試乗レポート

ランボルギーニ、666HPのV8エンジンを搭載する新型「ウルス ペルフォルマンテ」でイタリア・ローマのサーキットを走る

新型「ウルス ペルフォルマンテ」

 2017年に登場したランボルギーニのスーパーSUV「ウルス」。約5年の間に同社の屋台骨を支えるほどの最量販モデルになっていることはご存知の通りだが、今年夏にはベースモデルのマイナーチェンジ版となる「ウルス S」と、さらなるハイパフォーマンス版の「ウルス ペルフォルマンテ」が発表され、アピール度をより加速させることになった。今回、本国イタリアで開催された「ペルフォルマンテ」のサーキット試乗会に参加し、その魅力を確かめてみた。

 ウルスについて少し振り返ってみよう。当時、スーパースポーツカーメーカーであるランボルギーニがSUVモデルを開発中であることが明白になったときには懐疑的な声もあったようだが、ポルシェがSUVの「カイエン」「マカン」を相次いで開発して爆発的な販売台数を獲得したことで、ビジネスモデルとしての不安は払拭。SUVブームの渦中でもあったことから、登場するやいなや「待ってました」とばかりにオーダーが殺到することに。しかもその人気は現在も継続していて、ランボルギーニの2021年における世界販売台数8450台のうち、59%となる5021台がウルスだったし、2022年になっても上半期だけで世界全体で5090台(過去最高)が売れているというからその成功の度合いが分かる。内訳としては、スーパーカーの「アヴェンタドール」と「ウラカン」が39%で、残りの61%がウルスだというからなかなかすごい。

666HPへパワーアップ&軽量化の効果は

新型ウルス ペルフォルマンテのスペックを見てみよう。パワートレーンについては、4.0リッターのV8ターボエンジンを搭載し、最高出力がノーマルモデルから16HPアップの666HPとなり、一方の最大トルクは850Nmと変わらずだ。後述のボディの軽量化によって、パワーウエイトレシオはクラストップレベルとなる3.23kg/HP(アストンマーティン「DBX707」にわずかに劣る)を達成しており、0-100km/h加速3.3秒(Sは3.5秒、ノーマルは3.6秒)、0-200km/h加速11.5秒、最高速は306km/h(Sは305km/h)、100km/h-0km/h制動距離32.9mを発揮する。この縦方向に関する数字は、応答性、ハンドリング、安定性ともにクラスのベンチマークと言っていい。

ウルス ペルフォルマンテのボディサイズは5137×2026×1618mm(全長×全幅×全高。全幅はミラーを除く)、ホイールベースは3006mm。ボディを軽量化し、車両重量は2150kgとした
最高出力490kW(666HP)/6000rpm、最大トルク850Nm/2300-4500rpmを発生するV型8気筒 4.0リッターツインターボエンジンを搭載。トランスミッションには8速ATを組み合わせ、4輪を駆動する

 そして、ウルス ペルフォルマンテの最大の特徴は、ボディの軽量化と空力の改善にあることは、実車を目の前にするとよく分かる。新しいラインを描くブラックのカーボンファイバー製フロントバンパーと左右のスプリッター、エアアウトレット付きの軽量鍛造カーボンファイバー製ボンネットがセットになったフロント部分が、ノーマルウルスに比べて格段に迫力を増している。これによって発生するエアカーテンは、気流をフロントホイールの上に導き、全体の空力効率に貢献するとともに、エンジンの冷却性能を高める効果があるという。また、新しく採用したリアスポイラーは、なんとあの「アヴェンタドール SVJ」にインスピレーションを得て新しく設計したもので、後部のダウンフォースを38%増加するとともに、ボディ全体のダウンフォースも8%増加させている。ホイールアーチやリアバンパー、ディフューザーもカーボンファイバー製で、エキゾーストはアクラポビッチ製の軽量スポーツタイプを装備。トータルでの軽量化は47kgに及んでいる。ボディは新しいスチールスプリングによって20mm低められ、トレッドは16mm、全長も25mm拡大されている。

カーボンファイバー製のフロントバンパーやスプリッターを採用するほか、フロントエアインテークによってエンジン冷却性能を向上。気流をフロントホイールの上に導く新エアカーテンや、リアダウンフォースを増加させる新設計のリアスポイラーを装着している。標準タイヤサイズはフロント285/40ZR22、リア325/35ZR22で、純正タイヤはピレリ「P ZERO」を装着する

 一方のインテリアは、ブラックのアルカンターラに新しい六角形デザインのシートスケッチを施した「ペルフォルマンテ トリム」が標準。マットブラックのアルカンターラステアリングホイールやブラックアルマイト加工のアルミインテリアトリムを採用し、オプションの「ダークパッケージ」では各操作スイッチ類をマットブラック仕上げにできるほか、「アド ペルソナム」を利用して好みのディディールに仕上げることもできるという。

ウルス ペルフォルマンテのインテリアは、標準ではNero Cosmus(ブラック)のアルカンターラに六角形デザインのシートステッチを施した「Performanteトリム」を採用し、オプションでレザーを選択することも可能。オプションとしてインテリアのディテールをマットブラック仕上げにできる「Dark Package」や、特別注文システムのアド・ペルソナムも利用できる

ローマ近郊の「ヴァレルンガ・サーキット」を走る

 ウルス ペルフォルマンテの試乗会場となったのは、ローマの北約30kmにあるACIヴァレルンガ・サーキット(正式名称:アウトドローモ・ヴァレルンガ・ピエロ・タルッフィ)。1周約4.1kmの時計回りで、正式名称にある「ピエロ・タルッフィ」は、1950年代にフェラーリやメルセデスで活躍した著名なイタリアのF1ドライバーの名前だ。

 最初のメニューであるサーキット走行では、インストラクターが先導してマンツーマンスタイルで1スティント4周を3本行なうというもの。内容としては、4周のうち1周目が「SPORT」モードでウォーミングアップ、2周目、3周目は「CORSA」モードでフルアタック、4周目でクールダウンを行なうというスタイルだ。

ドライブモードは「Strada」「Sport」「Corsa」「EGO」に加え、新しく「Rally」も追加されている

 ペルフォルマンテらしい走りを見せてくれた部分を紹介すると、例えばホームストレッチでは5速のまま210km/h近くまで加速して、その先の左、右、左と緩いコーナーをアクセルワークだけで抜けていく通称「グランデカーブ」。特にその後半部分はわずかに下っていて、あたりにはオーバースピードでフルブレーキを入れたブラックマークが数多く残っているのが目に入るので、減速せずにクリアするのはちょっと怖い。そのため筆者はわずかにブレーキングを入れてしまったのだが、何人かの強者はここをノーブレーキで駆け抜けたとのこと。ウラカンやアヴェンタドールならそれは普通の走りなのかもしれないけれど、背の高いSUVが彼らと同じような走りを見せてくれるというのは、はっきり言ってすごいことだ。視線が高いので、レーシングスピードで走っていてもコーナーの先がよく見える、というのも考えたらかなり新鮮なことかもしれない。

 センターコンソールに搭載した「TAMBURO」ドライブモードセレクターは再設計されていて、「CORSA」モードでは、レーシングカーとしての性格が顕著となり、高速での安定性、アクティブアンチロールバーと最大能力を発揮するダンパーが支えるフラットなコーナリング、アクラポビッチ製エキゾーストによる豪快な排気音などが、ランボルギーニのスーパースポーツモデルであることを車内外に知らしめることになるとのこと。前述の走りはまさにそのもの、という感じである。

 またペルフォルマンテには、ダートトラックでのスポーツ性能を高めるために、新たに「RALLY」モードが追加されている。こちらを試したのは、サーキットの敷地横に併設されている特設のダートコースだ。装着する前後タイヤはセミスリックのピレリ「P ZERO TROFEO R」をSUVの特性に合わせて進化させてドライとウェットの汎用性を向上させた「P ZERO」モデルで、サイズはフロント285/40ZR22、リア325/35ZR22。ぱっと見でロード専用に思えるようなこのタイヤでダートコースに入っていくのもちょっと驚きだけれども、コーナー出口でアクセルを踏み込んでリアがスライドしたときのコントロール性がよく、安心して走らせることができた。逆ハンドルを切るたびに、助手席のインストラクターが「イエス!」と叫んでくれるので、こちらも調子に乗ってしまう。フロントホイールステアリングの再キャリブレーションを行ない、リアホイールステアリングの介入を早めるという制御も相まって、ターンインの俊敏性が向上しているようだ。さらにオンロードとオフロードの両モードで、リアディファレンシャルのトルクベクタリングも行なわれるという効果がはっきりと分かる。

 ウルス ペルフォルマンテの試乗を終えて感じたのは、当たり前だけれどもウルスの魅力がさらに増していること。つまり、製品そのものの出来栄えが素晴らしいことだ。そして、このモデルは決して電動化までの繋ぎではない、ということも付け加えさせていただきたい。製造台数はそれほど多くないとのことなので、オーダーは早めの方がよさそうだ。

原 アキラ