試乗記
日産新型「パトロール」試乗、日本での販売の可能性も出てきた8シーターSUVの実力やいかに?
2025年5月21日 12:00
メイドinジャパンの新型パトロール
2024年末にサウジアラビアで試乗してきた日産「パトロール」と日本で再会した。場所はいま閉鎖されるのではと話題の神奈川県横須賀市にある追浜工場脇のグランドライブというテストコース。いよいよ日本上陸!?
いやいや、このパトロール、実はエンジンは福島産で車体の組み上げは福岡。つまりは正真正銘のメイドinジャパンなのである。残念ながら現状では左ハンドル仕様しか存在せずなのだが、今後は豪州向けの右ハンドルを作る計画があることを明かしている。ならば日本仕様を作ることだって難しくはないはず。そもそもパトロールは日本名サファリだった1台であり、2007年までは売っていたのだから(これは5代目で新型は7代目)。だからこそ、わざわざ昨年からジワジワと僕らに試乗させているのだとにらんでいる。
そんなわけで久々の対面となったパトロールは、改めて圧倒的な存在感であることに気付かされる。先代とは違う新規のラダーフレームを採用する新型パトロールのサイズは5350×2030×1945mm(全長×全幅×全高)でホイールベースは3075mm。車重は2813kgにも到達する、3列シート8人乗りである。日本じゃ持て余すこと請け合いだが、考えてみれば近しいサイズのランクル、Gクラス、ディスカバリーなどがしょっちゅう行き交う東京にいると、パトロールはちょっと大きいくらいだしなんとかなるかという気にもなってくる。
それを後押ししているのがインパネに備えられた14.3インチ×2が生み出すカメラ性能のよさだった。フロント下側が合成画像によってまるでシースルーで確認できること、さらにはそれを1画面だけでなく2画面でも広く確認できるところにサイズ的恐怖感が薄れてきた。タイヤはどこを通るのか? 壁まではどれくらいの余裕があるのか? そしてブラインドの交差点では地点登録しておけば瞬時にモニターが立ち上がり、隠れた自転車などを即座に確認できるようになっている。これはかなりありがたい装備だ。
また、日産ブランドとしては初となるKlipsch製のプレミアムオーディオや華やかな色合いのシートを採用したこと、乗降性を損なわないように車高を174mmまで下げられるエアサスが準備されていることもパトロールの魅力。さすがは中東の富裕層向けに仕立てられた1台なのだと納得できる。
ただ、今回テストコースで試乗するのはエアサス仕様ではなくコイルスプリングとeダンパーを備えたモデルで車高は高いまま。タイヤはエアサスの22インチに対し、コチラは20インチとなっている。シティバンパーを装備しているため、エアサスのように車高を上げてアプローチアングル、デパーチャーアングル、ランプブレークオーバーアングルを稼ぐなどといった芸当はできないが、日本のオンロードやちょっとしたオフロードを走るくらいならこれでも十分。それよりも価格を少しでも抑えて日本での販売を模索しようということか!? いずれにしても、全部盛りもいいけれど現実的な売れ線仕様となりそうなものもチェックしてみてね、ということなのだろう。
ロングドライブも疲れ知らず
走らせてみると、フェアレディZに搭載されたVR30DDTTのストロークアップ版となるVR35DDTTを搭載したパワーユニットは、この巨体をストレスなくスッと動かし、高速域まで一気に加速させてくれることに感心する。さすがは最高出力425PS、最大トルク700Nmである。
スポーツモードにしてeダンパーを引き締めれば旋回性能もなかなか。今回はエアボリュームが豊かな20インチということもあり、エアサス&22インチほどのキビキビとした振る舞いではなかったが、これでも十分に納得できる運動性能を身につけているように感じる。そしてロングホイールベースによってビシッと真っ直ぐ突き進む感覚も豊か。これならロングドライブをしても疲れ知らずだろう。
ただ、一方で低速域は特に後席における微振動が気になった。新たなラダーフレームのクセか、はたまた跳ね上げ式となった2列目シートの剛性がまだ足りないのか。日本の道に合わせるのであれば、そのあたりのマナーをもう少し盛ってほしいというのが現状のリクエストだ。
ただ、他はもう存在感から走りまで納得できるところしかない。久々に目がハートになるちょっとワクワクできる1台だった。いろいろと厳しいのだろうけれど、なんとかパトロールの日本登場にこぎ着けてほしい。頑張れ日産!