試乗レポート

新型レクサス「NX」の白眉となる、新開発2.4リッターターボ搭載「NX350」 下山テストコース育ちのスポーツモデル

新開発2.4リッターターボ搭載した「NX350」

新型「NX」の白眉となる「NX350」

 本稿では、7年ぶりにフルモデルチェンジしたレクサス新型「NX」のコンベンショナルエンジン搭載モデル、「NX350」と「NX250」の公道試乗インプレッションをお届けする。新型NXではPHEV(プラグインハイブリッド車)の「NX450h+」、HEV(ハイブリッド車)の「NX350h」、コンベンショナルエンジン搭載の「NX350」と「NX250」があるが、シリーズの白眉となるのは「NX350」ではないだろうか。

 搭載するエンジンは、新開発の直列4気筒DOHC 2.4リッターターボ(T24A-FTS型)で、組み合わされるトランスミッションはDirect Shift-8AT(8速AT)。「NX350」は“F SPORT”のシングルグレードで、電子制御フルタイムAWDのみの設定となる。

 新型NXの“F SPORT”には、減衰力可変ショックアブソーバーのAVSとボディ前後にパフォーマンスダンパーが装備されるが、「NX350“F SPORT”」はボディ細部にさらに補強が施され、走りへの強いこだわりを見せる。開発の仕上げは強い入力が入るトヨタの下山テストコースで行なわれた。そこにはサスペンションだけでなくNXを開発したシャシー、エンジン、トランスミッション、電子制御などの各部門が集まり走り込みを繰り返しながら進化させていった。

“F SPORT”のみが設定される「NX350」
「NX350“F SPORT”」。専用グリルや専用フロントガーニッシュなどを備える
ボディカラーは、ヒートブルーコントラストレイヤリング。深みのある青
“F SPORT”専用20インチホイール。この車両はメーカーオプションの専用オレンジブレーキキャリパーを装備

 特徴的なのはアンダーボディのステフナーで、リアサスペンションを取り付けるサブフレームの前後をさらに補強してダイレクトな反応を目指した。フロント側もリアの剛性を上げた分、フロント側の剛性を上げるステフナーが入れられている。もちろんトランスミッション、エンジンなどのチューニングが行なわれたのは言うまでもない。

「NX350“F SPORT”」のボディ構造
専用の強化などが行なわれている

 確かに走りは一味違って素晴らしいものだった。クルマとの一体感が強く感じられ、特にリアの接地力が高く、駆動力がかかるとぐんと前に出ようとし、さらにハンドルを切るとすかさず反応するレスポンスが好ましい。

 GR86といったスポーツカーのように素早くノーズを変えるのとは違い、ジワと効くのがSUV、新型NXの持ち味でスッキリとした操舵フィールだ。この感覚はワインディングロードを走らなくても感じられる。カーブの中でも余分な路面からの反力がないので神経を使わない。反対に路面からの情報も伝わりやすくドライバーが次に何をすればよいのか判断しやすい。

 AVSはSportとNormalの2段階の減衰力を持っておりその差は明確。Sport S+では路面の凹凸を伝えやすいが、ハンドリングはコーナーでのロールが小さく、またS字でも車体の応答性がよく、背の高いSUVとは思えない動きを見せる。

 最高出力205kW(279PS)/6000rpm、最大トルク430Nm(43.8kgmf)/1700-3600rpmを発生するエンジンは、出力も高いがどの回転域からでも素早く反応するレスポンスが「NX350」の持ち味を活かしている。ターボの爆発的なパワーは感じないが、分厚くフラットなトルクと伸びやかな回転フィールが好ましい。どんなコースでも柔軟性の高いのもこのエンジンの特徴だ。効率の面でも進化しており、WLTCで12.2km/Lで、山道を走り回っての平均燃費も8.6km/Lを表示していた。

最高出力205kW(279PS)/6000rpm、最大トルク430Nm(43.8kgmf)/1700-3600rpmを発生する、新開発の2.4リッターターボエンジン

 さらに8速のトランスミッションは小気味よくシフトアップし、またシフトダウンする。CVTの効率もよいが進化したロックアップトルコンもまた気持ちよい。クワーと小さくうなるエンジン音も、このトランスミッションのステップに合っている。パドルを使うまでもなく、Dレンジのままでも下り坂ではブリッピングしながらシフトダウンする。

 駆動システムはプロペラシャフトを持つ電子制御のメカ4WDで、クラッチを使って前後にトルク配分を行なっている。基本を前後7:3におき、常に後輪にも駆動力をかけて姿勢安定性を担保している。基本ボディ骨格の完成度が高いことに加えて、4WDシステムの可変駆動力配分のために「NX350」のドライビングプレジャーは高い。駆動力や安定性を上げるだけではなく、運転のリズムを作りやすくしている重要な駆動方式だ。

 乗り心地は節度のある硬さと言えばよいだろうか、AVSのSport SとSport S+ではかなり差を付けられている。Sport S+でも必要以上の硬さではないと思うが、後席のことを考えると日常はそれ以外を勧めるけれども。

「NX350」のコクピット
通常時のメーターパネル
Sport S+時のメーターパネル

機敏な走りが楽しめる「NX250」

エントリーグレードだが、新時代レクサスというだけあり、安全・安心に関するさまざまな新機能が盛り込まれている「NX250」
ボディカラーは、テレーンカーキマイカメタリック。新型「NX」の複雑な造形を美しく見せる色だった
直列4気筒DOHC 2.5リッター(A25A-FKS型)のダイナミックフォースエンジン

 NXのエントリーグレードとなる直列4気筒DOHC 2.5リッター(A25A-FKS型)エンジンを搭載する4WDの「NX250」も試乗した。「NX250“version L”」だったこともあるがレクサスらしい上質感があり、エントリーNXの感じはしない。エンジン出力も148kW(201PS)/241Nm(24.5kgmf)あり、4WDで1710kgには必要十分なパワーだ。

 ターボに比べるとエンジン回転はすぐに上がり、このエンジンらしいエキゾーストノートを奏でるが、8速ATのリズミカルな変速もあって適切なトルクバンドにとどまっており、結構機敏に走れる。

「NX350」のような凝ったボディ補強はないが、パワーに見合った軽快なハンドリングを楽しめた。タイヤも他モデルと同じブリヂストンのアレンザ ランフラット。サイズは235/50 R20だが、剛性の高いランフラットを履きこなして乗り心地、ハンドリングともにバランスが取れていた。

数々の新機能にあふれる新型NX

プロアクティブドライビングアシストは、一般道でも運転しやすいようなサポートを行なってくれる

 日常のドライブではプロアクティブドライビングアシストが運転をサポートしてくれる。一例を挙げるとコーナーで軽く減速するモードも組み込まれており、ドライバーがそろそろと思う手前で絶妙に軽いブレーキをかけてくれる。限界をカバーするものではないが、わずかな気のゆるみを巧みにサポートするのはNXのドライバーへのおもてなしかもしれない。

 後席も快適にまとめられている。ヒップポイントを30mmほど低くして相対的なレッグルームを広げているが、効果的な採光で閉塞感のないキャビンだ。

 新型レクサスNXは新機軸にあふれており、次世代レクサスの先駆けを担う。進化したLexus Safety Sense+やスマホ連動のコネクテッドも新しい。時代の流れを取り入れながら基本を磨き込んだ新型NXとのひとときは楽しいばかりだった。

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。

Photo:安田 剛