試乗記
三菱自動車「トライトン」、雪上でスーパーセレクト4WD-IIの威力を体感
2025年2月6日 12:05
どの様な路面でも走りぬくのがトライトンの信条
雪上ではヘビーデューティー、ライトトラック「トライトン」にも試乗させてもらった。すでにモータースポーツではアジアクロスカントリーラリーで活躍するなど三菱自動車のモータースポーツ活動を牽引し、三菱自動車らしいタフな4WDシステムをアピールしている。どの様な路面でも走りぬくのを信条とする。
トライトンの4WDシステムはアウトランダーPHEVのモーター制御とは別物だが、三菱自動車が培ってきたパジェロ以来の4WD技術を土台に、フルタイムとパートタイムの利点を使いやすく進化させたスーパーセレクト4WD-IIになる。
ベースはFRで荷物をたくさん積むと後輪荷重が大きくなり駆動力もかかりやすい。路面条件がわるくなればダイヤル1つで4輪駆動になる。前後に加わるトルクによってすべりを制御するトルセンセンターデフを持ち、コーナーリングブレーキとは無縁だ。さらに副変速機を持ち4WDのローギヤモードも選択できる。また4WDではセンターデフロックモードがあり、強力なトラクションがかかる。そしてドライバーに運転する感覚をダイレクトに伝えてくれる。
悪路ではリアデフのロックスイッチを使えば岩場や泥濘地での脱出には効果抜群だ。ブレーキは4輪独立制御のブレーキAYCを取り入れており、コーナーも積極的に曲げようとするのもS-AWCに近い。
エンジンは2.4リッターの直列4気筒ディーゼルターボで、480Nmのトルクと204PSの出力を出す。このクラスの他社のディーゼルターボより排気量は小さいが、ほぼ同等の出力を出している。
トライトンもドライブモードがあり、NORMALとECOを基本にGRAVEL、SNOW、MUD、ROCK、SANDから選べる。それぞれ路面にあった出力とブレーキAYCで旋回のしやすさ、路面によっては効果を弱めるASC(アクティブスタビリティコントロール)によりコントロールの違いが設定される。
超ロングホイールベースとは思えないほど軽快
早速コースに出る。装着タイヤはブリヂストンのスタッドレスタイヤ「ブリザック DM-V3」(265/60R18)である。
最初から4Hを選んで走るがコースは予想以上にうねっており、うっかり雪に隠された罠にハマってしまった。連続した凹凸路面がトライトンのホイールベースとショックアブソーバーの減衰力の谷間に入ってしまった。周期が合うとアクセルオフで上下動が収束するまで待つしかない。キャビンの中は大騒ぎとなったが、やっと激しい上下動から脱出して急な上り坂に入るものの、途中で上り切れなくなった。雪と氷、泥がまじりあった路面に負けてスタックするも、4HLcにするとたちまち上ってしまった。
エンジンは出力のある回転域まで上がろうとする。もう少し低速回転でのトルクが出ているとより粘り強く走れそうだが、潔く小排気量でパワーを出しているところに三菱自動車らしさを感じる。省エネ化と力強さの現在の回答だろう。
ドライブモードをSNOWにすると、すべりやすい路面でもハンドルの応答性が上がるために操舵量が減っている。しかしさっきの洗礼が尾を引いて、最初のラップは粘り強く走らせることに撤した。しかし上り坂やで泥の深いところでは勢いをつける必要からアクセルを大きめに踏んでみる。上れなかった登坂路では速度を乗せたまま簡単に上り切った。試しに次の登坂路では途中で停車して発進しても4LLc、リアデフのロックでならどの坂もあっけなく上り切った。
モードドライブではブレーキAYCの効きを薄めたMUDやトラクションコントロールの薄いSANDで雪を走るとどのような動きになるのか、そして素性のよいトライトンのシャーシー性能の素の状態をみるのもおもしろそうだった。
今回のコースでは4H、4HLc、4LLc、それにノーマルとSNOWモードで走ったが基本的には今回のような悪路でも4HLcで大抵の難所は乗り切れる。しかもヨー方向の姿勢も安定している。
キビキビと走るところは3130mmの超ロングホイールベースとは思えないほど軽快。SNOWモードもAYCが効果的に機能し、サイズを感じさせない走りを見せた。また出力を絞るだけでなく効率よい駆動力を出しているのが好ましい。これまでトラクション制御が強かったSNOWモードも見なおす機会になった。
そして広大な大地にGRAVELとMUDが多くある北海道ではトライトンが似合い、実際に多くのトライトンを見かけた。元気よく走る姿は気持がいい。