試乗レポート

トヨタ、新型「アクア」 2600mmのホイールベースがもたらす走りと室内空間

2代目となった新型アクア

使いやすさが大幅にアップした2代目アクア

 初代アクアは2011年に2代目プリウスのハイブリッドシステムを改良し、燃費を追求したコンパクトカーとしてデビューした。東日本大震災からの復興の象徴という意義もあり、東北のトヨタ自動車東日本が生産を担当した。

 アクアの空気に逆らわないパッケージングとボディデザインは新鮮で、ハンドリングもグリップ感の薄い日本のコンパクトカーの中にあって、燃費とクルマを運転する楽しさを両立させた存在だった。そして満を持して2代目に受け継がれた。

 新しいアクアはヤリスから採用されたTNGAのコンパクトサイズを担当するGA-Bプラットフォームを使いながら、ホイールベースは2600mmと従来のプラットフォームから50mm長くなった。その分は居住空間に充てられる。

 エンジンはこれまでの1.5リッター4気筒からヤリス同様の新世代ダイナミックフォースエンジン、最大熱効率40%以上を達成したM15Aとなった。1.5リッター3気筒である。80.5×97.6mmのロングストロークエンジンは120Nmのトルクを3800~4800rpmで出し、低回転から力を出す。燃費重視のエンジンだが、日常走行では使いやすい出力特性で、ハイブリッドとの相性もよい。

M15A型エンジン。ハイブリッド用はアトキンソンサイクル領域を積極的に使い、モーターでのアシストも行なうためバランスシャフトを排した仕様となる

 ハイブリッドシステムは使い慣れたTHS-II。バッテリにはニッケル水素を使うが新型ではバイポーラ型を採用した。バイポーラ型の特徴は、従来のニッケル水素バッテリがセルごとに独立して電力をいったん取り出していたのに対し、バイポーラ型では、セルの電極を次のセルと直接接続することで大電流を一気に流すことができ、コンパクト化にもなっている。

 ヤリスハイブリッドではリチウムイオンバッテリを使っているが、実はアクアでもカンパニーカーとして使われることの多いBグレードでは軽量、小型のリチウムイオンバッテリを採用している。バッテリ容量としてはバイオポーラ型が5Ahに対してリチウムイオン型は4.3Ahと僅かに小さいが、重量、装備の関係もありWLTCモードではこのBグレードが最良の燃費値を達成している。

 また従来型アクアでは駆動方式はFFのみだったが、新型ではe-FOURが各グレードに設定された。30km/h以下で発進時に後輪をモーターで駆動するが、乾燥路でもスタート時に4輪で駆動していることが確認できた。

 降雪地帯ではWLTCモードで30km/Lを超える燃費性能の4WDがラインアップ加わったことは魅力に違いない。全モデルで2030年度燃費基準を達成することになる。

ゆったりとした室内を持つ新型アクア

街乗りと首都高速を中心に走りました

 初対面の新型アクアは初代同様に空気に溶けこむようなデザインで、後半に向けて切れ上がったサイドウィンドウが印象深い。

 室内は178cmのドライバーがドラポジを取っても後席のレッグルームは広く、十分に余裕がある。その広さは驚くほどだ。初代は後半が落としこまれたルーフ形状でヘッドクリアランスはミニマムだったが、新型では余裕がある。全高が1455㎜から1485㎜と30㎜高くなった恩恵がある。ちなみに乗り心地も先代のように鋭い突き上げを感じることはなく、穏やで後席にも自信をもって招待できる。

2600mmのホイールベースからくる伸びやかなデザイン Zグレードの2WD仕様
Zグレードはバイポーラ型ニッケル水素バッテリを搭載
こちらは同じくZグレードの4WD仕様。後輪もモーターで駆動するため、後輪のサスペンション形式はトーションビームからダブルウイッシュボーンへと変更されている
リア右下にE-Fourのバッヂが付くのが外見上の大きな違い

 運転席はパワーシートによってポジションを変えられる。1モーターによる簡易版パワーシートだが、上級グレードとはいえ選択できるのは驚きだ。スイッチはすべて回転式のために最初はとまどうが上下リフターもあるのはありがたい。ステアリングもチルト&テレスコ機能付きでさまざまな体形に合わせることが可能だ。それにファブリックシートにもシートヒーターがついているのはうれしい。軽にも装備できる時代とはいえ、冬になるとありがたみを痛感する。

 ダッシュボードセンターにある大型ディスプレイは、視界をじゃますることなく前方はスッキリと広がっている。Aピラーが細い上、ドアミラーの位置も工夫されているので、大きな三角窓とともに、交差点などで見えにくい死角もかなり解消しているのは地味だが重要な努力だと思う。

 Zグレードの10.5インチセンターディスプレイは使い慣れた自分のスマートフォンとつなぐとその機能を使うことができる。カローラから始まったスタイルだが、スマホに慣れた世代には抵抗なく、最新のアプリを使えるメリットも大きい。

新型アクアのコクピット。10.5インチのディスプレイオーディオが目を引く。別売のナビアプリなども入れられるが、CarPlayなどスマホ接続も可能

 走り始めて感じたのは遮音が優れており、風切り音を含めたロードノイズがシッカリ抑えられていること。2クラスぐらい上がったような質感だ。ヤリスはビート感を感じながら走るイメージだったがアクアは音を抑え込んでいる感じだ。これまでのアクアユーザーに加えて間口が広がり、多くの人に受けいられそうだ。

 試乗したのは都内から首都高だったが、EV(モーターのみ)の走行比率は70%を超えていた。エネルギーモニターを確認すると、小まめにしかも素早く電気を回収して、また使っているのが分かる。

 エンジンは回り出すと3気筒らしい音が聞こえる。高回転域を使うと僅かに振動も混じってくるのが従来の4気筒のアクアとの違いだ。基本的にはハイブリッドユニットはそこまで使うケースは限られているとの想定だと聞く。振動は電気モーターの駆動域で隠蔽できる範囲としてバランスシャフトも省かれている。

 4WD仕様では僅かだが振動がハンドルを通じて感じられたが個体差だと思われるので量産体制が整うことで解消されることを期待する。

 FFのZグレードにはドライブモードにいわゆるワンペダルドライブの快感ペダルと呼ばれるPWR+モードがある。回生を強くしてアクセルオフでの減速を少し強めにしているもので、市街地での減速が必要な場面で使いやすい。アクアはアクセルオフでの空走する能力が大きいので必然的にブレーキを踏むことも多くなるが、PWR+を選ぶと通常より強めに減速Gが出る。絶妙に設定されているのがさすがと思わせる。運転初心者にもやさしいモードだ。

 乗り心地がビシッとしたヤリスと比較すると、新型アクアはユッタリしている。ヤリスの2550mmのホイールベースに対してアクアは2600mmでピッチングを抑制する方向にあり、サスペンション設定もユッタリとした味を目標にして、フロントのショックアブソーバーにスイングバルブを採用している。スパンの少し長い凹凸路、例えば整理された石畳みのような路面での上下収束は秀逸だ。一方、鋭角的な力が入るような場面ではヤリスのビシッとした収束も好ましい。いずれにしても乗り心地は飛躍的に向上した新型アクアで、その差は驚異的だ。

 ハンドリングは乗り心地同様に安心感がある。ボディ剛性が大幅に上がった効果でサスペンション設定の自由度も向上した。

 ハンドルの応答性は少し鈍く感じられるが正確さを増しており高い接地感を持ってコーナーをトレースする。同じように走行した4WDではグリップに懐の深さを感じたが、4WDはリアサスペンションが後輪を駆動する関係でダブルウィシュボーンを採用しており、タイヤの接地形状が異なる影響だろうか。また後輪にモーターを持ち前後重量配分も異なることも安定感に違いを生む。あえて言えばハンドリングではFFが少しスポーティに、4WDはドッシリとした安定性が持ち味だ。

 タイヤはFFモデルは16インチ、4WDは15インチを履いていたが、後者は少し濡れた首都高速でシックリした。両方とも転がり抵抗が非常に小さく、クルマ側のフリクションも小さい上にタイヤの進化も素晴らしい。ただウェットグリップはもう少し欲しいと感じた。

 首都高速から湾岸道路にかけて全速度をカバーするクルーズコントロールを使ったが、前車が加速した時の追従も素早く、また横から入ってきた時の減速も見事に対応した。ハイブリッドシステムの反応が早いことも貢献している。それにブラインドスポットモニタは望外の装備だった。コンパクトカーとはいえ望めばなんでも手に入る時代だ。

 ついでに地下の駐車場でアドバンスパーキングを試してみた。レクサス並みと言われていたが「駐車ぐらい自分でやるわい」と思っていた自分を反省した。

 駐車したいところでスイッチをオンにして右か左かを選択すれば(地下駐だったので左右の駐車位置を認識していた)、ハンドルから手を放してもクルマが勝手に前後してハンドルを切り、見事に駐車できた。最初は移動速度が速いのとギリギリまで壁を攻めるのでちょっとビビった。移動速度は3段階で調整でき、ブレーキで速度をコントロールできるのは後で聞いた。概ね30秒以内で駐車する設定になっている。

 自分自身、ハンドルを回すのは早い方だと思っていたが、クルクル左右に回るハンドルを見ているとアクアに負けたかもしれない……。

 アクアはサイズアップされユッタリしたコンパクトカーになったが、ヤリス同様5ナンバーサイズを守り使いやすさが大幅にアップした。ヤリスとの住み分けもはっきりしたことで存在感を増した新型アクアだった。

【お詫びと訂正】記事初出時、一部表記ミスがありましたので、お詫びして訂正させていただきます。

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。

Photo:高橋 学