試乗レポート

ホンダ新型「ZR-V」試乗レポート第1弾 ハイブリッドとガソリンモデルの乗り味の違いとは?

2023年4月21日 発売

ハイブリッドモデル:329万8900円~411万9500円

ガソリンモデル:294万9100円~376万8600円

発売間近のZR-Vを一般公道で試乗してみた

 いよいよ春に発売となるホンダの新型SUVモデル「ZR-V」をひと足早く公道で試す機会を得た。

 その第1弾となる今回は、街中から高速道路までの身近なシチュエーション。以前、群馬サイクルスポーツセンター(以下、群サイ)で試乗した際には、ハイスピードで走っても安心感が高く、まるでスポーツカーのようだと感じたクルマだったが、ナンバーを取得して一般道を走った時にどう感じるかは未知数。

 ZR-Vは、ガソリンモデルとハイブリッドモデルそれぞれに「X」「Z」の2グレードを設定していて、どちらも2WD(FF)と4WDを選択可能。今回はガソリンモデルの2WD(FF)と、シビックに続きSUVでは初搭載となる「スポーツe:HEV」のハイブリッドモデル(4WD)の2台を試乗する。

 開発トップの小野修一氏曰く「とにかく走り込んで仕上げてきた」という仕上がりはどんなものか? まずは直列4気筒1.5リッターVTECターボエンジンを搭載するガソリンモデルのXグレード(FF)から試乗をスタートした。

ZR-Vのボディサイズは4570×1840×1620mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2655mm、車両重量は1460kg~1630kg(グレード・仕様で異なる)
WLTCモードの燃費値はガソリンモデルが13.9~14.6km/L、ハイブリッドモデルが21.7~22.1km/L

 駐車スペースにおいて他のクルマと並んだ状態でZR-Vを見ると、圧倒的なボリューム感というか、存在感が意外だった。群サイで見た時には比較対象がなかったため、ヴェゼルに近いと思っていたからだ。

 ちなみにZR-Vのボディサイズは4570×1840×1620mm(全長×全幅×全高)で、ヴェゼルのe:HEVのZグレードのボディサイズは4330×1790×1590mm(同)。また、日本ではラインアップから姿を消している海外用モデル「CR-V」は4605×1855×1680mm(同)。つまり、ZR-Vはまさにミドルサイズというわけで、大きすぎず小さすぎず、日本の一般的な駐車枠でも扱いやすいサイズ感といえそうだ。

水平基調でワイドな視界が特徴
ステアリングはZグレードが本革(スムースレザー)巻きで、Xグレードはプライムスムース
ハイブリッドモデルのシフト操作はボタンのみ。ガソリンモデルはシフトレバーとなる
視認性の高い10.2インチのデジタルグラフィックメーターを採用
後席は6:4の可倒式
後席を倒すとかなりフラットで広いスペースとなる
ZグレードはBOSEのプレミアムサウンドシステム(12スピーカー)を標準装備

 FFの1.5リッターターボのXグレードは、フェンダーアーチがブラックとなりSUV感は満載だ。インテリアはシビックの兄弟らしく共通する部分も多い。ダッシュボードは低めに抑えられているし、Aピラーは細く、ボンネットの盛り上がりもあって見切りはしやすい。パーキングスピードにおける扱いやすさはなかなかだ。ただ、オプションの大画面ナビはその視界をややスポイルしてしまうところが気になった。

ガソリンモデルのXグレードは294万9100円。ボディカラーはプレミアムクリスタルブルー・メタリック

 走り出すと低速からしっかりとトルクを生み出す1.5リッターエンジンが爽快にスピードを重ねていく。大径タイヤに合わせてファイナルギアやトルク特性をシビックとは変更し、合わせ込んできた結果だろう。実用性も爽快な吹け上がりも必要十分だ。また、フットワーク系の軽快な感覚もよく、しなやかにギャップを吸収してくれるところが好感触。

ガソリンモデル用の直列4気筒1.5リッターVTECターボエンジンは、最高出力178PS(131kW)/6000rpm、最大トルク240Nm/1700-4500rpmを発生。トランスミッションはCVTが組み合わせられている
Xグレードは18インチ「ビューターグレー」のアルミホイールを履く。ガソリンモデルのタイヤはブリヂストンのアレンザで、装着サイズは225/55R18
Xグレードの内装はプライムスムース×ファブリックのコンビシートを採用
ハイブリッドモデル用の直列4気筒2.0リッター直噴エンジンは、最高出力141PS(104kW)/6000rpm、最大トルク182Nm/4500rpmで、モーターは最高出力184PS(135kW)/5000-6000rpm、最大トルク315Nm/0-2000rpmを発生。トランスミッションには2モーター内蔵電気式CVTを組み合わせる
Zグレードは18インチ「ベルリナブラック+切削」のアルミホイール。e:HEVモデルのタイヤは横浜ゴムのアドバンdb(デシベル)で、装着サイズはガソリンモデルと同じ225/55R18
Zグレードの内装は本革シート。また、e:HEVモデルは内装がパール調に仕上げられている

 高速道路に乗ってコーナリングしてもグラつくことなく安定して駆け抜けてくれる。リバウンドスプリングを備えたショックアブソーバー、そしてCR-V譲りのマルチリンクがうまく機能しているのだろう。加えて試乗車は車重1460kgに収められており、だからこそ軽快さが際立つという側面もある。確実にシビックの延長上にいるそのテイストは、シビックの上級グレード的な仕上がりでかなりアリな1台。低μ路に出向くことがない都市部のユーザーであればオススメのグレードといえるだろう。

e:HEVモデルのZグレードは411万9500円。ボディカラーはスーパープラチナグレー・メタリック

 続いて試乗したのはe:HEV搭載のZグレードの4WD仕様。すなわち最上級モデルである。フェンダーアーチはボディ同色で高級感が漂う。また、本革シートとセンターコンソールやダッシュボードの一部が統一され、より上質に仕上がったインテリアは贅沢な空間を生み出してくれている。それとマッチしているのはやはりe:HEVの静粛性の高さだろう。

Zグレードはより上質な内装に仕上がっていた

 滑らかな走りだしから加速体勢に移行した際の強烈なダッシュもまた魅力のひとつ。試乗車は1630kgという重量になり、ドッシリとした安定感も得ている。運動性能的に見ればあまりよくなく、それを収めるためにフットワーク系はやや引き締められる方向になり、やや微振動を感じるシーンが出ているところは少しもったいない。

e:HEVモデルは静粛性が高く、ドッシリとした安定感のある走り

 ただ、それもスピードを高めていくと収まってくる感覚がある。4WDについては群サイで飛ばして試乗した時のように恩恵を感じることは少なかった。やはりその実力は限界域に近い状況で発揮するもの。公道であれば雪道に出かけた時にどうなるかが見どころなのだろう。

 乾燥路を走り出した印象は以上の通り。果たして状況が変化したらこの印象はどう変わるのか? 第2弾の雪上試乗でどんな結果が見えてくるのかが楽しみだ。

今回はドライ路面の試乗だったが、次回は雪道でのインプレッションをお届けしたい
ミドルサイズSUVとはいえラゲッジスペースの収容許容量はなかなかのもの。本格的なロードバイク2台や、9.5インチのゴルフバッグを3個積めるほか、流行りのアウトドアのデイキャンプや車中泊もこなせ、使い勝手もよい
橋本洋平

学生時代は機械工学を専攻する一方、サーキットにおいてフォーミュラカーでドライビングテクニックの修業に励む。その後は自動車雑誌の編集部に就職し、2003年にフリーランスとして独立。2019年に「86/BRZ Race クラブマンEX」でシリーズチャンピオンを獲得するなどドライビング特化型なため、走りの評価はとにかく細かい。最近は先進運転支援システムの仕上がりにも興味を持っている。また、クルマ単体だけでなくタイヤにもうるさい一面を持ち、夏タイヤだけでなく、冬タイヤの乗り比べ経験も豊富。現在の愛車はユーノスロードスター(NA)、ジムニー(JB64W)、MINIクロスオーバー、フェアレディZ(RZ34・納車待ち)。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:安田 剛