試乗記

一部改良された「GRカローラ」に試乗、締結剛性向上ボルトや新型バンパーダクトの効果を一般道で確認

一部改良されたGRカローラ。締結剛性向上ボルトや新型バンパーダクトなどのアイテムで質感を向上させた

一部改良されたGRカローラ

「GRヤリス」の機動力とカローラの居住性を合わせ持った「GRカローラ」は、2022年12月2日の申し込み開始直後に注文が殺到。しかしながらGRヤリス、GRカローラの生産は専用ラインで行なわれ、半導体不足などもあり限られた生産数の抽選販売となっていた。

 それから8か月が経過し、新たなGRカローラの抽選販売が8月23日から開始された。予定台数は550台で初回同様予約殺到が予想される。

GRカローラRZ 商談申込抽選受付

https://toyota.jp/cmpnform/pub/jp/grcorolla_rz2023

一部改良されたGRカローラ。外観の違いはない
リアまわりの変更もない。改良部品の投入で質感向上を果たした。現行ユーザーへのアップデートも検討している

 このGRカローラは一部改良が行なわれており、改良は部品の仕様変更や追加のため、現行車(初回の抽選販売車)にも適用できるよう考えられている。新たに用意された特別色以外は同じ仕様にできる(550台の販売車のうち50台は鮮やかなブルーのシアンメタリックとなる)。

トヨタ東京本社に展示されていた特別色のシアンメタリック
明るい印象のブルー

 2023年の改良点はドライブフィールの向上に絞られている。改良された部品を見ると驚くほどシンプルだ。4本の締結剛性向上ボルトと左右2セットのインテークダクト、それにアルミテープ。付け加えてリアのアース線がある。

 ボルトはフロントのサスペンションメンバーとステアリングギヤボックスを締結する2本のボルト。リアもサスペンションメンバーとボディを締結する太い2本のボルト。フロントはボルト径は変わらず6角部のフランジをリブ付きに形状変更。リアは6角部を22mmから24mmに上げ、何れも目的は締結面の剛性アップになる。

 フロントバンパーダクトは外から見ただけでは全く分からないが、出口の形状を空気がタイヤのぎりぎり外側を流れるように角度変更が行なわれている。また前後バンパーの4隅に波状模様の入ったアルミテープが縦に貼られた。

 GRカローラでは重量配分の関係でバッテリがリアに搭載されているが、そのアース線がボディによりダイレクトに流れるように追加されている。

 以上のようにシンプルなアップデートだが、その効果はステアリングフィールに小さくない影響を与えた。

フロントのボルト。左が現行、右が一部改良のリブ付き。フランジにリブが入っている
こちらはリアのボルト。左が現行、右が一部改良、一見しただけでは分からない
リアボルトの頭を比較してみたところ。左が現行、右が一部改良。22mmと24mmの差が見てとれる
フロントバンパーダクトも変更されている
アルミテープの追加はこの位置の裏側に
リアはこの辺り
右下のようにダブルボルトでアースが行なわれている

GRカローラがさらに「スッキリとしたドライブフィール」に

首都高速や一般道を試乗

 GRカローラは満足度の高いスポーツセダンだが、ステアリングの切り始めに不感帯があり、ステアリングレスポンスのわずかな遅れと、ステアリングを切り増すと操舵力の連続性が変わる現象を感じていた。わずかなことで操縦性に大きな変化があるかと言えばそうでもない。ましてラップタイムに差が出るかと言えば影響はないだろう。

 しかしGRが目指すドライバーと一体感がある気持ちのよいドライブフィールにとっては見過ごせない点でもあり、この小さなこだわりと積み重ねがGRの質の向上につながり、味になってゆく。

 走り出してすぐに感じたのはわずかなハンドル操作でのダイレクト感。指1本ぐらいの動きでジワリとした感触の差があり、オヤと感じた。レスポンスの差が長い時間軸で分かるのがこの走り始めだ。

 また交差点の角を曲がるときでも操舵力の変化が小さく、一定の操舵リズムでステアリングを切ることができるのも発見だ。逆にこれまで何気なく補正しながらステアリング操作をしていたのが分かった。

 また高速道路での直進安定性もしっとりとした保舵力で、いわゆるスワリがよくなっている。バンパーダクトにわずかに角度を付けた整流効果は意外なほど大きかった。

 コーナリングの安定感と言えば、中速で長いコーナーをトレースしたときに、ステアリングをわずかに修正していた量が少なくなったように感じた。

 現行型と改良型で同じコーナーを同じ速度でトレースした違いで、この差もこれまで見過ごしていた程度のものだった。

 数字に表われないものとして、エンジンのレスポンス、それもアクセルペダルをわずかに踏んだときに感じるアクセルのツキもよくなったように感じた。こちらはアースによるものとのことで、クルマの電気の整流効果だ。電気の量は意外なところでセンサーなどの動きをじゃましていると言われており、アーシングは以前からの課題であった。

 今回の一部改良は、ひと言で言えば爽快なドライブを楽しめるGRカローラがさらに「スッキリとしたドライブフィール」に整えられた。今回は、現行型のGRカローラと新たに改良が加えられたGRカローラを乗り比べたため、部品単体ごとの効果は不明だ。従来のGRカローラのオーナーはこれらの部品を単独でアップデートしていってもおもしろいし、GRではセットでのアップデート施策も用意しているようだ。

 大きな部品を変えるのではなく、地道に改良を重ねてドライブフィールの質を高める、GRらしい改善の道だ。

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。