試乗レポート
ボルボの2023年モデルは何が変わった? 「XC60」「S90」プラグインハイブリッドを中心に考察
2023年2月9日 08:10
グレード名が変更に
為替や半導体不足。われわれが大好きなクルマの世界は今まさに翻弄され、インポーターは軒並み販売価格を上げてきている。ボルボも例外ではなく、2022年12月に10~30万円の価格上昇を発表した。それでも買うだけの魅力、価値はあるのか? 2023年モデルの試乗会に行ってみたが果たして……。
場所は横浜みなとみらいのハンマーヘッドと名付けられた突堤。分かりやすくいうと高級な船着き場となる桟橋である。みなとみらいの海をバックに撮影ができ、抜群のインスタ映えエリアなのだ。
では本題。ボルボの2023年モデルは何が変わったのか? まずはグレード。中・大型車用プラットフォーム「SPA(スケーラブル・プロダクト・アーキテクチャ)」採用モデルはUltimate(従来のInscription相当)/Plus(従来のMomentum相当)に、小型車用プラットフォーム「CMA(コンパクト・モジュラー・アーキテクチャ)」採用モデルはUltimate(従来のInscription相当)/Plus Pro(従来のMomentum相当)/Plus(従来のBase相当)になった。
さらにエクステリアデザインはMomentumがBase、InscriptionがBright、R-DesignがDarkという名称に。特に旧R-Designに相当するDarkはこれからの電動化ボルボを象徴するデザインで、いわゆるメッキなどの光モノを廃したデザインとなり、BEV(バッテリ電気自動車)とプラグインハイブリッド車に採用される。Brightはこれまでの光モノを採用していてマイルドハイブリッドに。これはボルボは将来メッキを採用しないエクステリアデザインになることを表しているのだという。
ほかにもローパワーターボマイルドハイブリッドのB4には新たにミラーサイクルエンジンが採用され、トランスミッションも7速DCTになり燃費向上が期待される。またFFモデルも追加されている。
T6とT8プラグインハイブリッドに乗ってみた
まずはXC60 T6プラグインハイブリッド(以下PHEV)モデル。エクステリアはメッキなどの光モノを使わないDark。いわゆるこれまでのR-Designにあたり、スポーティな出で立ちだ。
ドライブシートに乗り込むと、そこはスカンジナビアンデザインの個性豊かなボルボの世界。垂直9インチ大型画面のセンターディスプレイはGoogleと共同開発したもので、2023年モデルからはGoogleマップとGoogleアシスタントの音声操作がより直感的にできるようになっている。これは2022年に発表されたピュアEV「C40 Recharge」から採用されているものだが、今回からは全モデルに標準となっている。その使用感は驚くほど快適で、言葉を読み取る能力がとても高く、目的地の設定などが直感的に、しかも早く設定できる。もちろん運転中でも、ちょっとした信号待ちなどで「〇〇に目的地を設定して」といえばすぐに反応するし、不確かなことは逆に問いかけてきたりするのでミス入力が少ない。スマホレベルの音声入力なのだ。
ハイブリッドモードでGoogleを使って目的地を設定した場合、目的地までの地形を考慮したPHEVのバッテリー(EV)走行コントロールを行ない、電池の使い過ぎや貯め過ぎによる無駄のないよう電費と燃費を節約する。これは日産系車両の先読み充放電制御に相当するものだ。
さて、走り出すとなかなか力強い。2023年モデルの大きな変更点はこの動力系の心臓部だ。まずエンジンだが、スーパーチャージャーが廃止されターボのみとなり、これまでスーパーチャージャーに頼っていた低速域のトルクをモーターパワーをアップさせることで補っている。特にリアモーターの出力がこれまでの87PS/240Nmから145PS/309Nmに約65%もの出力アップが図られている。
ドライブモードをPowerモードにして一気にアクセルを踏み込んだ時の、首の根元からのけぞるようなEV的ドカンと一発!も以前より増強されており、しかもPureモードでの10%レベルのアクセル開度でもとてもスムーズで加減速に従順だ。モーターのみでの最高速は140km/h(可能上限速度)となっている。またシフトポジションをBにすればワンペダルドライブとなり、アクセルOFF時の回生による最大減速Gは0.25G。これは日産系のEVよりも高い数値だ。この最大減速Gを可能にしているのもリアモーターの出力アップによるもの。
さらにPHEVのリチウムイオンバッテリも従来の11.6kWhから18.8kWhに拡大されているものの、重量増加は19kgレベル(総重量133kg)でサイズ(質量)は大きくは変わっていない。このため荷室はこれまでと変わらないサイズだ。これはバッテリのセルテクノロジーの進化によって3層構造によるものとのことだ。
当たり前だがエンジンが始動していないEVモードはとても静か、だけでなくエンジン稼働時も静粛性が高くなっている。エンジンパワーも向上していて同時に燃費の改善もされている。ちなみにエンジン単体の出力は253PS/350Nm(T6 AWD)、317PS/400Nm(T8 AWD)で、リアモーターと合算したシステム出力は350PS(T6 AWD)、462PS(T8 AWD)だ。
ところでT6が搭載されるのはS60、V60、XC60で、T8はS90、V90、XC90となる。しかしながらV60 Recharge Polestar Engineered-Final Editionには60シリーズながらT8 AWDのさらに強化されたパワートレーンが搭載されている(317PS/400Nm+145PS/309Nm)。その0-100km/h加速は4.6秒と俊足だ。
T8のパワートレーンを搭載するプラグインハイブリッドのS90 Rechargeにも試乗した。いわゆるメルセデス・ベンツのSクラスに匹敵するサイズだが、車幅が1880mmと1900mmを超えていないので日本の道路にはとてもフィットしていて大きさを感じさせない。そしてやはり静粛性と乗り心地はさすがに次元の異なるもの。Powerモードでアクセルを踏み込んでみたが、T6とは明らかに異なるT8の底力を感じさせる加速感は胸のすく気持ちよさがある。
さて、ボルボは2025年までに販売車両の50%(日本は45%)をBEVに、2030年までにはBEVのみを生産するメーカーになると公言している。また生産工場での電力も再エネに。これはすでにかなり進んでいる。2023年モデルではPHEVに重点を置くラインアップとなり電動化への道を突き進んでいる。ホントにそれで大丈夫か? という思いはあるものの、性能、使い勝手、楽しさ、気持ちよさのどれをとっても、今年のボルボは高得点モデルだ。