試乗レポート

スバル「レガシィ アウトバック」で雪上試乗 アイサイトXやシンメトリカルAWDで疲れ知らずのロングドライブ

スバルらしいデザインでまとめられた唯一のレガシィ

 スバルの屋台骨を支えた「レガシィ」のポジションは日本では「レヴォーグ」に引き継がれ、レガシィはワゴンでありSUVでもあるアウトバックのみが販売されている。そのアウトバックが2021年11月にフルモデルチェンジをして新しいスタートを切った。

 試乗したのは2グレードあるうちのX-BREAK EX。シートが撥水性ポリウレタンになり、X-MODEが2モードとなるアウトドア志向の強いグレードだ。もう1つのLimited EXグレードも基本的なスペックは変わらない。

レガシィ アウトバック X-BREAK EX(446万6000円)。ボディサイズは4870×1875×1670mm、ホイールベースは2745mm。最小回転半径は5.5m。車両重量は1710kg(オプションのサンルーフを含む)
外観はスバル共通のデザインフィロソフィー“DYNAMIC×SOLID”をアウトバックのキャラクターに適応させ、「Active&Tough」というコンセプトのもとデザイン。スピード感のあるシルエットに厚みや力強さを強調したボディパネルと、一体感を増したクラッディングを組み合わせることで、ひと目見ただけで感じられるアクティブさとタフさを表現
ダークメタリック塗装の18インチホイールに組み合わせるスタッドレスタイヤは、横浜ゴム「アイスガード SUV G075」
雪道セットを準備

 新しいアウトバックはレヴォーグのパワートレーンを使い、プラットフォームもスバルグローバルプラットフォーム(SGP)に環状構造を組み合わせた強固なものだ。水平対向4気筒1.8リッター+ターボの出力は130kW/300Nm。1600~3600rpmで最大トルクを出し、トルクバンドそのものも広く、中間加速では伸びのある加速ができる。アウトバックのパワートレーンはレヴォーグと同じだが、最終減速比を低くしており、100kgほど重い重量と相殺されている感じだ。

 トランスミッションはスバル独自のリニアトロニックCVT。いわゆるラバーバンドフィールとは無縁でアクセル開度にあった自然な加速もエンジンによくマッチしており気持ちよい。

最高出力130kW(177PS)/5200-5600rpm、最大トルク300Nm(30.6kgfm)/1600-3600rpmを発生する水平対向4気筒 1.8リッター直噴ターボ“DIT”エンジンを搭載。組み合わせるトランスミッションはリニアトロニック(CVT)で、4輪を駆動する。WLTCモード燃費は13.0km/L

 室内に華やかさはないがスバルらしいデザインでまとめられている。体になじみやすいドライバーズシートの正面には12.3インチフル液晶メーターがあり、主要な情報はここで得られる。一方、ダッシュボードセンターにはレヴォーグ譲りの11.6インチ縦型大型モニターが備わる。ここでは車両設定、例えばX-MODEやスタビリティコントロール、またエアコン、オーディオ、ナビゲーションなどがタッチパネルで操作できる。

レガシィ アウトバックのインパネ
レガシィ アウトバックらしさを、乗る人すべてがくつろげる居心地のよい室内空間で表現。サンルーフとハーマンカードンサウンドシステムはオプション設定となる
レガシィ アウトバック X-BREAK EXのシートは撥水性ポリウレタンで、ダークグレーにエナジーグリーンステッチが入る。Limited EXはオプションで本革シート(ナッパレザー)を選択可能
12.3インチフル液晶メーターの表示パターン。こちらはレガシィ アウトバック全グレード標準装備
こちらもレガシィ アウトバック全グレードで標準装備となる11.6インチセンターインフォメーションディスプレイ&インフォテインメントシステム。車両制御システムのON/OFFやX-MODEの切り替えが可能。走行中の操作は限定されるため、停車時に操作することが基本となりそう

 タッチパネルは操作系をスッキリさせることができるが、オーディオやエアコンなど、すぐに操作したいスイッチはディスプレイの外に出した方がよいのではと思えた。

 室内は広々としている。ヘッドクリアランスもタップリ取れているし、リアシートのレッグルームの広さはセダンとは比べものにならない。それでいて運転するとそれほど大きく感じないから不思議だ。

 サイズは4870×1875×1670mm(全長×全幅×全高)と大柄だがそれと感じさせず、最低地上高も213mmと高い。悪路での機動性が期待できそうで頼もしい。

 ホイールベースは2745mmでレヴォーグの2670mmより75mmも長く、その分は後席にあてられている。大きなサイズをあまり感じさせないのは最小回転半径が5.5mとレヴォーグと同等に抑えられていることも大きい。同時にステアリングギヤ比が13.5:1と早く正確なこともフットワークのよさにつながっている。

レガシィ アウトバックのラゲッジルーム。VDA法で561L(カーゴフロアボード上部が522L、サブトランクが39L)という大きな容量を確保している。6:4分割可倒式のリアシートを倒すとフラットな荷室が出現する。カーゴフックやショッピングフックなども設定。ハンズフリーオープンパワーリアゲートはX-BREAK EXではオプションとなる(Limited EXは標準装備)

癖がなく自然体なレガシィ アウトバック。雪道でも不安のない走り

 街中を抜けて、高速道路に乗る。今日の目的地は、まだ道路には雪があるであろう奥志賀。装着タイヤは横浜ゴムの「アイスガード SUV G075」でSUV用のスタッドレスだ。サイズは225/60R18を履く。

 高速道路では早速アイサイトXを試す。右側のステアリングスポークにある全車速ACCをON、SETスイッチを入れる。さらにアイサイトXをONにする。クルージングも快適で車線内センター維持機能が働き、ハンドル修正を頻繁に入れる必要はない。当日は横風が時たま強く吹いたがハンドルを軽く握っていればクルーザーらしい安定感だ。高精度マップを活用するアイサイトXでは高速道路でのRの強いカーブ手前では自動で減速機能を持ちドライバーをサポートする。

 少し煩わしかったのはドライバー・モニター。常にドライバーの目線を監視し、短時間でも下を向くとすぐにワーニングが点灯する。タイミング的にはもう少しルーズでもよいのではと感じた。

 高速道路は完全にドライだったが、目的地の志賀高原に近づくと北側路面にはシャーベット状の路面がところどころ顔を出す。そんな路面に乗るとフロントが少し滑り出す。そのまま待っていると、アクティブ・トルク・ベクタリングが内側のブレーキをつまんで旋回力を高く保つ。とはいうものの、タイヤのグリップ力以上のことはできないので氷雪でグリップの高いタイヤは必要だ。

 さらに横滑り状態になるとVDC(ビークルダイナミクスコントロール)が作動して4輪のブレーキ制御で姿勢を保つ。幸いそんな場面はなかったが危険から身を守ってくれる大切なサポートだ。

 乾いた山道では最低地上高の高いSUVワゴンにもかかわらずハンドルを左右に切り返す場面でもロールがよく抑えられ横揺れは小さい。セダンをドライブしているのと変わらない。

 SI-DRIVEもトライする。通常はSI-DRIVEのIを選択しておけば路面状況にかかわらずストレスなく走る。Sを選択するとパワーの立ち上がりが早くなり、中間加速でも素早いレスポンスを示す。コーナーで少し高めのエンジン回転をキープしたいときなどは適切なモードだ。雪道でも場面によっては使いやすいモードだった。

 標高が上がるにつれて道路には雪が多くなり、さらに脇道は雪がタップリある。アウトバックの200mm以上ある最低地上高は雪との干渉も少なく、多少わだちの深いところでも気にしないで走れる。底づきはスタックの要因だ。

 駆動力はさすがスバル。ダイレクト4WDはガッチリと路面を捉え、アクセルに素早く反応して駆動力を伝える。路面に応じて前後に駆動力を配分するアクティブトルクスプリットAWDで常に最適な前後駆動力が配分されるので、ドライバーは特別なテクニックを必要としない。高い走破性が簡単に体感できる。

 シンメトリカルAWDは重量が車体の中心にくることや、左右等長ドライブシャフトによる直進安定性で路面変化が多い不整地でも余分な姿勢変化が起きないのがスバルらしい。

 X-MODEはX-BREAK EXグレードでは2段階のモードから選べる。NORMALをベースにSNOW/DIRTとDEEP SNOW/MUDだ。4輪にかかる駆動力やブレーキをコントロールし、路面に合わせた最適な駆動力配分を行なう。

 今回の試乗ではX-MODEが必要とされる場面には遭遇しなかったが、雪道で試したところ、DEEP SNOWは後輪にもトラクションを積極的にかける設定だった。SNOWはフロントの駆動力が強くグイグイと前に進む。いずれのモードも表示された路面に合わせた駆動力を4輪に伝え、スタックなどからの脱出に効果的だ。

 また、最低地上高が高いだけでなく悪路で顎やお尻を打たないようアプローチアングルは19.7度、デパーチャーアングルは22.9度と大きく、4つのタイヤを踏ん張らせたようなデザインは伊達じゃない。

 これらのモードにはヒルディセントが付き、ステアリング操作に集中して滑りやすい急な下り坂を下りられる。スバルの登坂性と走破性は折り紙付きだ。都会にいてはこれらの機能を使うチャンスは滅多にないが、滑りやすい丘にある山荘に辿り着くためだったり、深い雪をかき分けて進まなければならないときには頼もしい。スバルらしい装備だ。

 ただX-MODEのスイッチはセンターディスプレイに入っているので、初めて使うときには探り出すまで時間がかかるのが玉に瑕だった。

 しばらく雪の中でアウトバックの4WDを堪能して帰路に就く。山から下りてリアシートにも座らせてもらう。座面が少し短い以外は足下から頭上まで広々としている。センターアームレストが大きいので幅を取られてしまうのはちょっと残念。ロードノイズはラゲッジルームから入ってくるが、前後席の会話明瞭度は高い。

 シートは姿勢を動かしても体重を分散させてくれるので長時間でも疲れが少ない。これは前席にも言えることだった。

 さらにアウトバックらしいのはラゲッジルームの広さだ。収納力は高く、サブトランクも入れると561Lと大容量で、収納時の使い勝手も優れている。

 乗り心地も路面からの大きな突き上げには反応するが概して快適。ピッチングも小さく、サスペンションはショックをよく吸収してくれる。全席で不快な振動がないのが好ましい。

 さて、帰路でも慣れてきたアイサイトXに頼る。高精度地図を持つ高速道路でも渋滞ではシッカリ減速して50km/h以下になるとハンズオフも可能だ。ドライバーへのストレスが予想以上に低減されたのには驚いた。またアイサイト稼働中に追い越し車線に移るためにウインカーを出すと、ジワリとステアリングを切るのをサポートして車線移動。終わると自動的にウインカーが元に戻る。また前車に追従せずに単独で料金所に近づいた場合にも自動減速機能が働く。さらに首都高のようにカーブが連続するコースではワーニングが出て車速制御が入る。

高速道路では右側のステアリングコラムにあるACC&アイサイトXのスイッチをON
渋滞時(0km/h~約50km/h)に一定の条件を満たすとステアリングから手を離せる
約70km/h~約120km/hで走行しているときに、ドライバーが方向指示器を操作してシステムが作動可能と判断すると、システムがステアリングを制御して車線変更のアシストを実施
料金所の手前でETCゲートを安全に通過できる速度まで減速し、通過後はセット車速まで加速する料金所前速度制御を搭載。ACCをOFFにすることなくスムーズに料金所を通過できる
ステアリングから手を離せる渋滞時ハンズオフアシストが使えるようになると、メーター内のアイコン表示がグリーンからブルーに変わる

 アイサイトXの操作は簡単で、使い方に慣れてしまえば、高速移動が非常に楽に行なえる。アウトバックは癖のない性格で自然体。雪道からワインディングロード、長時間の高速クルージングでも疲れ知らずだった。欲を言えば発進時の大きなトルクを得るために少し大きな排気量があってもよさそうだ。今でも十分贅沢ではあるけれども……。

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。

Photo:安田 剛