試乗レポート

ボルボの最新48Vマイルドハイブリッド「XC40 ULTIMATE B4 AWD」、同社バッテリEVとの違いは?

XC40 ULTIMATE B4 AWD

内燃機関の改良は連綿と続いていた

 XC40も48Vマイルドハイブリッドになり、エクステリアもBEV(バッテリ電気自動車)の「C40」似になった。しかもボルボは電動化戦略を見据えて2030年までにすべてをBEVにすると明言し、今後は内燃機関の改良はないかと予想していたが、排出ガス削減のためにパワートレーンの改良は連綿と続いていた。

 48Vマイルドハイブリッドも従来のエンジンに48Vハイブリッドモジュールを追加しただけでなく、エンジン本体にも大きな改良が加えられた。2022年モデルの後半から燃費のよいミラーサイクルになり、希薄燃焼が可能なピストンの燃焼室形状への変更、それにともないマニホールドの形状変更があり、可変バルブタイミングの拡大採用など、すべてが燃費向上への技術の積み重ねが行なわれている。

 またトランスミッションもトルコンATから7速デュアルクラッチ(DCT)に変更となり、変速はモーターで行なっている。トルコンの油圧ロスのないDCTは高速巡航の多い欧州では燃費効果が高いと言われる。48Vマイルドハイブリッドとエンジンの改良、それにトランスミッションのDCT化でWLTCモードは従来の12.5km/Lから14.2km/Lに向上している。燃費があまりよくなかったこれまでのエンジンに比べてかなりの改善だ。

 出力は直列4気筒2.0リッターターボから145kW(197PS)/300Nmを出し、エントリーグレードのB3は2WD(FF)で120kW(163PS)/265Nmとなっている。

試乗車は「XC40 ULTIMATE B4 AWD」(569万円)。XC40は7月にデビュー以来初となるフェイスリフトを受け、シャープなデザインを特徴とする新デザインのヘッドライトが与えられ、フロントフェイスはより端正な印象へと進化するとともに、新しい外装色が設定された。ボディサイズは4440×1875×1655mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2700mm
ULTIMATEでは19インチアルミホイールを標準装備(タイヤはコンチネンタル「エココンタクト6」でサイズは235/50R19)

 XC40も操作系が分かりやすい。Googleの採用で曖昧検索に幅ができ、ナビゲーションに例を取ると音声認識で多少違ったワードを言っても正確な名称を探し出してくれる。これまでのシステムでは曖昧検索は許されなかったことを考えるとストレスが減った。シフトスイッチを見るとPHEVで採用されていたガラス製のシフトノブがB4にも取り入れられ、B4がボルボの電動化戦略の一翼を担っていることが分かる。

2021年秋に「XC60」から導入されたGoogle搭載の新インフォテイメントシステムは全車に標準装備。ドライバーディスプレイ(メーターパネル)と連携するGoogle マップによるナビゲーションや、Google アシスタントによる音声操作、さらに各種アプリケーションが利用できる「Google アプリ/サービス」と、緊急通報サービスならびに故障通報サービスなどと連携する「Volvo Cars app(テレマティクス・サービス/ボルボ・カーズ・アプリ)」が全車で利用できる

完成度の高いDCT

 ガラスノブを手前に引きDレンジに入れ、アクセルをゆっくり踏み込む。装着タイヤはコンチネンタル「エココンタクト6」でサイズは235/50R19。48Vのアシストは巧みにジワリと電気で動き出す。やはりBEVに比べるとエンジン始動で音と振動を伴うもののカバー範囲は広く、緻密にモーター制御して燃費を稼いでいる。エンジンへのサポートが巧みだ。

 さすがにアクセルを踏んだ時のレスポンスはBEVに比べると一瞬の遅れがあるものの低回転から力があるエンジンで、すぐに反応してくれる。エンジンは十分なパフォーマンスを示して1720㎏の重量に対しても元気がよい。

 緩加速の場合は粘り強くシフトダウンせず速度を上げていくが、強く踏むと素早いシフトダウンでグンと加速する。その際の変速ショックは皆無。なかなか完成度の高いDCTだ。高速道路での巡航速度100km/hでエンジン回転は7速で1700rpmぐらい。エンジンは低回転でゆったり回っており、振動も少なくて心地よい。

直列4気筒DOHC 2.0リッター直噴ターボエンジンは最高出力145kW(197PS)/4750-5250rpm、最大トルク300Nm(30.6kgfm)/1500-4500rpmを発生。モーター出力は10kW/3000rpm、40Nm/2250rpm。WLTCモード燃費は14.2km/Lとなっている

 マニュアルセレクトを使いたい場面、山道の下りやワインディングロードなどではガラスのシフトレバーを手前に引くとマニュアルモードに入り、左右に動かすとシフトアップ/ダウンをする。積極的にシフトしてもレスポンスよく、しかもスムーズに変速してくれる。ちょっと意地悪な変速をしてみたが、迷うことなく変速ショックも最低限だった。

 さてパイロットアシストはさらに操作が容易になった。全車速追従ACCに入れるのはこれまで通りスイッチ1つでOKだが、同時に横についている矢印を押せばパイロットアシストが作動し、レーンキープしてハンドル制御も行なう。日本車ではACCを作動させるには2段階の設定が必要の場合が多いが、こちらの方がずっとシンプルだ。

 前車についていくのはレスポンスの鋭いBEVが有利で、前車が離れてもすぐについていくがガソリン車ではタイムラグが発生するもの。さすがにXC40 マイルドハイブリッドでもBEVの素早さには対抗できない。

 試乗車は革シートだったが、XC40 ツインモーターに装備されているファブリック素材のシートに比べると硬くて反発力が強い。クッションストロークがあり優しく身体にフィットしてくれる新素材のほうが好ましく感じた。

 乗り心地についてはボルボは基本的に少し硬めを好む。XC40も例外ではなくボルボの味に忠実に則っている。大きな路面段差では突き上げが多少強めになるが、サスペンションストロークの最後で巧みに衝撃を逃がすのはうまい。細かい路面の段差へのサスペンションの追従性はまずまずで、柔らかくはないが身体に伝わるショックは少ない。ただしBEVに比べるとリアへの突き上げは少し強めに感じた。

 ドライバーインターフェースは高速で移動する欧州車らしく、直観的にディスプレイを操作できる。必要なものはシンプルに操作でき、複雑なことは移動中はできないようにしている。できることを簡単に操作することで結局は機能を十分に使うことにつながる。

 室内に目を移すとカラーはマイルドハイブリッドでは明るい色、BEVではブラックが採用されており、ここでもキャラクターの差別化が行なわれている。また助手席にはスマホホルダーが付いているのも最近の流れだ。2023年型からADAS系も変更になってBEVと同じ仕様になり、これまでフロントガラスにレーダーとカメラが一体型ユニットとして付けられていたが、これが分離型となったことなどXC40も進化を続けている。

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。

Photo:堤晋一