試乗記
ランボルギーニの最新PHEV「テメラリオ」試乗 1万rpmまで回るエンジンはまるでフルパワーにしたリッターバイクの世界観
2025年11月10日 15:13
ランボルギーニの最新ベビーランボこと「テメラリオ」。筆者が国内外で何度も試乗を繰り返してきた大好きな「ウラカン」の後継モデルだ。今回の試乗会のステージは、千葉県南房総市にある会員制プライベートサーキットの「THE MAGARIGAWA CLUB」。
すでに国際試乗会がポルトガル・エストリルサーキットで開催されているが、日本国内では今回のものが初めてで、数多くの自動車ジャーナリストや顧客を招待して行なわれた。独特のレイアウトを誇るMAGARIGAWAのドライブコースでテメラリオが披露してくれた、最新ランボの走りを紹介したい。
ウラカンを全ての項目で上まわる「テメラリオ」
試乗の前に行なわれたドライバーズミーティングでは、ランボルギーニ・ヘッド・オブ・ジャパンのパオロ・サルトーリ氏が「美しいマガリガワへようこそ。ランボルギーニの一番新しいモデルであるテメラリオの初試乗会です。最高のパフォーマンスで最高に楽しい、とてもエキサイティングな体験をもたらすテメラリオの走りを楽しんで」とあいさつ。続いて登壇したマーケティング担当の山岸氏は「現在ランボのラインアップは、コル・タウリと呼ぶ電動化戦略に則った3車種があり、フラグシップでウルトラスポーツカーのV12レヴエルトに続くスーパースポーツカーというのがテメラリオの立ち位置で、定義として銘打っているのはFUORICLASSE(フォーリ・クラッセ)、つまり“規格外”のクルマである、というようなコンセプトになっています」と紹介した。
では何が規格外かというと、まずはシート背後に搭載するL411型エンジン。ウラカンが搭載していた自然吸気V10エンジンからダウンサイジングされた排気量4.0リッターのV型8気筒ツインターボエンジンは、単体で最大出力800PS、最大トルク730Nmを発生し、MAXパワー時の回転数は9000rpm、最大回転数はなんと1万rpmを許容する。最大ブースト圧2.5バールという2基の大型ターボチャージャーは、120度のVバンク内にコンパクトに配置。そして加速とエネルギー回生、トルクベクタリングを担当する前2基、後1基のP1 Eモーター(最大出力149.6PS)を組み合わせたプラグインハイブリッドシステム(ランボルギーニではこれをPHEVではなくHPEV=ハイパフォーマンスエレクトリックヴィークルと呼んでいる)とすることで、システム最高出力は920PSまで高められている。トランスミッションは、ウラカン用の7速DCTからさらにコンパクトになった8速DCTをシャシーの最後部に搭載しており、4輪を駆動するシステムだ。
ちなみにウラカンとのエンジン比較では、最高出力は640PS→800PSで+25%、最大トルクは600Nm→730Nmで+21%、最大回転数が8500rpm→1万rpmで+17%、リッターあたりの出力は123PS→200PSで+62%それぞれアップとなっていて、この進化ぶりをみただけでももう別格の域。そのパフォーマンスといえば、0-100km/h加速2.7秒、0-200km/h加速7.1秒、最高速343km/hというクラスの新基準を打ち立てていて、新しい市場セグメントを確立することにも成功した。つまり正真正銘のフォーリ・クラッセになったのだ。
さらに付け加えると、今回のHPEVシステムはガヤルドやウラカンのようにアウディと共同開発したものではなく、全てサンタアガタ・ボロネーゼ(ランボの本社)で新たに設計・製造された純粋ランボオリジナルのもの。圧倒的な性能を誇る最新EVスーパーカーでは絶対に味わうことができない“官能性”とのちに述べる“ドライビングフィール”こそがランボのスーパーカーたる所以で、“彼ら(=EV)”に対してそこに勝ち目があるとする考えのもとに生まれてきたモデルなのだ。
MAGARIGAWAで1万rpmを体験
THE MAGARIGAWA CLUBのコースは全長約3500mで、800mのストレート2本、350mの直線1本、コーナー数22で、上り20%・下り16%の勾配があって全体の高低差100mというなかなか複雑なレイアウトでドライバーを迎えてくれる。
試乗はいつものようなカルガモ走行ではなく、1台ごとにインストラクターが助手席に同乗する形で行なわれた。ノーマルのテメラリオと軽量版の「アレジェリータ・パック」それぞれで3周ずつ周回するスタイルで、山岸氏から「今日はぜひ1万rpmまで回してみてください!」とのお許しがあったので、みなさんやる気満々なのである。1周目はコースや操作系の確認走行のためドライブモードは「スポーツ」、2周目はハイスピード走行のため「コルサ」、そして3周目の後半ではクールダウンしながらピットレーンに入っていく、というスタイルだ。
せっかくなので、今回は25kgの軽量化が施されたアレジェリータ・パックの走行をご紹介。筆者の助手席に着いていただいたインストラクターは河村直樹さんだ。彼の「さあ、いきましょう」の声で右パドルをポンッと引くと、眼前のメーターには電動走行の証である「E」の文字が浮かび、そのまま静かにスタートシグナル地点に移動。ここでステアリング左に取り付けられた赤いダイヤルを捻って「スポーツ」に入れると、背後で「ブオン!」とV8が目覚める。
ノーマル版ですでに3周走っているので、最初から全開に。300mほどのストレートを下って200km/hからフルブレーキ、ターン2でレフトターンし、110km/hぐらいから次の800mストレートへ向けて3速でアクセル全開に。スポーツモードはデフォルトで勝手にシフトアップしてくれるのでそれにお任せしていると、185km/h 1万rpmで4速、250km/h 1万rpmで5速に一瞬入って残り150mのブレーキングポイントに達し、その時の速度は265km/h。要した時間は約8.7秒だった。
そのまま180度旋回して上りのストレートを抜け、クラブハウス前にある難関のブラインドコーナーをクリアしていく。縁石乗り上げは御法度なので、ここは少しだけ慎重に。専用開発されたブリヂストン「POTENZA SPORT」のグリップ感はいうことなしで、右、左とステアリングを切ると、無駄な動きを一切見せることなく即座に鼻先が出口に向かっていく。
次は同じストレートを「コルサ」で臨む。パドルを使ったシフトアップなので、回転計に目をやりながら180km/h、9600rpmで3速から4速にシフトアップ、さらに250km/h、9500rpmで5速に入れて263km/hまでいき、ここまで8.8秒。針の上昇が速すぎてシフトアップするタイミングがわずかに早すぎたのと、加速スタート時速が90km/hほどと遅かったのが原因だ。
3周目のターン2では、「ここで一発“パフォーマンス”に入れましょう」との河村さんの一声で、EVダイヤルを右に回してシステム全開放モード=フルパワーモードに。加速のスタートポイントがちょっと遅れたものの、同じストレートでは8.4秒で最初と同じ265km/hに達している。
1万rpmの世界は、まるでフルパワーにしたリッターバイク
と、まあ実際の走りはこんな感じなのだが、7000rpmを過ぎてからのサウンドを文字にするのは難しい。あえて言うなら、大排気量のスーパーバイクでフルパワーにした時のあの音に近い。筆者は1990年代に、カワサキ「ZZR1100」(最高出力147PS、0-100km/h:3.0秒、最高速290km/h)に乗っていたことがあるのだが、青天井の加速感やタコメーターの上昇速度だけでなく、ヘルメット越しに聞こえてくる音までもがそれに似ていることを思い出したのだ。
事実チェントロスティーレ(ランボのデザイン部門)を率いる旧知のミーティア・ボルケルトがラインを引いたテメラリオは、スポーツ・モーターサイクルからインスピレーションを得たデザインになっていると語っている。後方から眺めると、325/30サイズのぶっといポテンザが半分以上剥き出しになっていて、まさにリッターバイクの後輪をみているかのようだ。
エンジンが載るスーパーカーでしか味わうことができない“規格外”を達成したテメラリオ。もし自分のガレージにすでにウラカンが収まっているとしたら、迷わずこちらも追加、ということになるのだろう。







