ニュース

【インタビュー】プジョーの新型「3008」の魅力を電動パワートレーン開発者 リドゥアン・ハバーニ氏やStellantisジャパン 成田仁社長、小川隼平氏に聞いた

2025年7月2日 開催
新型SUV「3008」発表会でプレゼンテーションを行なうPeugeot 電動パワートレインシステム デザインエキスパート リドゥアン・ハバーニ氏

 プジョー(Stellantisジャパン)は7月2日、フルモデルチェンジした新型CセグメントSUV「3008」の発表会を都内で開催した。

 発表会の内容はすでに関連記事で紹介しているが、この発表後に一部メディアを対象としたラウンドテーブルが行なわれたので、本稿ではこの内容について紹介する。

新型3008

数値だけでは語れないような機敏さをこのクルマは持っている

Stellantisジャパン株式会社 フレンチブランドヘッド 小川隼平氏

 最初のグループインタビューではStellantisジャパンの代表取締役社長である成田仁氏、同フレンチブランドヘッドの小川隼平氏が出席して、参加者からの質問に答えていった。

――新しくなった3008のライバルはどんなクルマだと考えていますか? 可能であれば具体的な車種なども教えてください。また、新型3008の強み、ストロングポイントはどのようなところでしょうか。

小川隼平氏:3008は輸入車のCセグメントSUVというポジションのクルマですが、正直なところとしては、国産、輸入問わず、取れるところからシェアを取っていこうという考えです。そもそもプジョーブランド全般として、おおむね7割ほどは新規のお客さまという構図になっています。それまで国産車に乗っていたという人の乗り替えも多々あることもあって、直接的なライバルというモデルはないと私は考えています。もちろん、同じ輸入車の別メーカーでも同じようなポジションのクルマもあるので、そのあたりの価格設定を横目に見ながら競争力のあるところを探り、そのうえで、3008の外観の美しさやドライバビリティなどに共感していただける人に幅広くアプローチしていくというところが狙いです。

 年間の販売台数では、できれば2000台ぐらいを目指しています。プジョー全体としては8000台ぐらいを売りたいと思っていて、そのうちの2000台をこのクルマで取っていきたいというのが1つの目標です。そうなると、同じプジョー内で「リフター」と3008が2本柱になり、ビジネスの面でも日本市場で貢献できるブランドになると考えています。

――3代目の3008は2代目と比較してサイズがかなり大型化していると思います。市場での競争力といった兼ね合いもあるかと思いますが、販売側からどうしてサイズアップしているのかといった狙いについて説明してください。

小川氏:まずはマルチエネルギー対応というバックグラウンドがあると思います。3008には発売したHEV(ハイブリッドカー)のほかにBEV(バッテリ電気自動車)もあります。そこでバッテリをしっかりと搭載するためのスペースが必要で、もちろん競合車のことも考えていると思います。

 ただ、単純なディメンション、数値だけでは語れないような機敏さをこのクルマは持っているなと感じていて、取りまわしでもあまり大きさを感じないんです。実際に大きくなっているのですが、それはクルマ全般にある傾向でもあります。しかし、プジョーのコアバリューであるアジリティといった面は変わっていないなと思っています。

――新しい3008ではHEVとBEVの2種類のパワートレーンを用意していますが、これまで好評だったディーゼルエンジンは選択肢になかったのでしょうか。どのような理由からハイブリッドとBEVにしたのでしょうか。

小川氏:これまで好評だったパワートレーンとしては、基本的には搭載モデルによって変わり、ボディが小さいコンパクトモデルはガソリンエンジン、大きくなるほどディーゼルエンジンが好評で、燃費が高くランニングコストが良好ということで評価が高かったです。とはいえ、このままディーゼルを使い続けてはいけないという状況になって、ディーゼルの置き換えということでガソリンエンジン+モーターのハイブリッドという新しいパワートレーンを出すことになりました。

 ステランティスとしてはシトロエンの「C4」からハイブリッドパワートレーンを搭載して、ほかのブランドでも搭載車が出てきていますが、非常に好評です。ストップアンドゴーで燃費を稼げるので、経済性や環境性能で有利になり、ドライバビリティという面でもDCTと組み合わせていることで非常にダイレクト感が高く、欧州車らしいキビキビ感を持っています。そこに電動化でモーターを組み合わせることで反応もよくなっています。

 ディーゼルの置き換えになるかという面では、それぞれキャラクターが全然違うので比較は難しいですが、新しい時代のスタンダードになるという意味では非常によいのではないかと考えています。

成田仁氏:プジョー単体としてもそうですが、ステランティスグループ全体として、パワートレーンの選択肢がいろいろとある部分が強みになると思います。ディーゼルエンジンは残念ながらこれから普及させていく段階にないと考えていますが、今回導入したハイブリッドシステムのほか、今年中にはBEVの導入も予定しており、本国ではPHEV(プラグインハイブリッドカー)も用意されています。こうした選択肢の中から、市場ごとの需要や時代の変化に合わせてパワートレーンの構成比をフレキシブルに変えていけるところがステランティスグループとプジョーの大きな特色になると思います。

 その点で、3008ではまずハイブリッドが先行して、これからBEVが入ってくることになりますが、このタイミングのズレは開発や準備が遅れたというだけで、とくに意図はありません。しかし、日本市場の現状を考えると、やはりハイブリッドパワートレーンが当面のあいだは主力になると思います。

 ただ、2024年になってようやく輸入車市場でもBEVの販売比率が1割を超えて、今後も増えていくと考えています。そういった状況で、お客さまの需要があることが大前提ですが、ほかのパワートレーン、とくにBEVの導入割合が増えていくことは十分にあると思っています。

Stellantisジャパン株式会社 代表取締役社長 成田仁氏

――先だって発売された同じステランティスグループのアルファ ロメオ・ジュニアはイブリダ(HEV)とエレットリカ(BEV)を同時発売しています。3008ではBEVが今年中となったことには何か理由があるのでしょうか。

成田氏:3008でも同時発売を目指していたのですが、開発や生産といった都合でタイミングがずれてしまったというそれだけです。販売計画としては日本市場での完全電動車の受け入れ体制や市場の需要が十分ではない面もありますので、様子を見ながらやっていきたいという部分もありますが、誤解していただきたくないのは、“BEVの売れ行きはよくなさそうだから、販売を遅らせて様子を見よう”というような話ではありません。

 パワートレーンについて選択肢があるという部分がステランティスグループの強みだと思っていますので、本来であれば同時に発売したいと考えていたところが、準備段階の問題からBEVは少し発売が遅れるということです。

――新しい3008はHEVとBEVがあって違いが出ると思いますが、そのパワートレーンはステランティスグループ内で共通です。外観デザインはもちろん個性的になっていますが、それ以外の部分で違いや個性、味付けなどをどのように差別化しているのでしょうか。

成田氏:一般的な話になってしまうかもしれませんが、現代はさまざまなところで効率化やコストダウンが求められていて、われわれステランティスというグループが組成されたことも含めて、車体やプラットフォーム、アーキテクチャなどが共通化されていくのはやはり必然だと考えています。ただ、私も今回の発売に先駆けて、違うブランドのマイルドハイブリッドの搭載車に何台か試乗しています。3008のほかにもアルファ ロメオやフィアットのモデルに乗って、「STLA-Medium」を採用しているのは3008が初めてですが、それ以前のスモールの方のプラットフォームでアルファ ロメオとフィアットの違いを体感しています。同じ車体を使っていても、それぞれのブランドごとに味付けが違って、それぞれのアイデンティティの違いを適切に表現されているかと思います。

 もちろん、昔のように、プジョーの「306」ならしなやかな猫足や、アルファ ロメオのクイックなステアリングといったようなとがった個性ではないかもしれません。しかし、乗っていただいて比較すると、それぞれのメーカーのこだわりによって同じ車体をベースに違う味付けをしているのが、今回の新しいステランティスの商品群であると自信を持ってお勧めいたします。

このデザインがハマる人はあらゆる層にいる

ラウンドテーブルの様子

――外観デザインで「508」に続いて3008もファストバックのスタイルになりました。このような方向性が今後もプジョーのSUVやほかのモデルのトレンドになっていくのでしょうか。

小川氏:それは違いますね。3008の兄弟車になる「5008」がありますが、そちらは非常にボクシーな形になっています。ターゲットとなる利用シーンとデザインが明確に分かれているので、片方では流麗なデザイン、もう一方ではボクシーというスタイルになっていると思います。なので、これからすべてが流麗なファストバックになるということではありません。

――例えば次に「2008」がモデルチェンジするときには、また異なるテイストになるということでしょうか。

小川氏:まだ新しい2008がどのようになるか私は把握していませんが、現在販売している2代目の2008はファストバックスタイルではなく、比較的ボクシーなスタイルになっていますね。

――3008は欧州では2023年から販売が始まっていますが、日本導入がこのタイミングになったのはどのような理由からでしょうか。

小川氏:端的に言うと、ベストを尽くした結果がこのタイミングということです。日本で販売するための認証取得と、生産がきちんと進んで日本仕様を用意できるようになるという2つの要素は前提として必要ですが、そこでベストを尽くした結果ということです。ただ、個人的に私は1月から現在の立場になったので、このタイミングまで引き延ばされていて本当によかったなと思っています。

 しかし、古さを感じさせたりするかと言えば、それは見ていただいているとおり、未来を感じさせる、新しさを放っているモデルになっているので、今からでもマーケットを開拓できると考えています。

――新しい3008は先代モデルから大幅にイメージが刷新されているように感じます。また、これから新しい5008も入ってきて、既存ユーザーは乗り替えでどちらにするか迷う人もいるのではないかと思いますが、マーケティング戦略としてはどのように訴求していくのでしょうか。

小川氏:これから(本国ではすでに発売されている)5008が日本に来るとして、基本的にパワートレーンは変わらず同じものです。違いはデザインと、シートが3列になるところで、そこにメリットを感じていただける人がいるかという点になります。3008がターゲットにしているのは、お子さんが巣立ったあとの人が基本的に2人で乗るようなシーンを想定したクルマです。一方で5008は席数も増えてよりファミリー層向けになります。そういったモデルとしては、プジョーではリフターもあって一部は競合することにもなりますが、ライフスタイルに合わせて選んでいただければいいかなと思います。プジョーブランド内にとどまっていただけるような包囲網を形成するという点では、キャラクターも大きく違って棲み分けられるところがメリットになると思います。

――マーケティング戦略で、ターゲットユーザーはどのような人になるとお考えでしょうか。また、これから具体的にどのようなマーケティング活動をしていく予定なのか教えてください。

小川氏:シンプルに言えば、夫婦2人、彼氏と彼女といった2人で郊外まで出かけるような使い方をする人を想定しています。そういう人は幅広くいて、なによりもこのクルマのデザインを魅力的だと感じてくれることが非常に大事だと思っているので、マーケティング戦略としては、対象はマスです。この3008というクルマをしっかりと世の中に広く知らしめることを考えていて、ターゲティングはとても難しいと思います。このデザインがハマる人はあらゆる層にいると思っていて、それぐらい独創的で個性的なデザインになっていると感じています。これから活動していく中で具体的なお客さま像が見えてくるのだろうと考えていて、それが分かってきた段階で戦略も変えていこうということで、最初はマスで取り組んでいきます。

 デザインとテクノロジーをアピールして、とくにテクノロジーの面がネガティブに受け取られてしまわないよう、今日の発表会にはリドゥアン(ハバーニ氏)に来てもらっています。彼からステランティスのマイルドハイブリッドが合理的に造られていることを語ってもらったので、(発表会を取材した)皆さんにもお伝えいただきたいと思っています。

――今年の年初に福岡で開催されたイベントで先行公開された3008を見せていただきましたが、そこから日本で正式に発売するモデルで変わった部分はありますか?

小川氏:ないですね、基本的には欧州で売っているものと同じ右ハンドル仕様車で、日本での認証を取得したクルマで、グローバルモデルということになります。

――3008はプジョーブランドで販売の約20%を占めているとの説明もありましたが、これまでに初代と2代目はどれぐらい売れたのでしょうか。

(広報担当者から補足):2代目は累計1万4650台です。これまで販売のピークとなったのは2018年の2600台になります。

ステランティスのクルマは「国産車以上、プレミアム未満」

――先ほど質問の回答で、プジョーは7割ほどが新規顧客という説明がありました。新しく顧客が増えるのはよいことですが、一方で既存客が離れていることでもあります。新規顧客の定着が課題になっているとすれば、どのように実現していくのでしょうか。

成田氏:おっしゃるとおりで、これはステランティス全体の特徴であり、課題でもある部分です。7割から8割のお客さまがいわゆる新規客と呼ばれる、それまでそのブランドのクルマを買ったことがない人で、例えばプジョーからプジョー、ジープからジープといった既納客代替のお客さまは3割ほどです。これは強みであり弱みがと思います。

 強みになる部分としては、新型車が出るとショールームの来客がどっと増えて販売も伸びる。弱みとしては、そのお客さまにちゃんとフォローアップして、車検や点検整備、修理などで満足度を高めていただいて、次の代替につなげるようなところが弱い点です。これは各ディーラーのプロセスやわれわれのCRMマーケティングが弱いということよりも、プロダクトポートフォリオに穴が空きがちだという部分があります。コンパクトSUVに乗っているお客さまの家族構成や収入、ライフスタイルが変わってミドルクラスのSUVに乗り替えたいと考えたときに、その要望にふさわしいクルマがあるか、仮にあったとしても発売からのサイクルでフレッシュさを保つことができているかといったときに、どうしても穴が空いているケースが多々ありました。

 しかし、プジョーのポートフォリオについては、そのあたりがうまく補完できているかなと考えています。ハッチバックで言えば「208」「308」と、ファストバックになりますが「408」という感じで、少しずつ車格と価格、装備などが上がっていく形になっています。SUVでも2008、3008、今度は5008ということで、うまくラダーができています。これによって今まで以上に既納客代替が容易になって、しっかりディーラーネットワーク内に定着していただきたいと思います。

 私は前職でプレミアムブランドにいましたが、そちらでは既納客の代替需要が販売の6~7割ありました。逆に新規は3割ほどで、現在はまったく違うビジネスモデルになっているわけです。それぞれによいところ、わるいところがあって、既納客ばかりを相手にしていると新規で来たお客さまに冷たい態度をとってしまうことがあって、「なんだか敷居が高いお店だね」と言われてしまうこともあるので、両方のバランスが取れなければいけないかなと思います。どちらのお客さまにもしっかりと接遇して、満足以上の喜びを感じていただき製品を購入していただくという仕組みを、今後作っていかなければならないと思っていますし、プジョーについては3008を導入したことで十分可能な状態になったととらえています。

――小川さんが現在のフレンチブランドヘッドという立場に就かれる前に、プジョーというブランドにどのようなイメージを持っていたのでしょうか。また、就任してからプジョーをどのようなブランドにしたいと考えていますか?

小川氏:そうですね、プジョーは日本で販売されているフランス車で一番のメーカーですし、あとスポーティというこの2つのイメージですね。ステアリングを握ると、先ほどの発表会で安東(弘樹)さんも言っていたように「ずっと走り続けたくなる」ような“人車一体感”を持っていて、柔らかい足まわりから伝わってくる振動まで含めて、クルマをコントロールしやすいようすべてが計算されて造られているイメージがありました。それは今の世代でも変わらず続いていると思います。

 ただ、これまでそんな個性を発揮しきれていなかった、弱かった部分だと思っていて、まさにこの3008が出るのを待っていたんです。このクルマは外観に圧倒的な個性を持っていて、例えばパリの街を歩いていて、3008はほかのクルマに埋もれてしまわない圧倒的な存在感があります。あらためて、フランスが醸し出す自然体の美しさというものをしっかりと伝えていくことが重要で、そこをきっかけとして「走る、曲がる、止まる」にこだわったクルマ自体を体感してもらい、フランス車ファンが増えていくというループをあらためて作っていきたいと考えています。

 以前にインタビューを受けたときに、「フランス車はニッチな存在」と言われたこともありましたが、自分としてはニッチだと考えたことはなくて、むしろ「走る、曲がる、止まる」にこだわりきっている。それを知らない日本市場の方がニッチなんじゃないかと考えていて、そこはすごくもったいないと思っているので、そんな部分の啓蒙もやっていきたい。また、スポーツ面の訴求もやりたいと思っていますし、本国にもその意思があります。とくに今はWEC(世界耐久選手権)に積極的に取り組んでいるので、そのあたりをどのように日本市場での認知アップ、イメージアップにつなげていけるかを考えていて、うまくできるかは分かりませんが、乞うご期待という感じです。

――成田社長はプジョーを見ていかがでしょうか? 長年ドイツメーカーに携わってこられていましたが。

成田氏:昔のことはもう忘れちゃいました(笑)。先週のアルファ ロメオ(ジュニア)発表会でも申し上げましたが、われわれステランティス各ブランドの製品は、自分のライフスタイルを体現する「ステートメントブランド」だと思っています。

 移動のための道具である国産車、いや、国産車のすべてがそうだということではありませんが、やはり国産車はマスマーケットを満たす「乗用車」です。一方で、私がかつて所属していたような会社で作っている、乗る人の地位や名誉を示す「ステータスブランド」などとは違って、われわれステランティスのクルマは価格帯的にもそれらの中間にある商品群のブランドになると考えています。端的に言えば「国産車以上、プレミアム未満」という層で、より個性的なクルマたち。それこそ、プジョーのようなデザインと走りを押し出したブランドや、ジープのようなアドベンチャー性や冒険心をかき立てるブランド。それぞれにお客さまのライフスタイルに合っているとか、それを表現するために選んでいただけるのがプジョーなどステランティスの各ブランドだと思います。

 また、先ほどのプレゼンテーションでも紹介したように、プジョーブランドではこの4月からコアバリューについての再定義を行なって、「シリアス アバウト プレジャー」という新しいブランドコンセプトを掲げていますが、個人的にもこの言葉はピッタリだと思っています。ほかのプジョーモデルもそうであるように、この3008で言えば、デザインには所有する喜びがあって、眺めてよし、実際に乗り込んでよし、そのたびに喜びを感じることができます。そして運転すればクルマの基本をしっかり備えていて、いつまでも運転していたいと感じるような、楽しさや喜びを与えてくれるクルマです。

 それは新しい3008になって急に具現化されたということではなくて、先ほども言いましたが、二十数年前からプジョーに乗って感じていたことで、眺めてよし、乗ってよし、運転して楽しいと感じていたことが、あらためて「シリアス アバウト プレジャー」という言葉で再定義されたように感じています。デザイン言語やパワートレーン、走りでは猫足だったりもう少し引き締まっていたりと時代ごとの変化はありますが、プジョーが持つ普遍的な価値は変わっていないと思っています。

アーキテクチャの設計においてすべての部分で最適化

Peugeot 電動パワートレインシステムデザイン リドゥアン・ハバーニ氏

 続いては、新しい3008の開発に参加したPeugeot 電動パワートレインシステム デザインエキスパート リドゥアン・ハバーニ氏と小川氏が出席してグループインタビューが行なわれた。

――新型3008で採用しているマイルドハイブリッドシステムは効率性を追求しているとのことですが、具体的にはどのような技術によって高効率化を図っているのでしょうか。

リドゥアン・ハバーニ氏:われわれはさまざまな部分で効率化を進めています。例えばギヤボックスでは、マニュアルトランスミッションのようにダイレクトな6速のデュアルクラッチトランスミッションを使ってロスを最小限にしています。制御面でも常に最適な効率になるようギヤを選択しており、モーターもダブルマグネットのPMSM(永久磁石同期電動機)を使って最高の効率を実現します。アーキテクチャの設計においてすべての部分で最適化することを目指しています。

――マイルドハイブリッドシステムを搭載した3008ではどのような点でドライビングプレジャーを表現しているのでしょうか。

ハバーニ氏:ドライバビリティについては、エンジンが高回転の状態でアクセルをOFFにしてもトランスミッションでノイズが発生しないように制御しています。加速ではアクセルを踏み込んでから反応する時間を短縮して、加速度についても高めています。これらは運転していて誰でも体感してもらえると思います。

――マイルドハイブリッドシステムの構成図にベルトスターターが入っていますが、これは回生発電にも利用される仕組みになっているのでしょうか。

ハバーニ氏:ベルトスターターについてはジェネレーターとしての働きは含まれていません。私たちエンジニアは設計するときにどんどん機能を追加する方向に動いてしまって最適化が制限されてしまいます。しかし、それでは購入する人にとっても社会にとっても手ごろな製品にできません。ベルトスターターはエンジンを始動させる、またはモーター走行中にエンジンを再始動させることにしか使いません。

 駆動力についてはDCTに内蔵している「P2モーター」が発生させています。「K0クラッチ」を活用して駆動力のカップリングを行ない、同時にジェネレーターとして回生発電を行ないます。ベルトスターターは発電をせず、一方通行でエンジンの始動だけを担当します。

 このため、ベルトスターターはほとんどの時間でシステムから分離されていますが、将来的にはエンジンの加速を補助するような役割を与えることができないかを考えており、すでに現在でもSPDの加速を手助けしています。

――新しい3008はプラットフォームも刷新してさまざまな面が新しくなっていると思いますが、先代モデルから受け継いでいる部分は何かあるのでしょうか。

小川氏:3代目の3008ではインテリアも包み込まれるような雰囲気になって先進的な雰囲気を高めていますが、開発コンセプトについては先代から同じものを受け継いでいて、それを表現して形になったものが世代によって異なっているのではないかと思います。そこをしっかりと昇華させているからこそ先進感を感じていただけるデザインになっていて、ブレることがありません。そこがプジョー車の面白いところだと思います。

ハバーニ氏が参加したラウンドテーブル後半の様子