試乗記
ホンダの新型「アコード」、クルマとしての完成度の高さを公道で再確認
2024年8月14日 10:10
ウエットのワインディングでも安心感高く走る
以前クローズドコースの試乗において、エンジンが主役に躍り出たと感じた新型「アコード」。2モーターハイブリッドの「スポーツe:HEV」は、エンジン自体の剛性を改めたことによる爽快なフィーリングから、エネルギーマネージメントまでドライバーの意思に沿ったレスポンスを実現。さらには一体感に溢れ、フラットさ際立つシャシーの仕立ても心地よかった。一般公道でそのスポーティな仕上がりはどう感じるのか?
走ればパワーユニットのフィーリングは常にリニアだ。以前はモーター主体に走らせたのちに、トルクが欲しい時、またはバッテリが少なくなった時に一気にエンジンを始動させるイメージだったが、新型はアクセルにリニアにエンジンが反応を示してくれるようになった感覚だ。「スポーツe:HEV」にはエンジンと車軸を直結できるギヤが備えられているが、それを作動した時にも維持している領域が拡大したところも興味深いポイント。セクセルを踏み込んでいっても簡単にはギヤが解除されず、これまたエンジン主体で走っている領域が長いことも特徴だろう。巡行時のダイレクトな感覚がうれしい。
一方、ワインディングにおいてスポーツモードを使えば、ASC(アクティブサウンドコントロール)が擬似音を出しながらさらに爽快なフィーリングを示す。このASCはかつてのNA時代のVTECの気持ちよさを改めて分析し、それを展開したというだけあって、突き抜けるかのような盛り上がりを感じさせてくれる。
また、クランクやブロック剛性を見直したエンジンは、滑らかな回転フィールを実現。相乗効果によって飛ばすことなくスポーティなフィールを得られるところが好感触だ。さらにパドルシフトは4段階から6段階に減速力を高めることが可能で、その反応も素早い。旧型は0.1G、新型は0.2Gの減速度を生み出すことが可能になったため、ほぼワンペダルでワインディングをクリアすることも可能だ。
そんな時に、モーションマネージメントコントロールがうまく車両の姿勢を作ってくれる。かつてのアジャイルハンドリングシステムは限界域で姿勢を補助するシステムだったが、このモーションマネージメントコントロールは日常域からわずかに作動。ステアリングの操舵角などを見て前後荷重を作り、ドライビングをサポートしている。違和感なくそれが動くため、運転がうまくなったかのような動きを実現している。結果、リアに座ったとしても快適性が高まった感覚だ。
シャシーの仕上がりはそれだけではない。アクティブダンパーシステムは、かつてはヨーと前後の動きだけを見てコントロールしていたが、SRSエアバックのセンサーを活用することで、上下、ロール、ピッチまでを含めた6軸の情報を処理しながらダンパーの減衰力をコントロールすることで、フラット感がかなり増している。一体感のあるスポーティさがありながらも、突き上げ感を感じることはない。後席に座っていても身体が揺さぶられるようなことが少ないところもメリットの1つといっていいだろう。ウエットのワインディングでも安心感高く走っていたことが印象的だ。
セダン復権に繋がることを期待
運動性能だけでなく安全性能の向上も見どころの1つだ。Honda SENSING 360による周辺状況の把握は確実なものとなりつつあり、ACC(アクティブクルーズコントロール)作動時には、割り込みなどの反応も手前から素早く行なえるように。合流などで車間をうまく取ってくれることはかなりの安心感だ。また、再加速時の遅れ感がないところも好感触。ウインカー操作1つで車線変更のハンドル操作支援も行なってくれる。
さらに駐車場にいけばHondaパーキングパイロットがステアリング、アクセル、ブレーキ、シフト操作まで全てを行なってくれる。右寄りとか左寄りにならずきちんと駐車枠内の中央に収めてくれる。これが並列駐車だけでなく、縦列や斜め駐車にも対応しているというから頼もしい。また、Google assistantによる確実な音声操作があることも安全につながっている。このように運動性能だけでなくあらゆるサポートもまたアコードの魅力だ。
いまはセダン劣勢の世の中だが、爽快な運動性能とコンフォート性能、さらには現代のサポートがしっかりと搭載されているアコードは、改めてパートナーとして魅力ある1台に感じる。派手さはないが1台のクルマとしての完成度はかなり高い。この仕上がりがセダン復権に繋がることを期待したい。
だが、もし可能であればあのクルマのように、ワゴンやクロスオーバーなんていうのがあればいいかなとも思えてくる。このまとまりがもっと多くの人に注目される次なる一手が欲しいこともまた事実。この1台だけで終わらせるにはもったいなさすぎると思えるものが新型アコードには存在していた。