試乗インプレッション

ディーゼルとモーターのいいとこ取り。メルセデス・ベンツ「E 350 de」の滑らかな走りを堪能

システム総合306PS/700Nmで2t超えの車重でも優れた瞬発力

日本初のクリーンディーゼル・プラグインハイブリッド

 メルセデス・ベンツのセダンの中でも、もっともバリエーションの豊富なEクラスに、日本初のクリーンディーゼルとプラグインハイブリッドを組み合わせた乗用車となる「E 350 de アバンギャルド スポーツ(以下、E 350 de)」が、ガソリン・プラグインハイブリッドの「E 350 e アバンギャルド スポーツ」とともにラインアップに加わった。

 試乗したE 350 deに搭載される最新の直列4気筒2.0リッタークリーンディーゼルターボエンジンは最高出力194PS、最大トルク400Nm、電気モーターは最高出力122PS、最大トルク440Nmを発生し、システム総合では最高出力306PS、最大トルク700Nmと、かなり強力なスペックを誇る。

 ダイムラー社の完全子会社である「Deutsche ACCUMOTIVE」が生産する13.5kWhものリチウムイオンバッテリーを搭載しており、モーターのみでの走行可能離はWLTPでの欧州参考値で最長50kmにもおよぶ。これにより市街地の近距離ではEVのようにモーターのみで走ることができ、遠距離の車速が高めのドライブではディーゼルで効率よく走行するような使い方が可能となる。

日本初となるクリーンディーゼルとプラグインハイブリッドを組み合わせたパワートレーンを搭載する「E 350 de アバンギャルド スポーツ」。ボディサイズは4923×1852×1475mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2939mm(数値はすべて欧州参考値)
最高出力143kW(194PS)/3800rpm、最大トルク400Nm(40.8kgfm)/1600-2800rpmを発生する直列4気筒DOHC 2.0リッタークリーンディーゼルターボ「OM654」型エンジンを搭載。モーターは最高出力90kW(122PS)、最大トルク440Nm(44.9kgfm)を発生し、システム総合最高出力は225kW(306PS)、最大トルク700Nm(71.4kgfm)。トランスミッションには9速ATを搭載し、後輪を駆動する
右リアフェンダーにディーゼルの給油口と「AdBlue」の補給口を配置
リアバンパー右側には充電口を配置

 内外装にはひと目見て分かるほどベース車との大きな差はないが、インパネのディスプレイには専用の表示が加わるほか、前出のリチウムイオンバッテリーを搭載するためトランクがだいぶ狭くなっている点が異なる。

エクステリアはベースモデルの「E 350 アバンギャルドスポーツ」とほぼ変わらないデザイン。異なるのはフェンダーの「EQ POWER」、トランクリッドの「E 350 de」のエンブレムが装着されること。足下の18インチ5スポークAMGアルミホイールはE 350 deのみ標準となる。組み合わせるタイヤはピレリ「CINTURATO P7」(245/45R18)
E 350 deのインパネ
インテリアもE 350 アバンギャルドスポーツに準じた装備となる
メーターは「プログレッシブ」「スポーティ」「クラシック」の3種類から好みに応じて選択可能
本革シート(ナッパレザー/ステッチ入り)を標準装備
パノラミックスライディングルーフはオプション
トランクはリチウムイオン電池にスペースを割いている

力強く滑らかな走り

 ハイブリッドモードのままComfortモードで走り出すと、モーターのみでスルスルと滑らかに、それでいて力強く走りだす感覚はEVそのもの。多少踏み増してもバッテリーが残っていればエンジンが始動することはなく、かなり高い車速までそのまま粘る。アクセルを強く踏み増すとエンジンが始動し、スペックのとおり強力に加速するさまはなかなかインパクトがある。

 車検証によると前軸重が1030kg、後軸重が1070kgとリアのほうが重く、車両重量は2100kgにも達しているわけだが、さすがはシステムで最高出力306PS、最大トルク700Nmを発揮するだけあって、その瞬発力はかなりのものだ。

 走行モードの「DYNAMIC SELECT」は、エンジン始動時にはバランスよく効率にも優れるComfortモードから自動的にスタートし、ECOモードやSportモード、Sport+モードを選択すると、それに合わせてアクセル曲線やシフトポイントのほか、ESPやステアリングの制御、アイドリングストップの有無なども連動して変化する。各項目を個別に設定できるIndividualモードもある。

 この最新のクリーンディーゼルがいかに静かで振動が小さいかは既出モデルでもすでに体験済みだが、このクルマもやはり同様で、ごく普通に流していると
エンジンがディーゼルであることを忘れてしまいそう。しかも頻繁にエンジンが停止し、再始動の際に煩わしい思いをすることもないので、ドライブフィールはいたってスムーズで心地がよい。

 E 350 deには2つの機能を持つ「インテリジェントアクセルペダル」が搭載されているのも特徴だ。「プレッシャポイント機能」は、EV走行モードの際に“これ以上アクセルを踏むとエンジンがかかる”というモーター走行の限界点でアクセルペダルの抵抗を増やしてドライバーに知らせる機能で、これにより無駄なエネルギーの消費を抑えることができる。もう1つの「ダブルパルス機能」は、ACCと同様にレーダーで先行車両との車間距離と速度差を計測し、不要な加速操作を行なっている場合、アクセルペダルに2回のノックパルスを発生させて知らせ、無駄なアクセルワークを防ぐというもので、より効率的にドライブすることができる。

このクルマならではのサービスも

 普通のEクラスのつもりでドライブしていると、やはり車両重量が2tを超えるがゆえ、ブレーキング時にはさすがに重さが感じられ、回生ブレーキによるペダルフィールにも若干のクセはあるものの、加速力は前で述べたとおりで、ハンドリングにも重々しさを感じることはない。そのあたりの操縦感覚は巧くまとめられている。

 欧州ではディーゼルに逆風が吹く中、メルセデスはディーゼルの可能性を拡げようと、こうした新しいことにもチャレンジしている。その完成度も高く、ユーザーの期待にも十分に応えるものであろうことがうかがえた。

 また、メルセデスではプラグインハイブリッド車専用のサービスとして、スマホアプリから遠隔操作で車両のエアコンを乗車前に始動させて車内を快適にしておける「プリエントリークライメートコントロール」という機能を用意している。これを新車から3年間は無料で利用可能で、その後は10年まで有料で延長もできる。さらに、充電用ウォールユニット無償提供を希望したユーザーには、6.0kW(30A)対応の交流普通充電器本体が無償提供されるほか、設置にかかる費用負担を軽減するため10万円のサポートが実施されることもお伝えしておこう。

岡本幸一郎

1968年 富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の記者を経てフリーランスのモータージャーナリストとして独立。国籍も大小もカテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもさまざまなタイプの25台の愛車を乗り継いできた。それらの経験とノウハウを活かし、またユーザー目線に立った視点を大切に、できるだけ読者の方々にとって参考になる有益な情報を提供することを身上としている。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:安田 剛