試乗レポート

ランドローバー「ディフェンダー 110」3.0リッター直6ディーゼルターボモデルの印象は?

最上級の“全部乗せ”モデルを味わう

 ランドローバーの伝統と性能に裏打ちされたブランドバリューと、時代を捉えたミニマルかつ愛らしいデザインで、瞬く間にインポートSUVの人気車種となった新型ディフェンダー。

 今回はそのなかでも最もプレミアムなモデルとなる、3.0リッター直列6気筒ディーゼルターボを搭載した「ディフェンダー 110 MODEL X 300D」に試乗することができた。

 言ってしまえばこれは、欲望の「全部乗せ」グレードだ。

5ドアモデルの「ディフェンダー 110」の中でも最上級グレードとなる「X D300」。価格は1171万円。試乗車のボディカラーは「サントリーニブラック」
ボディサイズは4945×1995×1970mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは3020mm。車両重量は2420kg。20インチ“スタイル5095”5スプリットスポーク(グロスダークグレイコントラストダイヤモンドターンドフィニッシュ)に装着するのは、255/60R20サイズのグッドイヤー「ラングラー オールテレーン アドベンチャー」

 いま一番イケてるディフェンダー、買うなら便利な5ドアがマストでしょ。そしてこのでっかいボディを走らせるなら、踏めば応えるエンジンが必用だ。なおかつそれがディーゼルだったら、燃費もよいし今っぽい。

「いいじゃない、それください」。

 そんな風にこの高額モデル(Xグレードで1171万円)をさらりと選ぶ、選べる人が乗る1台だと、筆者は感じた。

 もちろんディフェンダーは新型となっても一族いちの硬派なオフローダーであり、ここにトルキーなディーゼルユニットを選ぶのは、様式美としても正しい。

 しかし3.0リッター直列6気筒ディーゼルターボは、レザー仕様のシートやインパネ、ウッディなセンターコンソールトリムを持つインテリアの質感にふさわしく、ワイルドというよりは上質さを大いに発揮して、そのイケイケ感あふれる5ドアボディを走らせたのである。

広い車内は最新インフォティメントシステムの「Pivi Pro」やグラフィカルなメーターといった先進的なアイテムと、グリップを思わせる水平基調のインパネが醸し出す道具感が絶妙に調和したインテリア。各所に用いられたウッドとレザーが高級感を演出している
ウィンザーレザー&スチールカットプレミアムテキスタイルのシート。3列目を追加して5+2シートにすることもできる
最高出力221kW(300PS)/4000rpm、最大トルク650Nm/1500-2500rpmを発生する直列6気筒DOHC 3.0リッターターボエンジンに、最高出力18kW/1万rpm、最大トルク55Nm/1500rpmを発生する48Vモーターを組み合わせるマイルドハイブリッドシステムを搭載。トランスミッションには8速ATを採用する。WLTCモード燃費は9.9km/L

 そんなプレミアム感の演出に一役買っているのは、48Vマイルドハイブリッドの存在だろうか。“だろうか?”などと口ごもったのは、それが極めて黒子的な存在だからだ。ベルトドライブのスタータージェネレーター(BiSG)は、その名の通りのマイルドなモーターアシストしかしない。だがしかし、これがじわりと効いている。

 停車状態からそっとアクセルを踏み込んだときの、出足の滑らかさ。クルージング時、およそ1500rpm程度の領域から右足の親指だけに力を込めると、“グッ”と前に出る確かさ。

 そのどこからどこまでがモーターアシストの領域なのかを測るのは難しい。そもそもが3.0リッターもの排気量を持つ直列6気筒ディーゼルターボだけに、その出力特性もトルキーかつシルキーなはず。

 しかしその上で、さらにわずかなターボラグすらも感じさせず、滑らかに走るマナーの良さには、マイルドハイブリッドの効果が出ているように感じられた。今回は土砂降りの状況だったことや、路面も適度に荒れたワインディングロードを走ったということもあるが、室内にはディーゼルエンジンの振動や、ノック音も入ってこない。電動化と内燃機関の協調は、ディーゼルエンジンに新たな上質感を与えているのだと思う。

 そして、ここからさらにアクセルを踏み込んでいくと、その滑らかさがいつしか力強さに変わって行く。レブリミットこそ5000rpmと低いが、6気筒エンジンの回転フィールには根詰まり感がなく、トップエンド付近まで実にきれいに回っていく。

 絶対的なパワーは300PSと、2420kgの車重に対してはそれほど高くない。しかし650Nmの最大トルクを8速ATのギアリングが巧みにつないでいくことで、心地良くスピードを上げていくことができる。

 ステアリングの応答性は、本格オフローダーのキャラクターよろしく穏やか。5ドアのロングホイルベースも相まってその動きは終始落ち着いているが、高速コーナーではエアサスがロールをきちんと抑え、最後まで高い安定感を保ったまま舵を効かせてくれる。

 コーナーの出口に向かって加速体制に入っても4輪にはトルクがバランスよく配分され、前に前にとクルマが進む。またそのON/OFFに対しても制御が緻密で、コーナリング中にギクシャクした動きが一切見られない。

 その乗り心地の良さも含め、車両の動きに応答遅れが起こらないのはモノコックボディの恩恵だろう。総じてこの巨体からは想像できないほど、その走りはまとまっていた。

 これなら2.0リッターターボで感じた歯がゆさもなく、5ドアボディを使いこなすことができるだろう。それどころか直接のライバルとなるだろうGクラス「350d」を思い起こしても、その出力特性は少しパワフルに感じられ、乗り味は洗練されている気がする。もちろんGクラスの魅力はラダーフレームの踏襲にあるが、マニア以外は「外見はワイルド、中身はジェントル」を求めるのではないだろうか。そういう意味ではジープ「ラングラー」などよりも、はるかに乗用車的である。

 だが個人的には、こうした上質感がどこか、ディフェンダーにはトゥ・マッチな印象を持ったのも事実である。直列6気筒ディーゼル・ターボを積んだ5ドアモデルは、確かにいい。ランドローバーのエレガンスを求めるにしてもレンジローバーはまた一段高額だから、実はコスパに優れた最適解だとも言える。

 しかしディフェンダーは、やっぱりラフに使い込んでこそ。シートや内装が汚れたらタオルでざっくりと吹き上げたり、道具として使い倒してこそ、そのカッコ良さが発揮できるのではないか? と思う。

 そういう意味では3ドアボディにこの直列6気筒が乗ったら面白そうだが、ともあれ庶民派の筆者にはディフェンダー90がベストチョイスだと思えた。

 ロレックスよりもチューダーを、傷も気にせず使い込むようなイメージで、乗りこなしていけたら最高にクールだ。

山田弘樹

1971年6月30日 東京都出身
A.J.A.J.(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。

自動車雑誌「Tipo」の副編集長を経てフリーランスに。
編集部在籍時代に参戦した「VW GTi CUP」からレース活動も始め、各種ワンメイクレースを経てスーパーFJ、スーパー耐久にも参戦。この経験を活かし、モータージャーナリストとして執筆活動中。またジャーナリスト活動と並行してSUPER GTなどのレースレポートや、ドライビングスクールでの講師活動も行なう。

Photo:中野英幸