試乗記
プジョー新型「3008」に試乗 新デザイン&新プラットフォームを手に入れたハイブリッドモデルの印象は?
2025年8月15日 14:19
プジョーのコンパクトSUV「3008」がフルモデルチェンジを果たした。
第3世代における話題の中心はやはり電動化で、ステランティスはこの3008から電動車用「STLA Medium」プラットフォームを初めて投入。これを機に3008を、Cセグメントのコンパクトさながらも「次世代フラグシップモデル」と位置づけた。
そんな3008のパワートレーンは、本国仕様ではプラグインハイブリッドもラインアップしているが、日本仕様は1.2リッター直列3気筒マイルドハイブリッド仕様の「3008 Hybrid」と、ピュアEV「E-3008」の2本立てとなった。ちなみにディーゼルユニットは用意されていない。
そして今回の試乗車は、先行して導入されたマイルドハイブリッドモデルの上級仕様「3008 GT Hybrid」だ。
プジョー電動化の旗手として登場した3008は、内外装も近未来的だ。そのボディサイズは全長×全幅×全高が4565×1895×1665mmと、先代「GT」(4450×1840×1630mm[全長×全幅×全高])比でわずかに大きくなっている。
また、そのデザインはキープコンセプトなのだが、その“攻めっぷり”までもが継続されているから古さを感じさせない。
まずそのフロントマスクには、引き続きフレームレスグリルが採用された。ボディ同色のパネルにひし形のグラデーションでグリルを表現したデザインは、内燃機関が電動化へシフトする過程をイメージさせる見事なやり方だ。
プジョーらしさという点では新しくなったエンブレムを真ん中に大きく配置し、ライオンの爪痕をモチーフにしたLEDデイタイムランニングライトでブランドアイデンティティを強調している。
ボディスタイルは電動化の影響だろう、ファストバックスタイルが強くなった。また、プジョーとしては初めてサイドウィンドウモールを隠すデザインを採用し、エッジの効いたキャラクターラインとパネル処理で、力強い都会的な印象を与えるデザインを完成させた。
近未来的な外観のデザインに負けないほど、インテリアも先進的だ。
その核となるのは、進化した「プジョー パノラミック i-Cockpit」だ。21インチの巨大なモニターはドライバー側にゆるやかにラウンドしており、視認性や操作性の向上というメリットももちろんだが、とにかく迫力がある。またモニターの配置も、ダッシュボードに画面が浮かんでいるように見えるフローティングデザインがスタイリッシュだ。
面白いのは先代でドライバー側にラウンドしていたスイッチ類やカップホルダーが、助手席側にまわり込む配置になったこと。確かにモード変更や主要な装置は手を伸ばせば届くところにあるし、あとはパッセンジャーに任せて運転に集中させようという気持ちもわからなくもない。
真っ黒な樹脂パネルではなく、ファブリック柄のダッシュトリムも見た目が明るくエシカルな印象だ。エッジが効いてるのに威圧感がない室内空間はとてもスタイリッシュで居心地がよく、クルマじゃなくて部屋にいるかのような気持ちにさせられる。
そんな3008 Hybridのパワートレーンは、1.2リッターの直列3気筒ターボ(136PS/230Nm)に2つのモーターを組み合わせた48Vマイルドハイブリッドだ。具体的にはエンジン側にベルトドライブ式の発電用P0モーター(16kW/51Nm)、6速e-DTC側に駆動用P2モーターを搭載する2モーター式で、駆動方式はFWD。フィアット「600 Hybrid」に搭載されたものと、全く同じシステムである。
ちなみにそのシステム出力は145PSと控えめだ。フィアット・600 Hybridでも決して俊足とは感じなかったユニットだけに、これが290kgも重たい3008に搭載されたら、きちんと走るのだろうか? と最初は疑問に思った。
しかし街中だと、これが思った以上に、普通に走ってくれた。小さなアクセル開度でも出足が滑らかで、一度走り出せばあとはタイヤがスムーズに転がっていくから、特にトルクの不足を意識しないのだ。
モーターのアシストや可変ジオメトリーターボのブースト制御もうまく協調できているのだろう、小排気量ターボ特有の粗雑なピッチングが起きないのもいい。
SOC(電池残量)との兼ね合いもよかったのだろう、アクセル開度に気をつけながら走らせると、モーターのみで走行することもできた。ある程度走ったらエンジンはかかってしまったが、車内は音・振動ともにとても静かだったから、興ざめすることもなかった。ここら辺は、ピュアEVとボディを共用するメリットかもしれない。
この静粛性と併せて、乗り心地も非常によかった。コシはあるけど角のない、プジョーならではのライドフィールは心地よく、225/55R19サイズのチョイスも、直進安定性と縦バネのクッション性を上手にバランスしていた。今回は後席の試乗ができなかったけれど、これだけ大きなボディをトーションビームで支えているにもかかわらず、不快な跳ね感や剛性の不足を感じなかったのも見事だ。
そしてこの乗り味は、高速巡航でも変わらず保たれた。むしろ速度を上げるほどに乗り心地がフラットになって、ツアラーらしさも高まっていく。
加速の仕方もこうした乗り味にふさわしく滑らかで、ゆっくり踏み込んでいくとそのペースに合わせるかのように、速度をジワジワジワッと上げていく。
ただし急加速が欲しい場合は、残念ながらそのレスポンスがいまひとつだ。フィアット・600 Hybridにはなかった「スポーツモード」も試してみたが、エンジン回転は上がれども劇的な変化はなかった。
よって、もし追い越し加速が必要な場合は、割ときちんとアクセルを踏み込んでやる必要がある。
3008は、この一発のトルクのなさだけが残念だ。感覚的にはモーターの出力を上げるか、1.5リッターくらいの排気量だったらいいのにと思う。
速度アベレージが高くなるヨーロッパにはプラグインハイブリッド仕様があるけれど、4万ユーロ超えの為替を考えると日本導入は非現実的。よりパワフルで洗練された乗り味を求めるなら「E-3008」なのかもしれないが、日本での主軸はこの1.2リッターマイルドハイブリッドになる。今回試乗した「GT Hybrid アルカンタラパッケージ」で558万円という価格を考えると、比較対象としてはDセグメントのスバル「フォレスター」やトヨタ「ハリアー」あたりも見えてくる。
もしここで3008に一発のトルクがあったら、その素敵なインテリアや洗練された乗り心地をもって、十分渡り合えると思うのだが。





























