試乗記

ルノー「アルカナ E-TECH FULL HYBRID」でメディア対抗プチ燃費チャレンジ “本気になったらダメ!”なガチ勝負!?

ルノー「アルカナ E-TECH FULL HYBRID」でプチ燃費チャレンジ!

 ルノー・ジャポンがアルカナ/ルーテシア E-TECH エンジニアードの試乗会と合わせて、通算2回目となる燃費チャレンジを開催した。正確には試乗会場である川崎キングスカイフロントから千葉県君津市にある「かずさ4号公園」までの約90kmを、アルカナ E-TECH FULL HYBRIDで往復する“プチ”燃費チャレンジだ。

「本気になっちゃ、ダメですからね!」

 ブリーフィングでは、ルノー・ジャポン広報部の担当者が笑顔で注意を呼びかける。

 しかし、そんなことは問題じゃない。

 われわれCar Watchチームは前回の燃費チャレンジで横浜→愛媛800kmのトライアルに挑み、3.1L/100km(32.3km/L)という記録を出した。しかしトップは3.0L/100km(33.3km/L)の燃費を叩き出し、本当にわずかな差で辛酸をなめているのだ。

 そんな私たちにとって、これは願ってもないリベンジのチャンスなのだ!

ちなみに前回、Car Watchチームは3.1L/100kmの高燃費を出しながらも、総合順位は7位だった。これは1位~3位が3.0L/100kmの燃費を出し、10位まで3.1L/kmの燃費を出したからで、出発から到着までの所要時間で着順が決められた。Car Watchチームは出発日前日に車両を引き取って明け方に出発したため、トータルの所要時間が多くなってしまったのだ。とはいえ「狙うは優勝、2位以下は必要なし!」の気合いで臨んだから、まったく悔いなし! ……いや、ちょっと悔しい(笑)

 しかしルノー・ジャポンも、こうしたジャーナリストや編集者たちの負けず嫌いをとっくに心得ており、「本気になっちゃ、ダメですからね!」の冒頭に戻るわけだ。そしてこの猛暑にエアコンを切って体調を崩したり、高速道路の最低速度を無視したり、ムチャをしないようにと、出発前にシッカリ釘を刺してきた。

 ルールもよく考えられていた。今回は所要時間が2時間に定められており、また優勝扱いとなるのは、1位ではなく「2番手」なのだ。そしてF1 第11戦イギリスGPにおけるBWTアルピーヌのエステバン・オコン選手と、ピエール・ガスリー選手の順位と同じチームも「ピエール・エルメのスイーツ」が獲得できるという、小粋で緩~いレギュレーションとなっていた。

 当然筆者は、スイーツよりも1位という名誉を欲していた。ルノー・ジャポン広報氏の注意にはうんうんと頷き、エアコンもアクセルを多めに踏み込むときしか切らず、走りは“ガチ”で行なった。

出発前の記念撮影。目指すは優勝扱いの2位ではなく、1位の名誉!

 E-TECH FULL HYBRIDで高燃費を出すコツがあるとすればそれは、やはりいかにエンジンをかけないかだろう。

 走行は当然、「エコ」モード。このハイブリッドは街中でも50km/hくらいまで余裕でモーター走行してくれるから、気をつけるのはバッテリ残量を減らしすぎないことと、急激にアクセルを踏み込んでエンジンを目覚めさせないことだと踏んだ。

 とはいえバッテリの充電ロジックがさっぱり分からないから、ものごとそう簡単にはいかない。電池残量が8割近く残っていても“ブーン”とエンジンが発電を始めることもあるし、半分近くまで何ごとも起こらないときもある。

 ドライバーがやるべき第一の仕事は、繊細なアクセル操作だ。とにかく、エンジンが作動しない領域だけを使うように心がける。そのためには常に前後の交通状況を把握し、急加速せず走れるルートも先読みしなくてはならない。

 大変なのは、上り坂だ。ルーテシアに比べ160kg重たいアルカナは、勢いを失うとすぐさまエンジンを起動する。だからなるべく坂道が来る前に、勢いをつけておかねばならない。

 高速道路では、大型車の背中を借りて空気抵抗を減らす。大型車ほどゆっくり走ってくれるから、まわりの交通も妨げないで済む。

 意外だったのはルーテシアより大きく重たいアルカナが、状況次第では高速道路より一般道の方が高燃費だったことだ。

 これは川崎~君津間の往路に、上り坂が多かったことがまず一因。特にアクアライン後半から金田料金所の上り坂は厳しく、木更津ジャンクション以降の館山自動車道も、緩やかだが長い坂道になっていた。

 EV走行は上り坂だと、ある程度の勢いがない限り空走できず、うっすらとでもアクセルを踏み続けなければならない。またその間は回生ブレーキによる充電もできないから、踏めば踏んだだけ電池が減って、さらにはエンジンがかかるわけだ。

 こうなったときの燃費の落ち幅は、当然ながら車重の分だけルーテシアで経験したときよりも激しかった。それまで30km/L台をギリギリ保っていた数字が、どんどん減って27km/L台まで落ちていく。

 そんなときはすぐさまアクセルを抜いてエンジンの作動を止めたり、再び少し踏んでモーターだけで走り続けたりという涙ぐましい抵抗も試みた。また逆に、少し深めに踏み込んで勢いをつけたりもしてみたが、結局EVモードに入るアルゴリズムは最後まで分からなかった。

 対して街中は前述の通り、アクセルさえ踏み込まなければほぼモーターのみで走れる。なおかつ空走や回生が使えるから、どんどん燃費が伸びるのだ。

 下り坂が主体となった復路は、往路の苦労がウソのように燃費を伸ばした。最終的には大台となる30km/Lを超え、ついに31.5km/Lをマーク。ルノー・チームが27km/L台だというのは事前に聞いていたから、これだけ大差を付ければトップは間違いなし! と確信した。

目的地のかずさ4号公園で、ルノー・ジャポンに提示する証拠写真を撮影。往路だけでもなかなかいい燃費で、復路に期待がかかる

 だがしかし。

 上には上がいるもので、またしてもわれわれは負けてしまった。

 一番燃費がよかったのはGENROQチームで、なんとその燃費は31.6km/Lだったという。わずかに100m、およばなかったというのである。

 慢心せずに、もう少しだけ街中を迂回しておくべきだったか。やっぱりエアコンを、完全オフにして走るべきだったのか……。しかしながら担当編集女史はピエール・エルメの夏限定スイーツ獲得に握りこぶしを作っていた。ちなみに週末のF1はオコンがリタイアで、ガスリーは18番手だった。

総走行距離87.1km、燃費は31.5km/Lを記録! これは勝った!! と思った。思ったが……1位のGENROQチームは総走行距離87.0kmで、燃費は31.6km/L。たった100m、0.1km/Lの差でCar Watchチームは2位となった……

 ということで今回も参加車の全てがWLTCモード燃費22.8km/Lを大きく上まわったルノーの燃費チャレンジだったが、本来このE-TECH FULL HYBRIDの素晴らしさは、こうしたガチ燃費ではなく、「実用燃費の高さ」にある。街中はもちろん、特に国産ハイブリッドが苦手とする80km/h以上の領域で、2段のモーター用、4段のエンジン用ギヤを駆使しながらストレスなく燃費性能を高めてくれる走りが素晴らしいのだ。

 だから次回は、E-TECH FULL HYBRIDのよさが伝えられるチャレンジをルノー・ジャポンには期待したい。そしてそのときこそCar Watchチームは、1番を取るつもりだ。

山田弘樹

1971年6月30日 東京都出身
A.J.A.J.(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。

自動車雑誌「Tipo」の副編集長を経てフリーランスに。
編集部在籍時代に参戦した「VW GTi CUP」からレース活動も始め、各種ワンメイクレースを経てスーパーFJ、スーパー耐久にも参戦。この経験を活かし、モータージャーナリストとして執筆活動中。またジャーナリスト活動と並行してレースレポートや、イベント活動も行なう。

Photo:高橋 学