試乗レポート

レクサス最高峰SUV、新型「LX600 エグゼクティブ/オフロード」で富士に新設されたオフロードコースを走る

新型LX600で富士スピードウェイのオフロードコースを走る。写真は最高峰グレードのLX600 エグゼクティブ

富士スピードウェイに新しく切り開かれたオフロードコースでLX600を試乗する

 レクサスの新型SUV「LX600」で挑むオフロードは、富士スピードウェイ内に新設されたクロカン専用のコースだった。このコースは中京地区で長年オフロードコースを管理整備している「さなげアドベンチャーフィールド」が係わって作られたコースで、小規模ながらなかなかタフなレイアウトとなっていた。富士スピードウェイにサーキットだけでなくオフロードコースのような「コトづくり」の施設が誕生したことは今後にも期待が持てる。

 試乗コースは2種類あり、少し長いAコースと、モーグルや岩場が用意された短めのBコース。雪が舞う中での初乗りとなったが、LX600にとってはまさに相応しいコンディション。路面は富士噴火由来の火山灰で固まりにくく滑りやすくなっている。

レクサス新型LX600 富士スピードウェイ オフロード走行

 LX600は5100×1990×1885mm(全長×全幅×全高)の大柄なオフローダー。細く曲がりくねった滑りやすいコースを進むのはなかなか手ごわいと思ったが、LX600の実力はそんなものではなかった。

 その1つに「マルチテレインモニター」がある。フロント、サイド、リアに配置された4つのカメラでクルマの全周囲の状況を映し出し、さらにアンダーフロアビューに切り替えると直前に撮影された路面を合成し、あたかも床下を透視しているように見える。勘に頼ることがなく安心できる。ここまではランドクルーザーにも装備されているが新型LXではさらに後輪周辺を映し出すことも可能で、とくに難しい後退時にはこの上なく便利だ。これによってLX600のオフロード性能を活かせる幅が大きく増えた。

周囲の状況をつかみやすいマルチテレインモニター。オフロードではとくに役に立つ
車両限界の把握もしやすいようガイドラインが表示されている

 試乗は、LX600“EXECUTIVE(エグゼクティブ)”から行なった。まずActive Height Control suspension(AHC)をH2、つまりもっとも高い位置まで上げる。旧LXとの違いは車体が上がる速度が圧倒的に早い。ショックアブソーバーとガス油圧併用のバネ、そして金属バネの構造は旧LXと変わりないが、新型では後輪もバネレートを変えることで車高調整が短時間で済むようになった。意外とこの速さはありがたい。

雪の中での試乗となったが、SUVの実力を確認するには最適な天気

 マルチテレインレスポンスはAUTO、DIRT、SAND、MUD、DEEP SNOW、ROCKを選べ、その路面に応じて適切な駆動力を4輪に配分する。今回の路面はウェットの泥濘地。場所によっては歩くのも難しいような路面だが、インストラクターから指示された駆動力はAUTOのまま。場面に応じて自在に駆動力配分を行なうモードでLX600のポテンシャルなら十分に走破できるという判断だ。4WDは駆動力のある低いギヤ、L4を選定している。

 Aコースではいきなり急登坂の上に頂上で左に折れる。車両は天を向いているので前方視界はまったくない。新型ではマルチテレインモニターで見えない路面を把握でき、左右の状況視認と合わせて安心してハンドルを切ることができる。

 最低地上高は210mmだが、車体の上げ幅は110mmと大きくなるので、アプローチ/デパーチャアングルとも大きく取ることができる。

 L4を選択しているのでジワリとはうように進む。大きな駆動力で次々と現れるモーグルや急傾斜のコーナーをクリアする。片面を高い轍の壁に乗せると傾斜角は25度に達し、こちらからすれば横倒しになりそうな角度だが、実際には44度まで持ち応えるというから凄い。

 22インチタイヤはSUV用とはいえパターンはオンロードに限りなく近い。今日のような泥濘路面では厳しいかと思ったが、急勾配に加えて凹凸の激しい滑りやすい路面も這い上がっていく。途中で4輪が滑り出すこともあるが、もしマッドテレインを履いていたら突破力は凄いに違いない。ちなみに渡河能力は水深700mmというから感覚的にはボンネット近くまで水が来ても走れることになる。

 途中、コースから外れて道とも思えないような坂を下るが、ブレーキ操作だけで十分にコントロールできた。ここでは左右から車幅一杯にせり出してくる太い枝に遮られながらの走行になるが、LX600のボンネットはセンターに幅広い窪みがあり、直前視界と車両のセンターを把握するのに助けられた。

 丸太を組合わせた階段も難なく通過。その際に感じたのは突き上げがかなり小さいことだ。従来型のLXでは車高を上げるとサスペンションストロークを一杯に使っていた感じでショックを伝えやすかったが、LX600では直接的なショックが少なくストレスをあまり感じない。

 このオフロードではエグゼクティブの後席も試してみた。エグゼクティブの後席は完全な2シーターとなっており、今回は左側のシートを48度までリクライニングし、助手席を最前端に移動してシートバックを前倒。そしてオットマンを出すとちょうど両足を踏ん張れる位置になる。この一連の操作はリアのセンターコンソール上のスイッチですべて完結する。LXの主要なマーケットである中東では砂漠を走るLSとして需要があるということだが、日本でも快適な乗り心地もあって興味を持つユーザーはいるのではないだろうか。

エグゼクティブの後席。オットマンなどを使って、もっともリラックスした状態

新型LX600の高い走破性を確認

18インチタイヤを履くLX600 オフロード

 続いて短いBコースに用意されたのは18インチタイヤを履くLX600“OFFROAD(オフロード)”での試乗。このコースではいきなり大きな傾斜を持つモーグルと強いバンクのコースに入っていく。モーグルでは車体の傾斜は約25度になるが、重量2540kgのLXは安定感が高い。

 このころになるとLXの走破力に慣れ、クルマ任せにできるようになった。取り回しのよさは新開発の電動パワーステアリング系も一役買っている。操舵力が軽く、ロック・トゥ・ロックも小さい。おまけに路面からのキックバックも小さいので狭い悪路も容易に入っていける。

 サイズを感じさせない取り回しのよさは今回のオフロード試乗でも再確認できた。ホイールベースは従来型LXと共通の2850mm、最小回転半径は6mで、取り回しは数字以上のよさを感じる。

 慣れないのは岩がゴロゴロしているROCKコースだ。岩山を前にするとひるむがクロールコントロールを入れてそろそろと進む。このシステムは1km/hから5km/hの間で速度を固定させ、4輪の駆動力を制御することができる。ドライバーはハンドルに集中できるのだ。

新型LXはオフロードにおいて、その高い性能を見せてくれた

 この速度で行けるのかと思っているとやがてジワジワとよじ登っていく。それこそ岩に阻まれて止まりながらも前進するのは健気でさえある。もしドライバーがアクセルやブレーキを使うとクロールコントロールに優先するがクルマに任せる。マルチテレインモニターを見ながらコースを選び、フロアを打つこともなく無事岩山を降りた。素晴らしく滑らかだ。

 試しにクロールコントロールを使わず、マニュアルで挑んでみた。車高はH2を、4WDは4Lを維持し、マルチテレインセレクトもAUTOのままだ。結論から言うと難関の岩場はかろうじてクリアできたものの冷や汗ものだった。アクセルをジワリと踏んでいるつもりでも過剰に踏んでおり、幾度かブレーキを使うことになった。クルマの姿勢はギクシャクしてしまい、クロールコントロールのありがたみを実感した。

 レクサスLX600で厳しいオフロードを走るという得難い経験ができ、その高い走破性を確認することができた。世界で販売されるLX600のうち、こんな過酷な体験をするLXが何台あるか分からない。しかしその悪路走破へのこだわりが世界有数のオフロード車として類まれな信頼性を生んでいることは間違いない。その余力が日常での使いやすさにも活かされて使いやすさにつながっている。

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。

Photo:安田 剛