試乗インプレッション
輸出用カムリがベースのコンプリートカー「TOM'S C35」、その実力はいかに?
優雅な乗り味と滑らかで爽快な加速感は、ハイブリッドでは得られない世界観
2019年7月26日 00:00
日本には存在しない「カムリ」のV6モデル
トヨタ系のレーシングチームとしてさまざまなカテゴリーで活躍しているトムスが、コンプリートカーを発売した。トムスではトヨタ系のクルマに対して数々のチューニングアイテムを発売しているが、クルマ1台をトータルプロデュースするのは久々のこと。今回は日本には存在しない「カムリ」のV6モデルが素材となる。
アメリカから輸入された「カムリ XSE V6」をベースにした「TOM’S C35」と名付けられたそれは、当然ながら左ハンドル仕様。パワーユニットは日本で販売される2.5リッター+モーターのハイブリッドとは違い、3.5リッターの「2GR-FKS」型エンジンが奢られている。最高出力は301PS/6600rpm、最大トルクは362Nm/4700rpmという豊かなスペックを誇る。滑らかさもトルクフルな感覚も国内仕様とはまるで違う世界が期待できる。ただし、それだけでは面白くないとトムスはライトチューニングを施す。エアクリーナーやマフラー、そしてスロットルコントローラーも装備する。
一方で、エクステリアではSUPER GTマシンで培った最新の空力理論を盛り込む形状のエアロパーツを装着。フロントバンパースポイラーはフロントからフロア下に流入する空気の集束と、フロントのホイールアーチに流入する乱気流のボディからの剥離、そしてカナード形状によるダウンフォースを狙っている。サイドディフューザーやリアアンダーサイドフィンは、ボディサイドからフロア下に流入する空気を遮断することを考えていて、結果として安定感のあるスタイルを手にしている。オプションとなる19インチのオリジナルホイールとのマッチングもなかなかだ。
インテリアにはカーボンが配されたオリジナルのステアリングをオプション装備。マイル表示とキロ表示が併記されるメーターを見れば、いかにもアメリカ仕様といった感覚が得られる。ゆったりとした室内空間は相変わらずだが、それが左ハンドルになっただけでも気分は高まってくる。果たして走りはどうか?
日本には存在しないという希少性
タウンスピードで走り始めると、その時点からトルクフルで豪快な感覚が見えてくる。余裕のあるその走りはなかなかで、上級サルーンとしての風格が際立っている。そこからアクセルを踏み込んでいけばヌケのよい甲高いサウンドがマフラーから耳へと伝わってくる。イヤミなく爽快なサウンドと、アクセルに対して即座にレスポンスしてくるところは、ハイブリッドでは得られない世界観。1620kgの車体をグイグイと加速させていく。
このあたりは高速道路ではかなり心地よく、TNGA(Toyota New Global Architecture)のプラットフォームと相まってクルージングは快適そのものだ。思わずパドルを弾いてシフトダウンしたくなる、それほどにマルチシリンダー+マフラー交換の効果は上々なのだ。
試乗車にはオプションのローダウンスプリングとブレーキパッドも装備されていたが、それらがもたらすスポーティな感覚も面白い。ブレーキは踏力が求めるだけ止まってくれるイメージ。高速道路ではエアロ効果との相乗効果で、無駄な動きをすることなくフラットに突き進む。荒れた路面に差しかかると、ややバンプラバーのタッチが早いところがあり、たまにガツンとやられるが、路面がわるくなければ一体感ある走りは納得。けれども、むやみに引き締められることなく、ユッタリとした乗り味を生み出すショックアブソーバーのセッティングは、さすがはアメリカ仕様といったところかもしれない。
すなわち、このクルマには決して走りを際立たせようとか、タイムを追ったようなスポーティさは存在しない。けれども、優雅な乗り味と滑らかで爽快な加速感を味わえるこのTOM'S C35の走りは、余裕のあるオトナにピッタリかもしれない。そして、なんといっても日本には存在しないという希少性が魅力な1台。他とは違うクルマがほしいが、目立つのはイヤ。そんな人にオススメしたいコンプリートモデルだった。