試乗記
ホンダ「アコード」新グレード「e:HEV Honda SENSING 360+」に乗った! 量販モデル初のハンズオフ機能を体験
2025年7月15日 07:07
- 2025年5月30日 発売
- 599万9400円
2024年3月に日本で発売を開始したアコードが早くも進化した。初期モデルとの主な違いは運転支援システムで、「Honda SENSING 360」が「Honda SENSING 360+」になった。たった「+」一文字ではあるが、今度のシステムは自動車専用道路において70km/h以上の速度が出ている場合はハンズオフ(手放し)が可能となっている。
そもそも初期モデルの「Honda SENSING 360」も、フロントセンサーカメラやフロントエンブレムと前後コーナーには合計5台のミリ波レーダーを配置。近接を捉えるために6台のソナーセンサーを備えるなど、かなり奢られたシステムだった。
今度の「+」ではフロントセンサーカメラを変更したほか、ドライバーモニタリングカメラ、地図ECU+高精度地図、ステアリングインジケーターなどを追加。ルーフに備えられるアンテナは中身も形も変更している。このアンテナは従来ラジオや地デジのアンテナが入っていたが、それらをリアガラスへと移設。
新型ではGNSS(Global Navigation Satelite System)アンテナを入れ、やや大きくなっている。細かなところではあるが、このアンテナの拡大はホンダ社内基準をクリアするための試験も必要だったと聞いた。それは寒冷地におけるリアガラスの視界の確保で、何分以内にリアガラスに張り付いた氷を溶かさなければNGとされるのだとか。
リアガラスに対する空気の当たり方が変わってしまうことから、その試験をやり直し形状を吟味したというからさすがだ。かくしてハンズオフ機能付高度車線内運転支援機能を達成したのである。
また、従来から備わる制御コントローラーでノイズと逆位相となる打ち消し信号を生成し、オーディオスピーカーから音として出力して音の干渉を利用して不快なノイズを低減する「アクティブノイズコントロール」もさらに進化させている。
具体的には、これまでは天井に設けた前後2つのマイクでノイズ情報を収集していたが、今回は新たに「3軸振動センサー」を前後左右に計4個設置。振動センサーはタイヤ振動を適切に検出するために4輪の各ホイールハウス周辺のボディ骨格に設置していて、室内音とタイヤ振動から打ち消すべき低周波ロードノイズを高精度に検出できるようになり、広範囲の周波数域で静粛性を向上させたという。特に荒れた路面で発生する圧迫感を伴うロードノイズの低減に効果があるそうだ。
今回はそんな新たなるアコードを新東名高速自動車道で主に試乗した。とはいえ、高速に入ってシステムを起動させてしまえばあとはクルマにお任せ。感心したのは人の感覚にかなり寄り添ったというか、機械任せでは怖いようなシーンが一切見られなかったこと。
大型トラックの脇を走るようなシーンでは、車線のど真ん中を維持し続けるのではなく、車線内でトラックとの距離を少し空けてくれたりする。
また、コーナリング中には多少イン側を走ることで、アウト側のガードレールまでの距離が近くて怖い、なんてこともない。
さらに、工事区間に突入すると運転支援をやめてステアリングを持つように促してくるところも絶妙。
試乗中は3車線の一番左側を走っていたのだが、一番右側の車線だけが規制されているシーンではハンズオフを可能としていた。隣の車線まで工事区間が広がってきた時、はじめてハンズオフを解除となった制御に感心する。
ちなみに高速道路において人を検知した場合、その後およそ3分間はハンズオフを入れないようになっているのだとか。工事作業員やパイロン規制をしっかりとクルマが認知していることが感じられるところが安心だ。
また、特に好感触だったのはトンネル区間においてハンズオフが途切れることなく、そのままキープして走り続けたことだ。今回試乗した区間にはいくつものトンネルが続いていたのだが、そのいずれでもハンズオフし続けていた。
衛星が途切れるような状況でも周囲をきちんと把握し、高精度地図との連携によって車線をキープし続けて走るロバスト性の高さがとても実用的だと感じた。これは自動運転レベル3を市販車で初めて達成したレジェンドの「Honda SENSING Elite」における知見があってこそ。そこで得た100万kmにわたるデータが元になっているそうだ。
ホンダは2050年に全世界において、ホンダの2輪・4輪が関与する交通事故死者ゼロを目指しているというが、それもきっと夢じゃない。ここまで使えるハンズオフが、ベースモデルのたった40万円アップで搭載可能という現実も、今後の広がりに大いに期待を持てる。
もちろん、そもそもシステムを奢っていたアコードだったから、その程度の金額アップで済んだという話もあるが、いずれにしてもより多くのクルマに展開される日を期待していたい。























