試乗記

マイチェンした「ノート オーラ」4WD試乗 実用性向上と日常使いの満足感の高さを実感

2024年6月にマイナーチェンジが行なわれた日産「ノート オーラ」。今回は4WDの「G FOUR」グレードに試乗した

フロントバンパーやホイールデザインがよりスタイリッシュに進化

「ノート オーラ」はノートの上級モデルとして位置づけられており、内外装の質感も向上させてワイドボディを持ったことで差別化が図られた。初のビッグマイナーチェンジでノート オーラの中でもNISMOやAUTOTECHなど、それぞれスポーツ色や質感を向上させたグレードを持つことで、スポーツはNISMOに任せて標準モデルは少し華やかな方向に振っている。

 今回の試乗車はノート オーラの4WDだ。ガーネットレッドとスーパーブラックの2トーンカラーでスポーティな印象。フロントマスクは一気にワイド化され、ヘッドランプも従来オプションだったハイ/ロービーム4連LEDランプで精悍な印象を与える。実際に照射範囲は広くて明るい。

ノート オーラ G FOURの価格は306万1300円。試乗車は特別塗装色ガーネットレッド/スーパーブラック2トーンや、クリアビューパッケージ(ワイパーデアイサー、リアLEDフォグランプ)のほか、ステアリングスイッチ+統合型インターフェイスディスプレイ+USB電源ソケット(Type-A2個、Type-C1個)+ワイヤレス充電器+NissanConnectナビゲーションシステム(地デジ内蔵)+BOSEパーソナルプラスサウンドシステム(8スピーカー)+ETC2.0ユニット+プロパイロット(ナビリンク機能付き)+プロパイロット緊急停止支援システム+SOSコールなどメーカーオプション54万4500円と、ウインドウ撥水処理やドライブレコーダーなどディーラーオプション15万6129円が追加されている
ボディサイズは4045×1735×1525mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2580mmで従来モデルから変更なし。車両重量は1380kg。最小回転半径は5.2m

 アクセントライトは逆L字型で変わらないが、シーケンシャルウィンカー機能が付き、アンダーグリルの左右にもLED補助ランプが埋め込まれている。

 テールランプの形状は基本的に同じだが、ウィンカーがコンビネーションランプの端に置かれていたものが、電動車らしく2本の横長形状に点灯し、視認性もガラリと変わった。

 タイヤはブリヂストン「TURANZA T005A」でサイズは205/50R17 89Vだ。ホイールのデザインは矢車型から格子状に変更された。ロードゴーイングスポーツを標榜するNISMOとの差別化が図られ、同時に重かったホイール重量が軽量化された。

フロントグリルは、日本の伝統工芸を感じさせるデザインのグリルをヘッドランプ下までワイドに広げるとともに、ヘッドランプ下にボディカラーと同色またはダークメタルグレーのアクセントを施した、新時代のデジタルVモーションを採用
リアバンパーはセンター部分に凸を設けることでどっしりとした安定感が増した
見る角度によって光と影が変化するモダンで先進感のあるデザインを採用するとともに、ボディサイドの風の流れをスムーズにして高い空力性能を確保した。軽量化も実現している

 インテリアに目を向けると試乗車「G FOUR」のシート生地は、AURAの頭文字「A」をモチーフにした図案のジャカード織物+合皮になり、従来の横分割横分のスポーツタイプからソフトなイメージになった。着座した時の反発力も柔らかく、個人的には好ましい。

 さらに上級車らしくパワーシートが採用されたことで、ハイト調整やリクライニングなどきめ細かく簡単に行なえるのでメリットは大きい。

 トリムではウッド調パネルの色調が変わり落ち着いたものになった。同時にドアトリムやアームレストもそれに合わせられている。

ノート オーラのインテリア。試乗車の内装色はブラック
前席
後席
ウッド調パネルの色調が明るい茶色から深みのある茶色になった
運転席は電動パワーシートを新たに採用

 室内のレイアウトや操作系は変わっていない。基本操作を覚えるとステアリングスポークに配置されているアナログスイッチで操作できる。ディスプレイから深層に入って操作することがあまりないのは歓迎。走りながらでも操作できるのは合理的だ。

 その他の変更はグローブボックスの容量が増え、さらに2段にしたことで分厚い取説や小物などを分けて収納できることで“使えるグローブボックス”になったこと、さらに後席にタイプCのリングライト付きUSBポートが設けられ、スマホ電源が取れることになったなどノート オーラにふさわしい装備追加がなされた。

ステアリングやシフトなど操作系の変更はなし。シフトまわりのウッド調パネルの色も合わせて深みのある茶色になっている
シート生地はAURAの頭文字「A」をモチーフに押したジャカード織物+合皮を採用
グローブボックスは2段式となり、車検証をしまいやすくするなど利便性が高められた
センターコンソール後部には後席用のUSB Type-Cポートが設けられた。夜でも使いやすいように白LEDのイルミネーションも搭載
ディーラーオプションのトノカバーは、ロープで吊り上がるタイプに変更

誰でも運転しやすいハンドリング特性

マイチェン前のノート オーラをマイカーに持つ日下部氏は新型をどう見る?

 さて試乗。1.2リッターの3気筒エンジン「HR12DE」は、最高出力60kW、最大トルク103Nmで発電し、最高出力100kW/最大トルク300Nmのフロントモーターと最高出力50kW/最大トルク100Nmのリアモーターにエネルギーを供給する。駆動力は前後モーターのトルク配分を精密に変化させ滑りやすいコーナーでも旋回力を得ている。

 ノート オーラ4WDの場合、日産のインテリジェント4WDである「e-FORCE」のネーミングを持たない。左右のブレーキ制御を行なわないからで、操舵初期の応答はわずかに劣るものの、重量が軽くて前後姿勢制御の巧みなノート オーラではe-FORCEの必要性はあまり感じられない。もっとも今回はオンロード試乗なので4WDの効果も分かりにくいが、ノート オーラ4WDの持つ基本性能の高さは心強い。

 ハンドリングは機敏さよりも落ち着きを優先したもので、素直な応答性と舵の効きでライントレース性は少しアンダーステア気味を維持する。グイグイと曲がるというよりも操舵量に見合った反応で誰でも運転しやすい。

 コーナーでの姿勢はリアが少しツッパリ気味だが、前後のロールバランスも適度。タイヤもクルマの性格に合わせた乗り心地とハンドリングのバランスが取れたものだ。

 e-POWERは発電時はエンジン音が速度と関係なく一定リズムで流れ、急加速で電力が必要な場合はエンジン回転が上がる。当然エンジンノイズが大きくなるが、アクセル開度と合ったものではないので最初は違和感が残る。しかしモーターのレスポンスは鋭く、出力に見合った加速をするので追い越し加速も結構速いのだ。そしてエンジンの遮音性は意外と高い。

 ドライブモードは「ECO」「NORMAL」「SPORT」の3つが選べ、センターコンソール上から選択可能。回生ブレーキはECOがもっとも強く、アクセルオフでの姿勢を作りやすい。アクセルレスポンスは鈍いが個人的にはこのモードが一番使いやすい。より強いエンジンブレーキが欲しい時はBレンジを選ぶと、さらに減速度が大きくなる。急な下り坂などでは使いやすそうだ。

 SPORTモードはレスポンスがシャープになる。スイッチオンですぐにグッと前に出る感覚がある。過敏ではないので日常的に選んでも使い勝手はわるくない。そしてNORMALモードは、回生ブレーキを好まないユーザーにピッタリで、アクセルオフでは内燃機を高いギヤで使っているようなような減速感で使える。もっともなじみやすいモードだ。

風切り音やロードノイズなど遮音は高かった

 さて乗り心地は初期型ノート オーラ 4WDよりもリアからの突き上げが緩くなったように感じる。段差や連続した荒れた路面ではリアからの少しバタバタした感触があり、フロントからのピッチングも残っているものの、コンパクトクラスとして十分妥協でき、日常使いでは満足感が高い。

 ADAS系も変更されておらず、アナウンスはないがレーンキープ性の向上や過敏だったレーン逸脱の警報音の減少など、実用性が向上したように感じた。

 燃費はいつもと同じ使い方をして平均16.5km/Lぐらい。心なしかわずかに向上しているような印象を持った。

 ノート オーラはNISMOのビッグマイナーを機にバリエーション展開にメリハリがついた。今回試乗したノート オーラ4WDもちょっと豪華なコンパクトカーにとどまらず雪道も積極的に走れ、装備の質的向上にも磨きがかかった。まだまだノート オーラの発展はありそうだ。

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。

Photo:堤晋一