたプログラムだ。
ちなみにボルボのレース活動といえば、ポールスター・シアンレーシングが2017年にWTCC(世界ツーリングカー選手権)でチャンピオンを獲得。そこで得たエッセンスを提供しようということだろう。とはいえ、チューニングと聞けばやや非合法な香りもするところだが、車検対応で排出ガスも燃費も悪化しないというからひと安心。点検や車検のついでにリクエストすれば、数十分でプログラム変更が可能だという手軽さである。価格は18万8000円。その費用対効果はどうなのかが気になるところだ。
ポールスター・パフォーマンス・ソフトウェアの内容は多岐に渡り、エンジン、ギヤボックス、駆動制御などにも及ぶ。そのプログラムが行なう主な内容は、スロットルレスポンスの改善、ギヤシフトスピードの向上、オフスロットルレスポンス、そしてエンジンパフォーマンスの主に低中速域におけるトルク特性まで引き上げている。さらに4WDモデルにおいてはリアホイールへのトルク配分を増やすことで、発進時のトラクションやコーナーターンイン時のスムーズな挙動、そしてコントロール性なども向上させた(Polestar Engineeredモード選択時、ESC OFFモード時)。
まるでクルマが軽量化されたかのような感覚
今回はまずV60 クロスカントリー T5 AWDでそれを試す。実はこの試乗を行なう前、別件で1週間ほど試乗していたクルマがベースなだけに、筆者にとっては慣れ親しんだ1台。ポールスター・パフォーマンス・ソフトウェアで生まれ変わったこの個体はどんな走りを展開してくれるのだろうか?
さっそく走行モードをPolestar Engineeredに切り替えて走ってみる。すると、発進加速からしてかなりダイレクトにスッと前に出る感覚に変身していた。スロットルのツキがよく、シフトアップ時のショックもやや増えながら加速を続けていく。ノーマルにもDynamicモードが存在するが、それとはひと味違うイメージだ。中間トルクが350Nmから400Nmへと引き上げられていることもあるのだろう。まるでクルマが軽量化されたかのように思えるグイグイ前に出る感覚は、いかにもチューニングロムといった感覚だ。ノーマルが持つ優雅で滑らかな感覚とは明らかに違っている。ちなみに0-100km/h加速は6.8秒から6.7秒へとアップ。タイム差はわずかだが、乗り味は別物と言っていい。
一方でワインディングロードに突入してからの乗り味もかなりの違いを感じた。V60 クロスカントリー T5 AWDは、やや背が高くコーナリングをそれほど得意とするタイプのクルマではないのだが、コーナーへのアプローチがとにかくしやすくなっていたのだ。駆動制御を改めたことがここまで効くとは……。手の内に収めやすくなったその感覚は、足まわりやタイヤ&ホイールを変更したかのように思えるほど。そこに先述したスロットルのツキが加わるのだから自由自在に操れる。後に確認のためノーマルモデルを同じ環境で走らせたが、その差は一目瞭然だった。
その後、XC90 D5 AWDのポールスター・パフォーマンス・ソフトウェア仕様にも乗った。こちらには20秒間限定で行なわれるオーバーブースト機能が加わっているところが特徴的。プログラムを書き換えるだけで最高出力は235HPから240HP、トルクは480Nmから500Nmになるのだが、オーバーブースト機能が作動するとパワーは255HP、トルクは520Nmまで引き上げられる。おかげで2tを超える巨体は豪快に発進加速することが可能となり、まさにストレスフリーに進化。それ以外はV60 Cross Country T5 AWDで得られた印象と同じ環境が整えられていた。
このようにエンジンパフォーマンスだけに終わらず、シャシー制御も改めたその仕上がりは、さすがは安全を第一に考えるボルボならではの世界観といっていい。単に速くするだけで終わらないところが好感触だ。メーカー公認で、ディーラーで行なえる気軽さと聞けば、効果は薄いのではないかと想像していたが、そんな心配は吹き飛ぶほどの奥深い仕上がりが存在していた。