試乗記
NISMOがカスタムした「フェアレディZ NISMO」「スカイライン NISMO」試乗 最新サスペンションなどで走りはどう変わった?
ワークスチューニンググループ合同試乗会2024(NISMO編)
2024年11月19日 08:10
オーリンズベースの最新サスペンションを搭載するフェアレディZ NISMO
いまは元気のない話題ばかりが目立つ日産自動車だが、カスタマイズの世界は真逆だ。日産車のチューニングパーツを送り出す日産直系のNISMO(日産モータースポーツ&カスタマイズ)は、フェアレディZ NISMOとスカイライン NISMOに対し、数々のアイテムをリリースし始めている。ベースモデルの時点でもすでにNISMOの手が入っている車両を、さらにイジったらどんな世界が見えてくるのか? 1台ずつ紹介していくことにしよう。
フェアレディZ NISMOでは、装着されたばかりだという全長調整式のサスペンションキットが今回の見どころの1つだ。オーリンズベースで仕立てられたそれは、街乗りにおける乗り心地を大切にしつつも、クローズドコースにおけるスポーツ走行をきちんと受け入れるというコンセプトで仕立てられた足まわりだ。
内容としてはフロント12Kgf/mm、リア13Kgf/mmのスプリングをセット。減衰力は20段調整となり、試乗車はフロント7段、リア8段にセット(数が多いほど硬い設定)。車高は前後10mmダウン。ホイールは試作品のレイズベースのLM GT4という鍛造品を奢り、タイヤは純正サイズの横浜ゴム「ADVAN NEOVA AD09」を装着していた。
それらに合わせるようにLSDも改められている。Zはノーマルの時点で機械式LSDがすでにインストールされているが、スポーツ走行を行なった際には効きが甘くなってしまうシーンがあり、そこを改善したいというのが主な狙いだそうだ。とはいえ、街乗りにおける快適性を損なわないように、作動音を出ないようにするといった対策も行なっている。さらに、LSDの効きを安定して出すためにデフオイルクーラーもセットしており、それがテールから顔を覗かせている。
エンジンはノーマルとなるが、スポーツリセッティングというコンピュータチューニングを行ないスピードリミッターのみを解除。マフラーはフロントからテールエンドまで一気に変更できるスポーツチタンマフラーを採用。これは純正マフラーから約33%も軽く、7.8kg減を実現している。
走らせてみると、真っ先に感じるのはそのスポーツチタンマフラーだった。甲高く爽快な音色を与えてくれるそれは、スピーカーが発する擬似音を追い越すような勢いが感じられるところが心地いい。スポーツ走行をする際にはかなり気分を高めてくれる。一方で街乗り想定で走ってみてもこもり音がなく、音で疲れるようなことがないところも好印象だ。ややパワーアップされたかのような感覚を得られるところもうれしい。
シャシーの仕上がりはなかなか機敏だ。ステアリングを切った瞬間からクルマ全体が応答してくる感覚に溢れている。けれどもピーキーにはなっておらず、しなやかさも忘れてはいない。試乗したモビリティリゾートもてぎの南コースは、コース途中に段差があり、そこでホップしてしまうようなところがあるのだが、その際にもリアの接地が薄れることなく、きちんと追従して安定性もトラクションも確保してくれる。これは効きが増したLSDのおかげもあるのだろう。安定方向に振られたことで、どんな路面状況でも安心して走れるだろう。
一方で外周路において街乗りをしてみても、ノーマルでは突き上げるようなシーンであったとしても、角が丸い印象がありしなやかさも忘れていないところが印象的だ。LSDの作動音も出ていないし、これならたしかに街乗りからサーキットまでバランスよく走れそうだ。
ちなみに、これらのチューニングパーツは基準車に対しても装着が可能とのこと。Zオーナーの1人としては、かなり心惹かれるアイテムばかりだった。
スカイライン NISMOはスポーツリセッティングがTYPE-2へと進化
スカイライン NISMOについても基本的なチューニング方向は同様だ。ただ、大きく異なるのはコンピュータチューニングのスポーツリセッティングがTYPE-2へと進化したことだ。これはSTANDARDモードにおける初期~中間のスロットルマップを変更し、さらにDレンジにおけるシフトスケジュールを改めたことがポイントだ。ノーマルではなかなかキックダウンを行なわず、高いギヤをキープしてビッグトルクで走らせる感覚がどう改まっているのかが注目だ。また、スポーツチタンマフラーはセンターから後ろを交換するタイプではあるが、純正比50%減となる-10.6kgを達成している。
足まわりはZと同様のオーリンズベース全長調整式サスペンションを採用。スプリングはフロント12Kgf/mm、リア13Kgf/mmをセット。減衰力は20段調整となり、試乗車はフロント5段、リア10段にセット(数が多いほど硬い設定)。コンセプトもZと同様で、タイヤチョイスも純正サイズのADVAN NEOVA AD09。ホイールはもちろん試作品のLM GT4である。加えてセットされる機械式LSDやホイールも同じ考え方だ。
まずはスポーツリセッティングTYPE-2の感触を確かめるために、STANDARDモードに入れてDレンジで走ってみる。すると、アクセルの踏み加減にリニアに応答するところが好感触。ギヤをホールドする傾向だったシフトスケジュールは、素早く踏み込めば即座に下のギヤにキックダウンしてくれるから爽快だ。これならZの9速ATじゃなく7速ATでも納得できる。
のちにマニュアルモードに入れてスポーツ走行を行なうと、しっかりとしたトラクションを得られるLSDを装着したおかげで、FRらしいスライド走行も難なく許容するようになったところもマル。爽快さが増しつつも程よい音色を残すマフラーの演出もあり、走りのスカイライン復活といった感覚がより一層増していた。
フットワークはZに比べれば重量もあるためしなやかさが増した感覚がある。けれども、鈍重にはならずキビキビとした身のこなしと、日常域におけるしなやかさをうまくバランスさせた仕上がりがあり、オールマイティな作りであることが感じられた。スポーツセダンとしてはちょうどいい落としどころなのかもしれない。
これらのアイテムはスポーツリセッティング以外はスカイライン 400Rにも使うことが可能となっている。スカイライン NISMOの登場でライバル心が芽生えてきたユーザーには特にオススメだ。
こうした現行車両向けのパーツラインアップだけでなく、今回はR32 スカイラインGT-R向けのNISMOブランド40周年記念パーツの紹介もあった。小文字のNISMOではなく、かつての大文字NISMOロゴを再現したそれらのパーツは、2025年3月末まで受注する。新車登場時にタイムスリップする最後のチャンスといっていい。あらゆる施策を行なってきたNISMOの後押しによって、日産が少しでも元気を取り戻してくれることを期待したい。