試乗記
ルノー「キャプチャー」のマイナーチェンジモデルに試乗 大きく変わったフロントデザイン以外に走りはどう違う?
2025年8月19日 07:00
フロントフェイスが激変
2013年に登場した初代キャプチャーは、ユニークなデザインで人気を呼び2014年には欧州コンパクトSUV販売ナンバーワンの座を獲得した。2019年にモデルチェンジした2代目も、翌2020年には欧州SUV全体でのベストセラーとなった。2025年6月までに世界で実に200万台以上がデリバリーされてきた。
そんなBセグメントのコンパクトSUVのパイオニアであるキャプチャーがマイナーチェンジし、新しい外観デザインをはじめ、2つのハイブリッドパワートレーン、エスプリ アルピーヌグレードの設定、運転支援システムの充実など多くの変更を実施した。
ルノーのデザイン責任者であるジル・ヴィダル氏による新しいデザイン言語を反映したフロントフェイスは、薄型のLEDヘッドライトや波模様が広がるようなグリルまわりのブロック模様が印象的だ。縦長のハーフダイヤモンド型LEDデイタイムランプのとなりには空力と冷却のためのエアインテークが配されている。
これに合わせて、ボンネットの厚みを増して水平に伸びたデザインとするなど、周辺のデザインもアレンジされている。これまでと一新されてシャープな印象になり、近未来的でテクノロジー感覚もある。エスプリ アルピーヌには19インチアロイホイールが装着される。
リアはクリアレンズ化したLEDランプや新デザインのバンパーが、よりモダンな印象を高めている。同じ世代の途中でこれほど大きくイメージを変えたケースというのもあまり記憶になく、新しいデザインは同じ車種のマイナーチェンジとは思えないぐらい印象が違う。変更前のデザインもルノーらしくてよかったが、新型の新しくも懐かしい感じのするデザインも、これからルノーの定番になっていくことだろう。
エスプリ アルピーヌのインテリアは、グラデーションのかかったパネルなど各部にブルーを印象的にあしらった中に、トリコロールのアクセントを配するとともに、ロゴ入りバイオスキン&ファブリックコンビシートやTEPレザーステアリングホイールにより、スポーツシックで上質なイメージを演出している。
センターコンソール中央に新たに配されたopenR Linkシステムは、10.4インチの縦型タッチスクリーンで各種操作が行なえるほか、CarPlayとAndroid Autoがワイヤレス接続できる。
リアシートが160mm前後にスライド可能なおかげで、クラストップレベルとなる221mmものニースペースを確保することもできる。ラゲッジ容量も、マイルドハイブリッドはクラストップレベルの536Lを誇り、フルハイブリッド E-TECHも440Lと広い。
2種類のハイブリッド
パワートレーンは、ルノー独自のフルハイブリッド E-TECH(以下「E-TECH」)と、これまでのガソリンエンジンに代えて設定されたマイルドハイブリッドという、ハイブリッドのみのラインアップとなった。エスプリ アルピーヌでは2つのパワートレーンで車両価格に約46万円の差があり、それ以外にマイルドハイブリッドの「テクノ」が389万円という手ごろな価格で設定された。
今回はエスプリ アルピーヌで2つのパワートレーンを乗り比べたところ、ドライブフィールにはそれぞれのよさがあった。
E-TECHはモーター側に2つ、1.6リッター直4自然吸気エンジン側に4つあるギヤを組み合わせた12通りの変速比で、モータースポーツによく用いられるドッグクラッチにより、それぞれが生み出す動力を切れ目なく効率よく引き出している。
ダイレクト感のあるドライブフィールと、輸入車SUVでクラスナンバーワンとなる23.3km/Lの低燃費を実現しているのが特徴で、新型にはバッテリの充電量を40%以上に維持し、モーターのアシストを最適化するE-SAVE機能が新たに採用された。
発進時はエンジンを使用せず、低速時には効率の高いモーターのみで駆動し、車速が高まるにつれてエンジンの出番が増えていくが、平坦な道をタウンスピードの速度域で走る分には、EV走行する割合が非常に高いことが印象的だ。高速巡行時にはエンジン走行が主体となり、再加速時にはモーターのアシストが加わり、より力強い加速を得ることができる。
今回は山中湖畔とその周辺の峠道で上り勾配を走ることも多かったのだが、従来はもう少しパワーが欲しいと感じたように記憶しているところ、あまりそう感じなくなった。さらには、複雑なトルクフローにもかかわらず制御が進化したのか、アクセルレスポンスが向上するとともに走りのスムーズさも増したように思えた。
一方のマイルドハイブリッドは、最大で158PSと270Nmを発生する直4直噴ターボエンジンに、BSG、12Vリチウムイオンバッテリ、7速EDCが組み合わされており、こちらのほうが走りは力強く、ワインディングでも物足りない印象はなかった。パドルシフトを駆使してダイレクト感のある走りも楽しめる。カタログ値で17.4km/Lという燃費は実際にもなかなかよさそうだ。
また、このところコンパクトクラスは3気筒が増えているが、やはり4気筒のほうが音がよく吹け上がりもスムーズで、4気筒のありがたみを両グレードともにあらためて感じた。
持ち味はそれぞれ
見晴らしのよい高めのアイポイントと取りまわしのよい扱いやすいサイズはこれまで通り。フットワークに関する変更は伝えられておらず、両グレードで足まわりのセッティングが共通で、どちらも19インチのミシュラン・eプライマシー2を履いていたが、乗るとだいぶ変わったように感じられた。
心なしか乗り心地がよくなっていて突き上げがなくなり、フラット感が高まり、入力を受け止める側のボディがしっかりしたような印象を受けた。何も伝えられていないが何らかの手当てがされたようだ。
ワインディングで乗るには、よりパワフルで軽快なマイルドハイブリッドのほうが向いている印象だったが、かたやE-TECHの独特の電動感は他では味わえないもので、どういうものかを理解して乗ると、そのよさを実感できるというニュアンスだ。
車検証によると車両重量には90kgの差があり、とくに後軸重に70kgの差があるためかドライブフィールは予想以上に違って、マイルドハイブリッドはより軽快で俊敏な走りが印象的で、乗り心地もやや引き締まっている。どちらもハンドリングは寛容で懐の深い中にも正確に応答して意のままに操れる点では共通している。
先進運転支援システムについては、対向車との前面衝突回避や後側方車両との接触回避をサポートする機能や、ドアを開けた際に後側方から来る車両の接近を警告するドアオープニングアラートが新たに追加された。
見た目も装備もアップデートされ、より魅力的に進化しながらも、価格の上がり幅はそれほど大きくなかったことも念を押しておこう。































